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気が付いたら幽霊やってました  作者: 京子
第四章 黒尾の逆襲
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第56話 トラブルはお手で繋いでやって来る

翌日深夜2時


昨日のミキの話が気になった俊哉はネットカフェに車を停めて歩いてワンダーランドの周辺を調査していた。


「さてと…ミキの兄弟子殿は何を仕掛けたのかな?」


何がどおなったか調べたかったからであり、だからと言って何かしたいと言う訳ではない。


「地蔵?それにしては向いている方向は店を向いていないな」


祓い屋としてのミキに付き合わされる事もある俊哉は立場上、結界を張る事が出来るくらいの知識と技量は持ち合わせているし、この街の幽霊事情から龍脈に至るまでの情報も頭の中に入っている。

昼間に出玉ゼロ営業を行った日に午前中だけで5人の諭吉を持って行かれたとボヤいていたお客に会う事が出来た俊哉はその時の話を訊いたのだが、店内はそれ迄と違った雰囲気が漂っていたとの事。

勿論、台の稼働音で喧しいので騒がしいのは間違いないのだが、店全体の雰囲気がそれまでとは違っていたのだと言う。

これは何かあると思った俊哉はこうして調査に来たのだ。


「ヤベェなこれ…」


建物を囲む様に設置された5体の地蔵の役割を看破した俊哉の背筋に冷たいものが走るのを感じる。

この街の龍脈は雨降山からうねる様に蛇行しながら雨土山へと流れていて、当然ながらこの地域やガチ鳥の跡地とみず乃の下を通っている。

本来なら龍脈の恩恵をモロに受けたこの場所は常に商売繁盛が本当なのだが、玉斉が仕掛けたこの結界はそれを遮断し、更に建物をスッポリと包み込む様に結界壁が張り巡らせてあるので幽霊はおろか物怪の類も出入り出来ないだろう。


つまり、ワンダーランドにお客が来なくなったのは玉斉が仕掛けたこの結界のせいでもあると言える。

とは言え、俊哉にどうこうする事は出来る筈もなく、状況を把握しただけで帰ろうとする。


その時


なぁ…あの地蔵の向きをちょっとズラしてくれないかな…

それでこの店は救われるんだよ…


頭の中に直接響く蚊の泣く様な細くて小さな声。

その声に気付く事が無ければ恐らくは誘導されていたと思うが、気付いてしまった俊哉は立ち止まり周囲を見渡すが誰も居ない。

気のせいかとも思ったが声は確かに聞こえる。


頼むよ…中でやらないとならない事があるのに結界か邪魔で入れないんだよ…


やりたい事がなにか解らないが予想が正しければこの中には悪意の塊が住み着いている筈。

もし、結界を解除しようものならその悪意を開放してしまう事となるので俊哉の返事は当然


「だが断る!!!」


の1言のみ。


その1言が切っ掛けとなったかは定かではないが、言い切った途端、右足首を力一杯掴まれる感触が俊哉を襲う。

突然の事で混乱した俊哉は見ちゃダメだと思いながらも、つい、足元を見てしまう。


ドワッ!!


地面から生える様に伸びる右手が右足首を掴み、グチャグチャに崩れた男の顔が俊哉を睨みつけているではないか。

有り得ない状況に心臓が止まるかと思った程驚いた俊哉はその場でへたり込む。

驚きのあまりちょっとだけチビッたのはナイショの話。


「ヒャーヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッ…おもいきっり驚いてやんの…ドッキリ大成功ってか!?」


あまりの驚きぶりに地面から飛び出して笑い転げる幽霊に「あんな出方をされたら誰だって驚くわ!!」とツッコミを入れた後で何も無かった様に帰ろうとする。


「チョッ…チョッと待てよ!何で帰ろうとするかな?普通はもうチョット絡むものじゃねえのか?なぁ、絡んでくれよ」


想定外の反応に慌てた幽霊が俊哉を引き止めようとするも歩みを止めない俊哉は背を向けたまま右手を挙げて左右に振るのみ。


然し


「待てって言ってんじゃねぇかよ!!」


「!!!…心臓に悪いからヤメロよ」



諦めの悪い幽霊は更に分身体を飛ばして俊哉の目の前50cmという距離に逆さに現れて驚かし引き止めようとする。これがトドメとなったのか、完全に腰を抜かしてしまった俊哉に地蔵を動かしてくれたら止めると言うが、それはダメだと頑なに拒絶する。


