第79話 村岡の逆襲2
始業式前日深夜
オイ…伊達…
伊達!
起きろ!この寝坊助!!
「んぁ?何だ隆也じゃねえか…何か用か?」
「明日なんだけどよ・・・って訳で黒田を追い込む事にした。悪いが手伝ってくんねぇか?」
「・・・しゃ〜ね〜なぁ〜!」
……………
………
ザワザワ…
2学期始業式朝浦川学園玄関にて
登校して来た生徒達は目の前の光景に度肝を抜かれ暫しの間、上履きに履き替える事を忘れて立ち尽くす。
何故そんな事になったかと言うと、玄関前の廊下に3人の女子生徒がそれぞれ1枚の紙を貼り付けたボードを首からぶら下げて正座していたのもあったが、3人共丸坊主にしていたからの方が大きい。
オイ…それはどう言う事だよ…
その文章マジなのかよ…
うわ…最低…
ゴミ…
信じられない…
クズ!
お前等も村岡の後を追え!
死んで奴に詫び入れろ!この鬼畜が!
警察行け!この犯罪者!
この学園から去れ犯罪者!
紙に書かれている文章を読んだ生徒達が3人の女子生徒に有らん限りの罵声を浴びせる。
その罵声を顔色1つ変えずに受け止め耐える3人は宏美・明里・芳恵の3人だ。
この3人の成績は常に学年10位以内の成績を維持していたのだが、オカ研のメンバーに追い落とされている。
然し、3人共生徒会役員で生徒達からの人望も厚かったので、「こんな事をするなんて」と驚きの方が大きく裏切られたと言うショックの方が大きい生徒が多数だろう。
が、これも全て村岡の指示によるものであり、3人の本意ではない。
然しあの日、村岡に魂まで掌握されてしまっていて、指示に従わない場合はどおなるかと擬似的とは言え死を体験させられた3人は既に心を折られてしまっていて一切の抵抗はしない。
「ごめんなさい…全てはオカ研の連中の成績に嫉妬して流したデマなんです…村岡君があんな事をするなんて思ってもみなかったのです…」
罵声が飛び交う中、芳恵が代表して誠心誠意の謝罪の言葉を吐き土下座すると宏美と明里もそれに習い土下座する。
「お前等だけじゃないよな!?黒田の奴が居ねぇじゃねえか!アイツにはマジで死んで詫て貰わないと俺達の気が収まらねぇ!」
そう言ったのは元オカ研部員の伊達信夫だ。
実の所、秋田を除くオカ研のメンバーだけはこの騒動が起こる事は知っていた。
そして、この騒動を利用して黒田を追い込むのが目的なのだ。
「黒田がなんで謝罪しないとならない!?村岡の奴がテスト問題を盗まなければ黒田だってチクる事は無かった筈だぜ!?」
「そうだ!少なくとも俺達はセンコーからそう聞かされている!」
ギャラリーと化した生徒達の1人が反論すると上っ面だけの情報に踊らされている生徒達が一斉にそうだそうだと同意し叫ぶ。
「違うの!村岡君は本当にテスト問題を盗んでいないの!嘘をでっち上げてオカ研を追い込む様にと私達が黒田君をけしかけたの!」
村岡に命令されていたのはこの場での謝罪のみであり、よもや黒田の名前が出てくる等と思ってもみなかった3人は内心狼狽えるが、皆を落ち着かせようとした明里が叫ぶ。然し、真相はどおであれオカ研の騒動の口火を切ったのは間違いなく黒田であり、黒田が犯人達の言いなりにならなければ事件は起きなかったかも知れなかったのだ。
