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雨の匂い

第2章 雨の匂い


「よし行くか」

そう言ってバッグを肩にかけ部屋を出ようとしたとき。


ガタッ


何かにぶつかって落ちた音がした。

琥珀は後ろを振り向いて、確認すると写真建てだった。


 琥珀はそれを拾い写真を目に入れた。

「有栖さん、何してるんだろうな」

「あの日のココアの味は忘れてないよ、行ってきます」


その日は雨が降っていて、じめじめと湿った空気と

雨の独特な匂いが鼻に入った。


「うげ...雨かよ、鬱だな」


そう言っていると、上から

「送って行ってやろうか」


兄だった。


「え、まじー頼む」

そうすると連は


「あーじゃあ、今度ラーメン奢れよ」

「わかったから、遅刻する」


朝から騒がしく会話した後、学校に着いた。


教室に入った後、利久が寄ってきた。


「琥珀今日文化祭の出し物と係決めるってよ」

「おまえ何やる?」


今日は文化祭について話すみたいだ。

そしてなぜか、菫城さんの方に視線を向けあの人のことを考えていた。


――あの人は何やるんだろう。


そう思っていると先生が教室に入ってきてクラスに説明した。


「はい、今日は文化祭のこと決めるぞーなんかやりたいやつないかー」

先生がそう言うと利久が


「はーい、メイド喫茶やりたいでーす」


先生がツッコんだ。


「お前が見たいだけだろー」


クラスが笑いに包まれる。


そんな中瑠華が手を挙げ発表した。

「メイド喫茶はどうかなって思うけど、普通の喫茶店なんてどうかしら?」


その瑠華の言葉にクラス中騒然とする。



 放課後、掃除当番だった琥珀は一人で残り掃除をしていた。

「ったく利久のやつ手伝ってやるとか言ってたくせに彼女に呼ばれたら行くのかよ」

「薄情な奴!」


そんな愚痴をこぼしていると、後ろから


とんとん


と肩をたたかれた。振り向くとそこには

菫城瑠華がいた。


「菫城さん!どうしたの?」

「忘れ物しちゃって...」

「そうなんだ」

「一人で掃除してたの?」

瑠華は首をかしげて、琥珀に聞いた。


「そうだよ、班の人たち俺に押し付けられてこれだよ」


「ふふっそうなんだね」


時が止まる。

会話が弾まない。

琥珀の持っている箒の持ち手は手汗で濡れている。


雨のせいで教室がじめじめとしていて、窓を少し開けていたから

雨と、前にいる瑠華の匂いが混じる。


前髪を触りながら瑠華が聞いてきた。

「柊君さ、好きな人っているの?」


「ええ!なに急に」

「気になっただけだよ!いるの?」


教室の窓にぶつかる雨の音。


「い、いるよ」


その瞬間、瑠華の目が緩く揺れた。


「ふーん誰?」

にやにやとからかいながら瑠華が琥珀にちょっかいを出していた。


「言わないよ!言えないし!」


そう琥珀が言うと諦めたように教室を回った。


「私さ、高校入学する直前にこっちに家の事情で引っ越してきてさ」

「苗字も変わっていろいろあったんだよね」


「その時私にも好きな人がいてさ、もうその人は覚えていないんだろうけど」

「中学の時にいろいろ噂されたりして辛かった時に、そんなの気にしてないように話してくれた人がいたんだよね!」


「...私何言ってんだろ、ごめんね邪魔しちゃって。またね!」


 そのまま瑠華は去って行った。

琥珀はいつもなら、瑠華の好きな人のことを聞くと胸がピリッとしていた。

だが、その時だけはなぜか安心していた。


(なんでなんか安心してんだろ。俺)



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