第33話 闇に蠢く者4
少し強引に行ってしまった感がありますが、平にご容赦の程を
中々正体を表さないわね…
監視する事5日間
ここまで何も変化無し
流石に勘違いだったかなと思い始めた日の夜、時刻は深夜2時
癌に侵されている彼女の身体は所々黒く染まって見えるのだけど、その黒く染まった部分がまるで意思を持っているかの如く動き出す。
「…見張っていたかいがあったわね…」
とは言え、急いては事を仕損じると諺にも有るので暫しの間、事の成り行きを見守る事に専念する。
黒い部分は徐々に色濃くなって人形を形成し、寝ている幸子の腹の部分を擦り出すと何かから逃げるような必死の形相になる。
恐らくは悪夢を見せられているのだろう。
「・・・随分と楽しそうな事をやっているのね?何をしているのかな?」
考えるより先に体が動いた私は瞬時にアンテナと入れ替わり黒い人形の首根っこを掴み引き摺り出す。
うぅぅぅぅぅぅ…
かなり抵抗はされたけど幸子から引き摺り出す事に成功したので、再びアンテナと入れ替わり雨降山へと移動する。
「貴方は誰?」
雨降山に移動した私は黒い人が逃げられない様に結界を張り質問を開始したのだけど、苦しそうに呻くだけで返事も無い。
仕方ないので黒い人に手を翳し集中する。
何があったのかを調べる為に黒い人の記憶を探る為だ。
かなりの霊力と集中力を使うため、多用は出来ないし、プライベートな事まで知ってしまう事になるのでこの技は好きではないのだけど好き嫌いを言っている場合ではない。
・・・・・・
結果…
この黒い人の名前は真島彰利と言う名前で5年前に東北のパチンコ屋のトイレで自殺している。
自殺の理由は仕事もせずにパチンコや公営ギャンブルにハマってしまい、サラ金や闇金に手を出した挙げ句に返済が出来なくなってしまったから。
どおやら旅打ちと称して真島が住み着くパチンコ屋で打っていた2人が大勝していた事を妬んで取り憑いて道ずれにする為であるらしい。
らしいと言うのは、真島の存在が薄いので上手く記憶が読み取れないからなの。
って事は、1度に複数の人に取り憑いているからで、この真島は5%以下の文身体って事なのね。
取り憑いていると言うよりは呪っていると言っても良いかな。
てか、自業自得じゃないのよコレってさ…
然し、1度発症した病気は元には戻せないし、どおしたものか…
一瞬迷ったものの、このまま放って置くわけにも行かないので、浄化の気を纏わせた中指で分身真島の眉間にデコピンを食らわせてやった。
すると、まるでガラスが砕け散る様に粉々になり消えたと同時に幸子への呪いが解けた様子。
こんな消滅の仕方をするなんて思いもよらなかったけど、取り敢えず真島の呪いは消す事が出来たし後は幸子が生きる事を諦めない事を祈るばかりってところかな。
「結局、界底の住人には会えずじまいか…」
残念そうにレイが呟く。
幸子を見張っていたのは界底の住人に出会う為なのだったからこの結末はちょっと不本意だよね。
「ちょっとレイ!何を!?」
アンテナの映像を観察していたレイが何かに気が付いたのか、私と強制的に入れ替わり幸子の部屋へと移動する。
突然の事に面食らった私に手出し無用だと言わんばかりに一瞬だけ睨みつけ幸子の頭上の空間に手を伸ばす。
「エッ!?何なの?何が起こったの?誰?この女!?」
「この!暴れんじゃねぇ!!」
首根っこを捕まれ何もない空間から引摺りだされた女はレイから逃れようとジタバタ暴れていたのだけど、雨降山に連れて来られて逃れられないと思ったのか急に大人しくなる。
どおやら真島が急に居なくなった事に疑問を持ったこの女が状況を確かめる為に顔を出したところをレイに見つかり、捕まったとの事。
そして始まるレイの尋問。
女の名前は岡島智子
数年前、風邪を拗らせて命を落としてしまったとの事。
たかが風邪と甘く見ていたのが悪いのだと納得していたのであるけど、どおしても幸子だけは許せないと言って聞く耳を持とうとはしない。
元々、作倉を巡って三角関係にあった幸子と智子は争う様に作倉にアプローチをしていたのだが、智子が風邪を拗らせて入院したのを良いことに作倉を強引にものにした幸子は智子が亡くなる少し前、見舞いに来た幸子にこう言われたのだと言う。
あの人はもう幸子のものよ!智子悔しい?貴女は負けたのよ!絶望の気持ちを抱いて死ね!
と…
「確かにライバル関係にあったけど、私の事をそんなふうに思っていたなんて許せない!だから復讐する」
悔しさのあまり界底に落ちた智子は真島を取り憑かせるために2人を誘導したとの事であった。
とは言え、智子の怨念が強すぎて今の私達では成仏も浄化もさせられないのよ。
出来る事と言えば幸子は時間の問題だからこれ以上は何もするなと説得するのみ。
説得に応じなければ閻魔でジャッジさせるしかなく、怨念を抱えたままでは十中八九地獄行きは間違いない。
状況判断でしかないけど、このまま地獄行きになるのはかわいそうよ。
少し時間はかかったものの、説得に応じた智子は怨念から解放され閻魔のジャッジによりあの世に旅立って行ったのであった。