「あの中にはトンでもない悪意の塊が居るのだろう?ソイツが逃げ出さないとも限らないだろ!?だからやらない!」


正体は解らないまでも悪意の塊が危険だとも理解しているし、解いた途端に逃げ出す事は間違いない。

だから結界は何があっても解く事は出来ないと言い張る俊哉の理由に納得しながらも「それを倒すために俺が居るんだ!だから結界を解いてくれ」と食い下がる幽霊とでは話が平行線を辿るだけだと踏んだ俊哉は仕方なさそうに着いてこいと言ってネットカフェに停めてある車まで戻り車を走らせる。


…………………

……………


何かの仕事部屋か?ペンやら原稿用紙とか…何だこの部屋は…



「此処なら誰にも聞かれずに話が出来る。俺の名は芳賀俊哉お前の名は?」


レイ…本名は知らんし自分の事を忘れてしまった幽霊だ


周囲を警戒しながらも自己紹介するレイに結界は張ってあるから大丈夫だと言った後で


あの店で何があった?一体何が起きてる?


と、いきなり質問攻めする俊哉。


「そんな事言われて喋ると思ってんのか?言っておくがお前には…いや…生きてるヤツは関わらない方が良い案件だ」


実のところ、ここ最近のレイは激しいジレンマに襲われていた。

お客の多いワンダーランドの中ではことを荒立てる訳には行かないし、金蔵はこの街に住んで居ないので黒尾の影は金蔵が帰宅した後は即座に浦川学園に戻ってしまうので捕まえるタイミングが見付からなかった。

ならばと考えた事があの日の夜の出来事なのだ。

然し、金蔵が玉斉に相談する事までは予想出来たのだが、その玉斉があそこまで強力な結界を展開させる事までは予想出来なかったのである。


「何だよそれ…」


思わず不満を漏らす俊哉に


「見えるだけで力を持たないお前がR級を相手にするのはド素人がボクシングのヘビー級チャンピオンと素手で試合するのと同義語なんだよ」


と言われてしまう。


その時


「俊哉居る!?」


血相を変えて飛び込んで来たのはミキ。


「!?…チョットこれ見てよ!」


部屋の中にレイの存在を認識したミキであったが今は相手にしている場合じゃないと言わんばかりに俊哉にスマホの画面を見せる。


「・・・何だよコレ・・・本物か?」


ミキが見せたのは生徒から送られて来たのは写メ。

その写メを一見して顔色が変わる俊哉。


「それを確認したいからこんな夜中に此処に来たんだよ!本物かな?」


写メは三上秀一と名乗る高3の生徒からで、イジメの告白ともう我慢出来ないからこのビルから飛び降りると写真が貼り付けてあった。

ミキは浦川学園の女性教師の中でもダントツに人気が有り、あの手この手でモノにしたいと願う男達からこの手の写メも送られて来る事があるし、普段なら相手にもしないのだが、この三上秀一と言う生徒が虐められていると噂は知っている。

だが、教師達は校長から生徒が普段何をしていても一切関わるなと言われているが為に見て見ぬふりを貫くしかないのが現状。

その元凶が校内に巣食う幽霊だと睨んだミキは浦川学園に潜り込んで人知れず戦っているのだ。


「コレは…マジネタっぽいぞ?でも…何処のビルだ?」


写メが送られて来たのは約30分前と表示されているので、この写メが本物のなら今すぐにでも助けに行かなければならないが…場所を把握してから行って間に合うのか?

焦るのは愚策ではあるが、写真だけで場所を特定出来ない為に慌てる俊哉とミキ。

その焦る心が冷静に状況を判断すると言うが出来なくなってしまう。


「コレは…FZファンタジーゾーンだな」


2人の様子が気になったレイが何気にスマホの画面を覗き込み場所を特定する。

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