「な・ん・だ・とぉ!?オイ!黒田を探せ!引き摺ってでもこの場に連れ出して徹底的に追求してやる!覚悟しろこの殺人鬼共め!」
3人を射殺さんばかりに睨み付けてそう言ったのは元オカ研の春川だ。
コイツ等と黒田が嘘の証言をしたが為に村岡が死んだ!覚悟しろ!と言い残して登校している筈の黒田を捜索に行く。
さて…と…
この騒動に参加せず皆に気付かれない様にコソコソと教室に向かう犬飼紗弥加を視界の端に捕らえながらも見過ごし3人に向き直り疑問点をぶち撒ける信夫。
「君達が村岡を追い込んだから自殺したと言っているけど、ちょっと矛盾している点が有る。
正直に話せば何もしない。
話してくれるかい?」
襟を正し疑問点を問い質そうとする伊達に一瞬怯えた表情をする3人。
「俺は事実を言ったまでだ!何でこんな目に会わないといけないんだ!?」
程なく春川に連行されて来た黒田が憮然とした態度で捲し立てるも明里が
「一発ヤらせてくれたら言うこと聞いてやるって言うからヤらせてあげたのに…自分だけ逃げようなんてズルい」
と言い出す。
「なっ…」
明里の爆弾発言に一瞬静まり返るギャラリーであったが、直ぐに非難の嵐に変わり、誰かが発した「お前も死ね!」の1言が切っ掛けで死ねコールが巻き起こる。
「ち…違うんだ…違うんだってば…」
もう、ここまで来たら集団イジメとしか言いようが無いが、黒田が自ら撒いた種としか言いようが無い為に誰も庇おうとはしなかったのであった。
と…その時…
「お前達!此処で何を騒いでいる!」
「ハイハイ解散解散!もう時期始業式が始まるから早く教室へ行く!!」
ヒートアップしたギャラリーに冷水をぶっかける様に割って入ったのは山川咲良と韮山健三だ。
騒ぎを聞きつけた教師がおっとり刀で駆け付けたのだ。
「あんた達は校長室に行きな」
生徒達を追い払った後、面倒事を起こしやがってと言った目で4人を睨みつけた後、校長室行きを命じたのだが…
させねぇ…
唐突に響く聞いたことのある声。
そう、村岡の声だ。
「「なっ…」」
驚き固まる山川と韮山。
死んだ筈の人間が校内放送を使って話してる。
信じられる筈がない。
「あーあー…テステステス…この位で良いかな…
コホン…
えーっと…夏休み中に死んだ村岡です。
何故死んだかと言うのは後に解ると思いますので今は話しません。
ですが、僕は自殺ではなく12人の人に殺されました。
本当です…
・・・オイ!教室で騒いでいる奴等!喧しいから少し黙っとれ!すぐ終わるからよ。
・・・良いかな?
僕はあの山ではなくこの学園の中で罠にハメられて殺されました!
そのおかげで僕は怨霊として黄泉返りました…
なので、これから復讐を始めます。
僕を殺した12人と僕をバカにしていた人達…
必ず道連れに致しますので今後の人生は諦めて下さい!僕が本気だと言うことを証明する為に只今から1人殺します!
誰が死ぬのか直ぐ解りますよ!?せいぜいソイツのご冥福を祈ってあげて下さい。
元オカ研部長を舐めるなよ!!!
以上!!」
「誰だ!こんな悪趣味な真似しやがったのは!・・・誰も居ない…マジか…マジで村岡の怨霊だって言うのか…」
放送が終わった直後、聴こえて来た数人の教師の声が悪戯ではないとを物語っているが、コレで終わった訳ではない。
キャー!!
