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イリスと元魔王の場合


「魔王いないね」

「今をときめく魔王や。そんな簡単に出てくるわけないやろ。せやかて、アンタのとこの父親はずっと外に出とるわけやないやろ」

「父上はこの間1人でなんか冒険者ギルド行ってたよ。私のギルドカード見たら自分も欲しくなったとかで」

「…子も親も似たようなもんなんやな」


 呆れたようにこちらを見てくる。そんなに父上と私は似てるか?思考回路はロベリアの方がにてると思うぞ。

 今、私とアヴニールは華冬祭というものに来ている。もちろん私は魔物のフリをすべく、ツノとかシッポとかを付けている。アヴニール曰くサキュバスっていう魔物の種類らしい。


「それにしても魔王城の中にまで出し物があるんだ。珍しいね」

「そうか?魔界では普通やけどな」

「人間には差別というものがあるのだよ」


 そうなのだ。人間には階級というものがある。そこでは階級が上の奴が偉い。下っぱは命令を聞かなくちゃいけない。まあ、そうすることで生きていけるわけだが。


「ねえー、あれなに」

「おー?あぁ、あれはな、……武器屋や。……アンタ物騒なもん聞いてくるな」

「そう?私も沢山武器持ってるよ。歳が増えるごとになぜか武器も増えてくし」

「アンタの国はお姫様の誕生日プレゼントに武器を渡すんか」

 

 そりゃ私の国は戦い大好き戦闘狂しかいないしな。だから私は武器のほとんどは扱えるぞ。といってもロベリアのことがあってからは一度もしたことないが。


「お、おー!ねえ、おじじこの鎌何でできてるの?なんかめっちゃ禍々しい!」

「穣ちゃん……なんでそれを持ててるんじゃ!!その武器は普通の大きさに比べて物凄く重いんじゃ!」

「え……?」

「アンタやっぱバケモンやな。おっちゃん、この子の事はあんま考えん方が……おっちゃん?おーいおっちゃん?」


 武器屋のおじじがなぜか固まっている。どうしたんだろ。


「おーい?だいじょぶー?」

「ハッ、ワシはなにを……ってその鎌!」

「あ、これ返すね」

「いやいい。どうせ誰も扱えんかった武器じゃ…アンタにくれてやる。扱えんからゴミと言われた物じゃ。じゃが、あんたのおかげでまた思いきった武器が作れる!その礼じゃ!」


 うおおおお!と急に燃えているおじじを見て、周りは引く。何をさっきから言ってたんだろ。


「ま、いいや。武器ありがとね。バイバーイ」



「うん!全くもって魔王が見つからない!」

「そうやな~。魔王!?って思った奴だって男といたし、魔石店におったしなぁ」

「このままじゃ帰れても帰りたくない!何としてでも見つける!がんばるぞー!!」

「チョコとわたあめとりんご飴を両手に持った奴が何を言うねん」

「あ、欲しかった?ごめん」

「いや何でやねん!違うわ!」


 くだらないやり取りをしながらもイリス達は視線をあちこちに向ける。やっぱり魔王らしき魔力もないな。隠れてるのかな?


「ていうかアンタ、もし見つからなかった時の奥の手ってなんや。いい加減教えてくれてもええやろ」

「言わなーい。だって言ったら絶対止められるもーん」

「危ない発想してるんなら止めるんやろ」

「そうかなぁ~?でもさ、危なくない発想してる奴の方がバカでしょ」

「おん?どうしたんや、急に」


 急に語気が強くなったイリスにアヴニールは声をかける。ハッ、ちょっと昔のことを思い出してしまった。情なんて入れても何にもなんないのに。


「いや、ちょっと、昔のことを思い出しただけだよ。なんでもない」

「そうか。じゃあ話戻るんやけど、いつその奥の手は使うん?」

「だいじょぶだいじょぶ。今分かるよ」


 私は変装で着けていたツノとシッポを取った。あららぁ、アヴニールが驚愕してる。


「ア、アンタ、そんなところでツノなんか取ったら―――」

「人間だああああああ!!」


 魔物がすごい勢いでこっちに向かってきた。理性も全部失っている。ひょいっと魔物達の攻撃から逃げていると、アヴニールに引っ張られた。


「自分何してるんや!変装を取るなんて‥‥とにかく逃げるで!!」

「すまぬ」


 イリスをおんぶしたアヴニールは、イリスを恨みながらも逃げ出した。


 

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