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ココアは暖かい

1章 ココアは暖かい


ーー三年前--



 「うぅー寒!」

吐いた息が真っ白に舞う。

指先の感覚がもうない。


12月。

雪が積もりかけ、空気も冷たく刺さる。


学校までの道のりがやけに長く感じた。

柊 琥珀ひいらぎこはくは手を息ではあと温めながら歩いていた。


 指先をなるべく温めるために少し先の公園の中の自販機で飲み物を買うことにした。

「たしか...ここに...あった」

昨日友達と駄菓子屋行ったときに余った小銭で、ココアを買った。


ピッ


「ん?」


 隣からも音が聞こえて視線を隣に向ける。

セーターから出ている細い指が自販機のボタンを押していた。


ガタンと落ちてきたのは、俺と同じココア。


「君って」

「同じクラスの..」

ぼそっと言った。


 

「そのココア...」

「おいしいですよね!甘くってでもその中に深い苦みがあるっていうか..」

女の子が寒さで頬が赤くなりながら、ココアのことをものすごくうれしそうに語る


「はいっおいしいですよね!」

その日のココアはなぜか甘くずっと暖かかった。


その言葉を聞いた彼女は眼を見開き輝かしながら、

ゆっくりと笑った。


 そしてその三年後、中学を卒業と同時に引っ越した俺は初恋のことなんて忘れていた。

高校の入学式の朝、少し肌寒い4月だった。


「もう4月だよなー?少し冷えるな」

暖かいの飲み物を買うために琥珀はコンビニ入った。


「あ、このココアおいしいやつじゃん」

琥珀がココアを取ろうとした瞬間、人の手のひらが触れる。


「あ」


二人は同じタイミングで声に出した。


「ごめんなさい周り見えてなくて...」

琥珀が必死に謝ると、

女の子も謝罪した。


「そんなに謝らなくたっていいですよ、私も見えてなくてごめんなさい」


それに続き彼女は言った。

「そのココアおいしいですよね、私好きなんです。そのココア」

「甘くてその中に深い苦みがあるっていうか」


「そうですね、わかります。おいしいですよね」


彼女は笑いながら下を向き早歩きで去ってしまった。



(なんか聞いたこと...ある?)

「まいっか、遅刻しちゃう」



今は高校2年で、初恋の日は中学2年ほぼ覚えてない。

だけど――覚えてるのはココアの味だけだった。


「おい琥珀ー!飯行こうぜー」

友達に呼ばれ、昼休みに入った。


「待って~」


「お前毎回寝てるけど大丈夫か?」


「任せろ、このザ平凡なめるなよ?ずっと中間キープしてるんだから」


 そんなバカ話をしてる時に先に外に出ていたクラスの女子軍団が通った。

だが俺の目は無意識に彼女を追っていた。


 そんな俺のことを見た友達の一ノ寺利久いちのでらりくが俺に言ってきた

「やめとけ。菫城さんなんて、俺らの世界の住人じゃない」

「しかもあの人告白されても、好きな人がいますの一転張りだそうだよ」


菫城瑠華とうじょうるかこの学校で一番の美少女。


 利久が言った「好きな人」という言葉に胸がぴりっとしてしまった。

――なにマジになってんだよ俺、好きな人なんていて当然だろ。


「別に、好きとかじゃなくても見るだろ」

その一言は学校の男子共通だった。


利久は彼女がいる身でも菫城さんを見てしまうのだそう。

「確かになぁ、俺も見ちゃう。わかる」


 昼休み、昼ご飯を食べた利久と琥珀はだらだらと話しながら休憩していた。

琥珀が飲み物を買いに行く。


「飲み物買ってくるけどなんかいる?」


「あーじゃあ、サイダーで」


「ん」


席を立ち、スマホを見ながら階段を降り校舎裏の自販機に向かいサイダーと、

ココアを見ていた。

――ココア....お茶でいいや。


お茶のボタンを押そうとしたとき

「あれ、ココア買わないんですか?」


声が聞こえた。その声はとても透き通っていて心地が良かった。

「と、菫城さん!」

「なんか用ですか?」


俺は菫城さんに聞いた。

「えー君がココア買うのかなって思って!」


「ほら入学式の朝一緒のココア買ったでしょ、だから買うのかなって思って」

「あのココアそんなに有名じゃないのに、買う人初めて見たから好きなのかなって思ってね」


 饒舌に喋る彼女に気を取られていると遠くで聞こえる彼女の友達たちの声。

「おーい!瑠華いくよ~」

「あ、呼ばれてるまたね!」

「今行くよ~」


琥珀はその場に立ち尽くしていた。


(瑠華って聞いたことあるような...)


カランカラン


 ボタンを押さずに放置していたから小銭が落ちてきていた。

そこには小銭と利久に渡すサイダーが残されていた。


「ココア...か」


 利久のところに戻った琥珀は利久に違和感を覚えさせていた。

「ん?お前なんかあった?」

利久は少し鋭いところがある。何か小さなことでも気づく観察眼、

利久の前では隠し事はできないと思っている。


「バレたか、実は菫城さんに話かけられた」

そういうと利久は勢いよく立ち上がった。


「は!?」

「声がでかいよ、なんだよ」


利久は咳ばらいをしてまた座った。


「まじかよなんで?」


「いや普通に」


「普通って、お前に話しかける要素ないだろ」


「おい、それは失礼」


話しているうちに昼休みが終わりかけていた。


「おい、次の授業移動だろ早めに帰ろう」

琥珀が言うと二人は席を立った。


教室に向かって歩いて帰ってるときに利久が言ってきた。


「お前、なんでこの時期にココアなんだよあちーだろ」


琥珀は少し黙った。


「いいんだよ好きだから」


琥珀は飲んでいるココアの缶をギュッと握った、


そのココアは時間経っているのに、なぜかさらに甘く暖かかった。



「ふふっ」

「変わらないね」

瑠華が見つめる先には手帳だった。


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