恐怖と混乱の中、2年C組から悲鳴が上がる。
放送が終わった途端、何かに怯えた黒田が
「村岡が来る…よ…欲望に勝てなかった俺が悪かった…反省している…許してくれ…お願いだから殺さないでくれ」
と言ったかと思ったら胸を押さえて苦しみだして倒れたのだ。
この事により、生徒達からは村岡殺しの犯人探しが始まり、教師達は事態を鎮めるべく何者かによる悪質な嫌がらせだ「殺人事件はなかった」と隠蔽工作に必死となり、混乱の極みに達したのであった。
………
……
数日後
「何で俺達があんな事をしなければならないのですか!?」
「そうよ!やれるなら今頃先生を含めてこの学園の人間全員死んでます!」
救急搬送された黒田は急性心不全で死亡と診断され、事件にはならず、教師の隠蔽工作も手伝って村岡の放送は何者かの悪質な悪戯だと片付けられ、混乱も落ち着きつつあった。
こうなってしまうと1番に疑われるのは元オカ研メンバーだ。
教師達は村岡が死んだ事により学園を逆恨みした元オカ研メンバーがあの3人を脅してあんな事をさせたと疑惑の目を向け攻撃しだしたのだ。
「黙れ!お前達の他に誰があんな事をやれると言うのだ!元はと言えばお前達が試験問題を盗んでなければ村岡も死なずに済んだんだ!ちがうか!!」
全力で否定するメンバーを犯人に仕立て上げようと尋問する山川と韮山。
端から見たら、やったやらないの水掛け論にしか見えないが、村岡は自殺した事にしたい教師達の必死の隠蔽工作でしかない。
ほぉ?アレはコイツ等の悪質な悪戯か?塚の謎を追う者は死なねばならないとか言った理由で俺を殺した癖にこの場では違う理由で罪を着せようとする?大爆笑だな…こりゃぁ…コレ…何だか解る?ワカルヨナハンザイシャドモ!!
元オカ研メンバーが折れなければ終わらないと思われる尋問と言う名の拷問に痺れを切らした伊達がブチ切れしそうになった時、唐突に本当に何の前触れも無く現れた村岡は右手に持っていた大きな物体を教師に向かって投げ付ける。
「ヒィッ!!」
手足は無く、完全に達磨状態で投げ付けられたその物体は間違いなく黒田であった。
「センセ……たすけ…て…」
懇願する様な表情で助けを求める黒田を抱き起こそうとするも霊体や魂に触れる事が出来る筈が無く混乱するばかり。
「オイ!お前等!コレは一体どう言う事だ!説明しろ!」
目の前で起きている事が信じられずに元オカ研メンバーに説明を求める韮山。
だが、この後に及んでハイそうですかと従う連中ではなく「僕達には何も見えていないので説明出来ません」と突っぱねる。
「な・ん・だ・とぉー!お前等それでもオカ研か!」
「元!オカ研です!先生達には見えて僕達には見えない現象は理解出来るし説明も出来ますが、僕達では何も出来ませんし例え知っていても対処する義理は有りません!此処に出て来たと言う事は韮山先生も山川先生も村岡殺しの共犯者って事でOKですか?」(まぁ、村岡暴走を止められるヤツは世界中探してもそうは居ない筈だしなぁ…)
「し…知らん…俺達は殺っていない…」
「ほ…本当よ?私も韮山先生も殺ってはいないわ…だから助けて…」
「まだしらを切るつもりですか?現状を考察するに村岡君は最早何でも有りのアルティメット幽霊と化したと言っても過言ではないと思いますよ?」
怨霊と化した村岡の出現のおかげで攻守逆転した形になったが、敵も去る者、頑なに無実を主張する山川と韮山。
あっそ…残念だけど黒田君…
そこまで言うと何時の間に用意したのか、黒い霊気でコーティングされた黒刀を両手で持ち黒田の首を切断し、道端の石ころを蹴る様に山川と韮山に向けて蹴って転がす。
「痛い…痛いよぉ…センセ…何故助けてくれないの……どんな事があっても守ってくれると言ったじゃないか…」
生首になりながらも尚も助けを求める黒田に遂に恐怖の頂点に達した山川はそのまま意識を手放して倒れ、韮山は股間から生暖かい液体と柔らかい固形物を漏らしてその場にへたり込む。
村岡君…怖い…怖すぎるッス…




