アイスの味
第20章 アイスの味
コンビニに着いた四人は、飲み物を買い足し、ついでにアイスと花火もかごに入れた。
「あ、このアイスおいしいやつだ!」
子どものように目を輝かせる瑠華に、珠奈がくすりと笑う。
「瑠華ちゃん、無駄遣いしないようにね~」
「無駄遣いじゃないもん。ちゃんと食べるもん」
頬をふくらませる瑠華を見て、琥珀は小さく笑った。
外に出ると、真夏の熱気が一気に肌を包む。
じりじりと焼けるような空気の中、四人はコンビニの前でそれぞれ袋を開けた。
溶けかけたアイスを急いで口に運ぶ。
舌の奥がひんやりと冷えて、身体の芯まで少しだけ楽になる。
「おいし~」
瑠華の弾んだ声。
さっきの出来事が嘘みたいに、いつもの笑顔だった。
「それにしてもあちぃな」
利久は首元を引っ張りながら空を見上げる。
琥珀はその横顔を見て、そして瑠華を見る。
さっき、震えていた指先はもう止まっている。
――本当に大丈夫なのか。
けれど今は、何も言わない。
「そろそろ戻ろう。肉、残ってるだろ」
「そうだなー」
四人は並んで歩き出す。
海風が少しだけ汗を冷ました。
しばらくして、瑠華が立ち止まる。
「ねぇ!」
三人が振り向く。
「どうしたの瑠華ちゃん」
「どしたの菫城さん」
「先輩?」
瑠華は一瞬だけ視線を落とし、それから顔を上げた。
「全員で写真撮りましょ。……思い出に、残しておきたいの」
少しだけ、声が柔らかかった。
三人は顔を見合わせ、自然と笑う。
「当たり前だよ」
琥珀は瑠華の隣に立った。
肩と肩が触れる。
ぎゅうぎゅうになった四人の中で、そっと指先を伸ばす。
瑠華の手に、触れる。
一瞬だけ、びくりとした指。
けれどすぐに、握り返してきた。
「……もう」
小さく抗議する声。
でも離さない。
「はいいくよー!ハイチーズ!」
利久の掛け声と同時に、シャッターが切られる。
海を背にした四人の笑顔。
強がりも、不安も、全部溶けかけたアイスみたいにやわらいでいた。
スマホの画面を覗き込んだ瑠華が、ぽつりと言う。
「今日のアイス、なんか甘いね」
「暑いからじゃない?」
琥珀がそう返すと、瑠華は首を振った。
「ううん。違うよ」
そう言って、もう一口かじる。
溶けた甘さが、少しだけ胸の奥に残った。




