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メロンパン

第3章 メロンパン

 

 掃除が終わり下校するころには、雨は止んでいた。

「お、止んだなよかった」

「今日バイト歩きか、まいっか」


歩いて下校しようとすると、サッカー部やテニス部たちの声、吹奏楽部の演奏練習。

――そういえば菫城さん、吹奏楽だよな。何演奏してるんだろ。


そう思っていた時にかなり大きな音が校庭に響いた。

それは吹奏楽部の前にある外に出れる踊り場からの音だった。


振り向くとそこには瑠華がいた。

「東条さんだ、何してるんだろ」


琥珀が見ていると、瑠華が目を合わせて声は出さずに手を大きく振ってきた。


「誰に手を振ってるんだろう...」


 それを見た琥珀は一旦周りを見渡しても吹奏楽部の方を向いているのは、琥珀だけ。

琥珀に手を振っているのだと気づき、

胸の奥と顔がふわっと熱くなった。


謙虚に手を振った。

そうすると瑠華は満足したかのように戻って行った。

――な、なんだよ...あの人


 琥珀は好きな人から手を振ってもらいうれしかった。

にこにこでバイトに向かった。


 午後19時

「ありがとうございました~」

コンビニでバイトをしている琥珀は、その日はレジ打ちをしていた。


店長から

「琥珀君、19時30分で上がっていいよ~」


それを聞いた琥珀は、上がる準備をするためごみ捨てや掃除などの準備をしていた時に

瑠華が来た。


「いらっしゃいませ~」


 下を向いて作業していた琥珀はただの客だと思い、挨拶だけをした。

瑠華はイヤホンをしていたから、琥珀の声はあまり通っていなかった。

すべて終わり、レジに戻った時に瑠華が商品を持ってきた。


「お預かりしま...菫城さん!?」


その声はイヤホンをしていた瑠華にも聞こえ、顔を上げると琥珀だった。


「柊君!?」

「何してるの!」

――今日柊君の顔いっぱい見れてる....


「いやそれはこっちのセリフだよ...菫城さんこそ何してるのさ家この近くなの?」


瑠華は首を横に振る、長い髪がなびくたびにいい匂いがする。

琥珀は顔を背けて咳を出すふりをしていた。


「ううん、もうちょい駅側なんだけどね学校帰りにいつもは一個前のコンビニに行くんだけど、そこにいつも買うメロンパンがなくてこっちに来たの」


「なるほどね、これのメロンパンおいしいの?」


 そう琥珀が聞くと、瑠華はよくぞ聞いてくれましたと言わんばかりに答えた。

「おいしいんだよ~」

そのメロンパンを食べたような幸せそうな顔で言った。


琥珀はその幸せな顔を見るだけで胸がいっぱいになり、

その顔に見とれ会計をするのを遅れてしまった。

「柊君?どうしたの?」


瑠華に心配される琥珀、恥ずかしい思いをして急いで会計をした。


「柊君何時に終わるの?」


「30分には終わるよ」


「そっか!後5分...頑張ってね!」


「うんありがと」


メロンパンを買った後に瑠華はコンビニを出た。


バイトの終業時間になった琥珀は着替えて外に出た。

そこには買ったメロンパンを食べている瑠華がいた。


「あ!お疲れ様!」


「え、何してたの待ってたの?」


「そうだよ~、一緒に帰ろうと思ってさ!5分だったし」


 瑠華は琥珀が終わるまで待っていた。

そんな5分という、短い時間でも待っていてくれたことが琥珀にとって

一番うれしくて幸せな気持ちになった。


琥珀は瑠華の隣に立って、食べかけのメロンパンを見た。


――ん、隣に柊君がいる。3年ぶりだね...


「な、なによ!」

瑠華がメロンパンを見てくる琥珀にぐっと顔を寄せた。


「このメロンパンはあげないよ!」


その勢いに琥珀はさっきからずっと心臓の鼓動が高鳴っていた。

それを隠すかのようにクスッと笑い冷静に言った。


「奪わないよ、大丈夫だって」


メロンパンをもぐもぐしている瑠華の顔を見て、もう確信した。


――ああ、ずっとこうしてたい。


 じっと見ていた琥珀に瑠華も心臓の鼓動が早くなっていた。

その恥ずかしさに顔を背けた瑠華、口の中のメロンパンが甘さで溶けそうではなく

熱さで溶けそうになっていた。


少しだけ目を合わせすぐに逸らしてから差し出す。

「...あげる」


そのメロンパンを見つめ琥珀が一言

「いただきます」


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