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実は魔法はスキルじゃない




 さて、今日は魔法の実験をする日だ。

 昨日読んでもらった魔法の教科書はあまり理解できたとは言えないが、基礎は分かったつもりだ。




 魔法とは、体内のマナを燃焼させてマギカに変換した後思念的なコントロールを交えた儀式的な動作をして物理的な現象にする技術のことらしい。




 先ず、マナが何なのかが分からない。

 マギカに変換すると、どうなるんだ?

 思念的なコントロールって、どうやるの?


 固有名詞のせいで、疑問だらけだ。


 だが、俺は異世界転生者だ。ファンタジー系統の小説やアニメ、マンガ、ゲームを知っている。

 そういった知識から、分からないことも理解することが出来る可能性がある。


 そうやって考えて理解を深める。

 マナとはMP。マギカは詠唱待機状態。

 そしてそれを、狙った方法で解き放つ。


 ……何か違うな、思念的コントロールって何だよ!これのせいで、理解が先に進まない!


 儀式的な動作、というからには呪文の詠唱とかするのだろうか?それなら分かりやすい。

 だが次の問題はマナの燃焼のさせ方だ。

 ヒントが無い。全く無い。


 とりあえず瞑想しよう、そうしよう。




 そして数ヶ月が経った。早い、早すぎる。

 全く進展がなかったのだ。


 使用人達に学術書を読ませても、マナの燃焼のさせ方なんて書いていない。

 きっと初歩中の初歩なのだろう。わざわざ本に書く必要もない、常識ってやつか。


 ぐううう!常識が憎い!常識でさえなければ、本に書いてさえあれば!分かったかもしれないのに!

 だが俺もむざむざ時間を無駄にはしていない!


 ゆっくり喋れる単語を増やしつつ、大人達に怪しまれないようになぜなぜ期に突入したのだ!


「ねえ!マナのねんしょうってなに?」


「マナの燃焼、ですか?坊ちゃまにはまだ早いですよ、あれはもっと大きくなってから知るものですからね。早くても10歳頃に知ることですよ。」


 ガーンだな、と普通ならなる所だろう。

 だが今の俺は坊ちゃま!しかも知っているのに、椅子とかスプーンもなぜなぜする聞きたがり!


 メイド長にははぐらかされたが、新人のメイド如きにはぐらかされるなぜなぜ期ではないわ!

 俺は諦めんぞ!なぜなぜ期万歳!


「おしえて〜!マナのねんしょうってなに〜?」


「うう、えっと、マナの燃焼はですね……。」


 使用人が観念して言う。やっぱり新人は便利だ、報連相が出来ていないから簡単に聞き出せる。


 さて、聞き出したことをまとめてみよう。

 先ず、マナとは体内のエネルギーだ。

 そしてマナの燃焼とは、ぐっと力を入れて使いやすくすることだ。


 ……ぐっと力を入れるって、あやふや過ぎだろ!


 それで、マギカは使いやすくした状態のマナ。

 元に戻せず、直ぐ消えてしまうのだとか。

 そしてマナを全部マギカに変換してしまうと、最悪の場合死に至るらしい。


 そりゃあメイド長が教えてくれない訳だ。

 こんなものを子供に教えたら、子供が1人でやって死ぬ可能性があるもんな。

 こんなことを教えたこのメイドは、いくら新人でも解雇レベルのやらかしだな。


 自分でやるのは危ないと知って少し落ち込んだが、せめてマナの燃焼くらいは見ておきたい。


「マナのねんしょう見せて!」


「すみません坊ちゃま、マナの燃焼は他の人が見ても判んないんですよ。」


「やってやって!マナのねんしょう、やって!」


「うーん、まあやるだけやってみようか……。」


 するとメイドが肩の力を抜き、ゆっくり深呼吸をした。そして直ぐ深呼吸をやめた。


 さっきぐっと力を入れるとか言ってたじゃん!

 嘘ついたなコイツ!


「ふぅ。坊ちゃま、マナの燃焼をしましたよ?」


「え〜?なにもしてないじゃん!じゃあ、まほうみせて!まほうみたい!まほうやって!」


「はい、下手で良かったら見せますよ。」


 今度は空中に指をくるくるしながら呟く。


「水よ!我が魔力を糧に、我が元にその姿を現せ!クリエイト・ウォーター!」


 メイドの掌に水が生成された。メイドは零れないように、素早く自分で飲み干した。


「坊ちゃま、今のがクリエイト・ウォーターの魔法です。昔の風習で、水生成の魔法と呼ばれることもあるらしいですよ。水魔法の中ではかなり簡単な方ですので、私でも使えるんですよ。」


 水生成の魔法……聞いたことがある気がする。

 まあ、それは置いといて。

 これで俺は魔法の使い方を知ることが出来た。

 でもマナが無くなったら死ぬというのが、嘘か本当なのかが分からない。

 俺は実験で死にたくないから、まだ使えないな。


「ふーん……。ねえ、あれなに?」


 話を軽く流し、なぜなぜ期を続けておいた。

 俺も魔法、早く使いたいなぁ……。




 そういえば、あの相手の情報が分かるプレートの正式名称を最近知ったのだ。

 鑑定、というらしい。まんまだな。


 果物の選別は鑑定扱いだったらしく、ただ美味しそうな果物を選んでいるだけで習得出来たのだ。

 しかも毎日ずっと使っていたお陰で、鑑定の情報量もどんどん増えていったのだ。


【新人のメイド/ドリス


よくドジを踏む。


スキル/未習得】


 これがさっきのメイドだ。

 魔法を使っているのにスキル未習得ということは、魔法はスキルが必要なものではないらしい。


 そして俺はこれだ。


【辺境伯の長男/・ネハンピ


手当り次第、物を鑑定する癖がある。


スキル/鑑定(中)】


 鑑定のスキル名は鑑定で知ったのだ。

 手当り次第プレートを出しまくったせいで、鑑定スキルから鑑定キチ扱いされてしまった。


 ……しかしこんなスキルがあったら、プライバシーとかこの世界には無いようなものだな。

 鑑定スキルを持っている人は見たこともないが、絶対俺以外にも鑑定スキル持ちは居るだろう。


 俺の将来のプライバシーを守るために、俺は自分の鑑定スキルでいろいろ試すのであった。




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