なにこれ
「迷子なう」
ハスライム王国の第一王女イリス・ネオ・ハスライム。
つまり私であるのだが、今は思い付きでダンジョンにいるのである。
「歩いても何もないし、どこに行けばいいかもわかんなーい」
(えーと、今ここが中間部だとして、最深部は・・・)
…チーン。
数秒考えたイリスは、もう迷いの目をなくしていた。
「なんかもう、考えるのめんどくさい」
イリスは杖を出し、倒す。
「よし、あっちだ」
お姫様は考えるのをやめ、杖が倒れた方向に進んで行った。
■
倒れた方向に進んでいくと、大きい扉が現れた。
「?・・・なにこれ」
グイ
開けようとしても開かない。何回引っ張も開かなかった。
「もう、なにこれー」
イライラした姫は勢いよく扉を蹴飛ばした。扉が開いた。
「・・・押すタイプのドアだったか」
中に入るとなにやら大きい、鳥みたいなのがいる。
「なにこれ」
本日三度目の「なにこれ」だが、初めて見るものばかりなので仕方ない。
そう。イリスのいう「なにこれ」はドラゴンだった。
■
ここは冒険者ギルド。今日もたくさんのひとが依頼を受け、旅立ってった。
「あー、ヘデラちゃんいるかい?」
ヘデラとは私、受付嬢の事だ。そして私を呼んでいるのはギルド長。クッソダンディで私の好み。
「はい、何でしょう」
とびきりの笑顔で返事をする。
「今日出した依頼の中にやばいことが発覚したのがあって、ダンジョンの依頼なんだけど、一つSランク級の依頼がBランクとして出されてたみたいで・・・」
それって、朝の子供が受けてった・・・
バンッ
思い切り扉が開かれる音がする。
そこにいたのは数名の騎士だった。
「すみません。姫を知りませんか」
「「ひめ?」」
「なるほど、城中探してもイリス様が見つからず、探しに来たと」
「でもその子って・・・」
王様から見放されたんじゃ・・・
「それが、さすがに姫がいなくなるのはまずいとのことで、探すよう言われたんです」
確かに、前妻の一人娘だもんなぁ。さすがにほっとけないか。
「なので、ここに姫らしき人はここに来ませんでしたか?身長は結構小さく、年は10代です」
「知ってるか?ヘデラちゃん」
ギルド長がうるうるした目で見てくる。さすがに関わったと言ったら責任がなぁ。それに、朝の子供が姫なら・・・
「多分、今日登録された子供です。フードで顔は見えませんでしたが、小さかったです」
「それなら!今どこにいるのですか!?」
「それが‥‥その子が受けたのは・・・Sランクの依頼です」
■
「グオオオオオオ!」
大きな叫び声と共にドラゴンが襲いかかってくる。
口の中から炎を出してきた。
「うおー。すごーい」
そんな物を気にした様子もなく、イリスは歓声を上げた。
どうやらおバカなお姫様は芸だと思っているらしい。そんなわけないだろ。
ドラゴンとは、そう簡単に傷がつかない。うろこで全部吸収される。一人じゃ傷ひとつつけることはできない。そんなのは常識だった。
「魔術・・・いいなぁ。私もしたいなぁ。・・・ん?待てよ?ここはダンジョン・・・。城じゃないなら何してもいいのではー!?」
その考えにたどり着いたイリスは杖を出した。
「どんな魔術にしようかな。やっぱ私も火がいい!」
『火』
これは炎魔術の初級で、魔術を使える者なら使えて当たり前のものだが、イリスはまだ魔力調整ができない。
――ボォッ!!
火が“出た”のではない。
空間が燃えた。
ドラゴンの鱗が弾け、空気が裂ける。
イリスの魔術がドラゴンに、傷をつけた。




