足は歩くが気持ちは先走り
第9章 足は歩くが気持ちは先走り
春祭を回る利久と琥珀だが周りの出店や出し物のレベルが高く見入っていた。
「すげーな3組は幽霊屋敷か」
利久は興味津々で幽霊屋敷を見るが、琥珀は乗り気じゃなかった。
「見て、2組は射的だ。うわ新作ゲーム機あるじゃん、太っ腹~」
琥珀は新作ゲーム機に夢中だった。
すると後ろから声がする。
「利久さーん!」
2人が振り向くと、そこにはサッカー部のマネージャーの佳那がいた。
「佳那ちゃんか!どうしたの~?」
「先輩のクラスの喫茶店行こうとしてたんですけど、先輩たち店番じゃないって聞いて」
「あーそういうこと、俺らは午前組だったからね」
「お隣の子は友達かい?」
「あ、そうです!この子琥珀先輩のファンなんです」
佳那の隣にいた身体の小さな女の子。その子は琥珀が推しらしい。
「ん....どういうことだ」
「なんで俺ファンできてるの」
立ち尽くす琥珀に利久が肘で琥珀の腕をぐりぐりとしてきた。
すると佳那の隣にいた、女の子が口を開いた。
「私、寧音って言いますそれであの..」
「ん?」
琥珀が聞き返すと
「あ、あの琥珀先輩は好きな人いますか...」
その場いた全員が琥珀に視線を向ける。
冷や汗をかいて苦笑いする琥珀。
「あはは..」
空笑いしてから琥珀が答える。
「まあ気になる人ならいる」
寧々は下を向き、カーディガンの袖をぎゅっと握った。
利久が口を割って入った。
「わりぃなこいつは恋愛が下手でな、自分自身のこともよくわかってないんだ」
「おい、何言ってんだよ」
じゃれあう2人を止めるように佳那が言った。
「あの!春祭お二人が良ければ一緒に回りませんか?」
「あー俺はいいけど琥珀は?」
「俺も大丈夫だけど、お前彼女大丈夫なのかよ」
「ああ、別にそういうの気にしない子だから」
佳那は喜んで利久と琥珀の間に入って、寧音は琥珀の横に
小さい体でちょこんと来た。
校庭の方の屋台に行ったり、校門の方では部活動のパフォーマンスなど
色々な所を転々とし休憩に入りトイレに行く琥珀。
トイレを済ませ、外に出るとそこに立っていたのは
――瑠華だった。
「菫城さん!?」
その立ち姿は、足を開き腰に両手を当てていた。
「柊君って!そういうことするんだ!」
「私に連絡しないで、他の女と歩いて楽しんでるんだもんね!」
――お、怒ってるぅぅ...そういえばまた後でって言ってた気がする...
「ご、ごめんなさい」
「もうしらない!」
瑠華は頬を膨らませ歩いて去ってしまった。
「ちょ、ちょっと待って!」
すぐに追いかけた琥珀だったが見失ってしまった。
「はぁ、くっそやらかしたなこれ..」
校内を走ってると、先に歩いていた利久に出会う。
琥珀はとっさに
「ねぇ!菫城さん見てない!?」
「み、見てないけど...」
利久の言葉を待たずに琥珀は去って行った。
その後姿を見ていた寧音は、琥珀の気になる人はだれか分かってしまった。
「あの人がいそうな場所...」
「!」
何かを思い出したかのように走り出した琥珀は、
校舎裏の自販機に向かっていた。
人がいなくなっていく中、校舎裏に差し掛かった瞬間
人影が見えた。
それは瑠華と、手を差し出しお辞儀をしている男。
こんな文化祭の中でも真面目そうな人だった。
告白しているところを偶然見てしまった。
瑠華はそれに動揺している様子だったが
琥珀には瑠華を取られたくないという気持ちの方が強く、
ずるずると足が前に進んでいた。
――い、いやだ僕のだ。
気づいたらぼそっと言葉に出して、気持ちが言葉になってしまった。
そして無意識に口からこぼれた言葉が
「瑠華?何してるの?」




