ひとつの手掛かり
「くっ‥‥なぜだ‥‥!なぜこんなにも手掛かりがないんだ‥‥!」
「いや~、進歩もなく被害にあった家全部調べつくしちゃいましたね~」
「どんまい」
今日は四人しか集まっていない。
というか、四人しかしないのだ。なぜかというと・・・
「それにしても、やっぱり皆さんやめてしまいましたね‥‥」
悲しそうにつぶやくのは受付嬢のヘデラだ。
そうなのである。手掛かりもないし、犯人も見つからないからと他の者たちは諦めてしまったのである。
今ここに残っているのは、イリスとヘデラとグラジオラス、それとグラジオラスの部下一人だけだ。
「そういえば私、君の名前知らない」
グラジオラスの部下を指さし問う。
「え?マジか‥‥あー、俺の名前はアントニです。改めてよろしくっす」
「うむ」
なるほど‥‥こいつの部下とは思えんな。
それにめっちゃ軽そうな男だな~。
「収穫がない‥‥これは一番まずいことだ‥‥」
そんな時もある‥‥て言いたいとこだが、確かに結構まずい。
ここでずっと止まっていたら一向に終わらない。
でも私にはあるんだな~。収穫が。
「ねえ、君たちはずっと城下見張ってた?」
「いや‥‥ずっとではないが‥‥」
他の二人もうんうんとうなずく。
「ふふん。私はずっと見張ってたんだよなぁ~」
「は?嘘つけお前一日中見張るなんて、できるわけないだろ」
「それができちゃって‥‥ごめんごめん。ま、見張ってて思ったんだけど、今までの火事は二週間に一回のペースで起きてたよね?」
「ああ、そうだな!」
「そして私たちが調査してから約一ヶ月、一度も火事は起きていないのである!」
おお!と歓声が沸き上がる。
「ということは、犯人は俺たちが嗅ぎまわってることを知ってるんだな!」
「そゆことだね」
「だけどそれが分かったところで何か変わったんです?俺らが調査してない時は火事が起こらないんなら一生調査でもしとくんですか?」
「いや、一つ提案があるの!」
数日後‥‥
また火事が起きた。
しかし中にいた人たちは全員助かったという。
「どういう事なんだ?これは」
グラジオラスが興奮した様子で聞いてくる。
あー、この人『あれ』した時、酔っぱらってたもんなぁ。
「君は酔っぱらって何もかも覚えていないらしいのでもう一度説明しときましょう!」
数日前‥‥
「いきなりついて来てって‥‥何するんですか?体調も酔っぱらってますし、置いてきた方が良かったですよ」
「まあ実際はいらないんだけどね、酔っぱらってくれた方がいろいろと楽なの」
「あー、なるほど」
「‥‥二人ともまさかグラジオラスさんに責任を全部‥‥」
「「当たり前じゃん」」
「お前とは気が合うな、いいじゃんいいじゃん、ドンドンやっていきましょう!」
「お~!」
現在‥‥
「で、そのあと――‥‥」
「おい、一回待て?」
「なに」
「まさか俺は今、お前らがしたことも分からずにお前らの責任を持ってるってことか?」
グラジオラスは、フラッ‥‥と倒れそうになった。
「いや‥‥もういい、続けてくれ‥‥ゴフッ」
「え、あ、オッケー。で、それでね‥‥」
数日前‥‥
「よしよし、ここだよここここ」
「あ?どこですかここ」
「めっちゃ寒いですー!」
今私たちがいるところはとある山の山頂だった。
イリスの手には杖が握られている。
「ここはいい場所だよ。なんせ城下町全体が見える」
「まあ、それは良いんですけど、で?これから何するんです?」
「城下町にいる人全員に魔除けの魔術をかける」
「はあ?無理ですよんなもん、どう考えても魔力が足りなすぎる」
「だからこれを持ってきた!」
ごそごそとポケットを探る。
ジャーンと出したのは手のひらサイズの魔石だった。




