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プロローグ
同じ教室で、同じ時間を過ごしている。
それだけなのに、どうして彼女は特別なんだろう。
授業を受けている横顔や、ノートを取る仕草。
ただそれだけの光景なのに、気づけば目で追ってしまう。
入学してから、ずっとそうだった。
好きなのかと聞かれたら、たぶん答えられない。
釣り合うはずがないと思っているから、
自分から距離を取っているだけなのかもしれない。
それでも、彼女の近くにいると、
胸の奥が少しだけ温かくなる瞬間がある。
理由はわからない。
ただひとつ確かなのは――
あの日、寒空の下で飲んだココアの味だけは、
今もはっきりと覚えているということだった。




