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気が付いたら幽霊やってました  作者: 京子
第四章 黒尾の逆襲
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第58話 ド変態幽霊レイ?

新雨音総合病院待合室にて


救急搬送された秀一が処置室に入れられたのを見送ったミキは秀一の両親に連絡を取った後、独り待合室でこれまでの事を思い返していた。


救急車にはミキ1人が付き添いで乗っていて、俊哉はと言うと、救急車の後を追走するかたちで着いてきていたので、現在は病院の駐車場で待機中だ。

恐らくはあの幽霊と話をしているのだろう。


ハァ…


ミキは…いや、ミキ以外の学園内ほぼ全ての人間が原因は解らないまでも秀一が虐めの標的になっていた事に気付いていた。いたにも関わらず秀一を空気同様の扱いをしていたのだ。

そして今日、取り返しのつかない状況に追い詰められる寸前になった。

もしこれが、秀一が自殺と言う結末に終わったとしたら一時的には騒ぎになるだろうが学園側は全校生徒及び全教師に箝口令かんこうれいを強要して全てを知らぬ存ぜぬを貫き通すに違いない。

そう云った中で独り声を上げても誰にも届かない事を知っているし、最悪、犯罪者として濡れ衣を着せられた挙げ句に教員免許を剥奪された上で社会的に抹殺されかねない。

現に、数年前に事件にまで発展し、人死にまででた事があったのだが、学園側は知らぬ存ぜぬを貫き通して事なきを得たのだ。


どおして…


最悪の事態は免れたとは言え、何も言えず、虐めを止めようとはしなかった自分を激しく責めるミキ。

気付いていながら何も言えなかった自分が腹立たしい。


情けない。


ありとあらゆる負の感情に襲われてしまい、自責の念に耐えきれなくなりそうになる。


穴が有ったら入りたい…


負の感情はミキの心を侵食し、最悪の感情を生み出す。


死にたい…


そう考えてしまったらもう止まらない…


自分は苦しんでいる生徒1人救えないダメな教師…あの子に代わって自分が死のう…


止まらない負の感情は更に加速し、ダメ押しをする。


そうだ…屋上から飛び降りたら死ねる…


虚ろな表情でフラリと立ち上がったミキはまるで夢遊病者の様に屋上へと向かう。


あそこから飛び降りたら死ねる…さよなら…みんな…


屋上へ到着した途端、走り出そうとするミキ。


「ほぉ?飛び降り自殺しようってのか?短絡過ぎて笑けてくんぞ!この腐れピーのピーが!!いい加減、目を覚ましやがれ!!」


その時、突如男の声でド下ネタで罵倒されたミキはその声でかろうじて自殺を踏み留まり、更にセクハラで訴えれる様なド下ネタに腸が煮えくり返る様な感情が沸き起こる。


「誰が腐れピーでピーですって?もう一度言ってごらんなさいよ。この覗き魔のド変態幽霊が!!」


「あ゛ぁ゛?

何度でも言ってやるぞ!?

こんな小物に操られやがってこのピーのピー女が!!」


「な…何すんのよ…このド変態!!」


「うるせ!!黙って見てろ!!」


ド変態幽霊レイの悪口雑言は止まらない。止まらないどころかミキの胸元に手を突っ込み、まるで大根を引っこ抜くかの如くなにかを引っこ抜く。


「それは…」


レイが引っこ抜いた手には黒い玉が握られていた。


「お前達は何と呼んでるか解らんが俺はコイツ等の事をレア級と呼んでるんだ。人の中に入り込んでは悪さをする悪党だ」


ミキ達にとってそれは悪霊又は怨霊と呼んでいる幽霊であるが、何時入られたのか解らない。

そもそも、こんな事もあろうかと常日頃から対幽霊用個人結界を張っているので入り込まれた上に操られた等と言う事は有り得ない筈なのだ。


「そんな…」


信じられない光景を目の当たりにしながらも現実を受け入れようとはしないミキに黒い玉をゴミ箱に放り込んだ後で


「その結界は低級なら効果抜群なんだろうけどランクが高い幽霊にはザルと一緒だよ…要するに効かねぇんだよ」


と言い放った後でミキの腕を掴んでみせる。


「あっ・・・」


掴まれた箇所におぞましい感触と共に手形がまるで痣の様に残る。もし、結界が正常に働いていたのなら、この現象は100%起きない。

痣を見つめながら自分の愚かさと未熟さを思い知るミキ。


「で?何でこうなったのか…その理由を訊かせてくれんか?」


どおやらレイは何故秀一がこうなったのかその切っ掛けとなった出来事又は秀一に関わっている人物を知りたいらしいが、ミキも知らない。

ただ、秀一が3年生になって少しした頃、自分は性同一性障害者なので、明日から女の子三上秀美として通学しますと本人から届け出があり、それ以後、秀一ではなく秀美として学園生活を送っていた。

生徒から直接届けがあって校長が受理した以上、教師は誰一人として異論反論は出さないし、現に学園内にはそう言った生徒は何人か存在している。

知っているのは虐めのグループが秀一を虐める為に女装を強要していて、誰もその事に対して見て見ぬふりをしていたとしか解らないのだ。


「その虐めのグループに教師も参加しているのか?てか、その事を親はこの事を知っているのか?」


現状を根掘り葉掘り聞き出そうとするレイに対し、本当に解らないと謝罪する事しか出来ないミキ。

そんなミキに見切りを付けたのかチッと舌打ちしたかと思ったらスッと消えてしまう。


……………

………


ン〜・・・まさかあの女性ひとの息子だったなんて…困ったわ…


レイがミキの自殺を止めている頃、真智子は秀一の様子を伺っていたのだが、駆け付けた母親の顔が気になってしまい手を出せないでいた。


和樹であった頃、秀一の母親である三上静香に会った事が有る。

ただ会っただけではなく、何度か組んで祓い屋の仕事をした事があるのだ。

今は女性の幽霊として存在しているが、近寄ろうものなら見付かる事間違いなしの状況では迂闊に手は出せない。


「俺が囮役になってあの女の注意を引こうか?」


いつの間にか戻って来たレイが真智子の様子を伺いつつも提案して来る。

もう、何年も一緒にいるせいで実の姉弟や夫婦よりも気心が知れていて、お互いの表情を見ただけで相手の心理状態は殆ど看破出来るし、何も言わなくても行動出来てしまう2人の連係プレーは目を見張るものがあるのだが、今回はレイが秀一と話をしたかったのだが、男と話をするよりも女性と話をした方が穏便に行くと踏んだので自ら囮役になろうと言うのである。


「任せて良い?」


今のレイに静香は敵わないだろうし、本体は自分の中に居るのだから万が一は無いだろうと踏んだ真智子はレイの提案を承諾すると任せろと言い残して静香を挑発に掛かる。

ピーの部分は本当にド下ネタとなっておりますが、台詞は読まれた方のご想像にお任せしますm(_ _)m

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