突然の出来事
僕と先輩は、ゴミをゴミ箱に捨てた。
「凌平、キスしていい?」
「うん」
健斗さんは、何度もキスをしてきた。
「早く帰ろう」
「したくなった?」
「うん」
「タクシー呼べばよかったかな?」
一つ目のミスは、タクシーを呼ばなかった事だ。
手を繋いでくれる健斗さんが、大好きだった。
「駅前で、ひろうか?」
「うん」
二つ目のミスは、暗い道を通った事だった。
「イチャイチャしてんじゃねーぞ。男同士で」
「マジな」
目の前にいるカップルが、ボコボコに殴られていた。
「警察とか無駄な」
「俺等、いらついてんだよ」
三つ目のミスは、逃げなかった事だ。
「健斗さん、行こう」
「駄目だ、凌平。救急車呼ばなくちゃ」
頭のおかしい奴に出会ったら、走って逃げる事。
今の僕ならわかる。
「救急車なんか呼んだらぶっ殺すぞ」
「つうか、マジ。イライラすんだけど。」
「やめてください。」
「見ちゃったら帰せないよな?」
「健斗さん、逃げよう」
僕が、手を引っ張る速度より奴等が健斗さんを殴る速度の方が早かった。
手探りで、ポケットに入れたスマホで僕は、誰かにかけた。
「やめろよ」
殴られそうになった僕を健斗さんが、守った。
「なんだテメー」
「こいつには、手を出すな」
「ふざけんなよ、気持ち悪いな」
健斗さんは、僕をしっかり抱き締めてくれていた。
「頭から、血が出てる」
「たいしたことじゃない」
「夜桜なんか見なきゃよかった。会社の近くだからってよらなきゃよかった。」
「うっせーな、テメーは、ビービー女みてーによ」
健斗さんは、殴られそうになった僕をさらにかばった。
「ゴホッ」
僕の顔に血が、かかった。
鉄の棒を持ってる、バットか何かだ。
「凌平、シー」
僕の頭を自分の胸に包み込んだ。
「おっさん、離せよ」
バキッって、骨が折れた音がした。
「うゎぁぁあぁ」
痛みに叫んだ。
この時間帯は、誰も通らなかった。
さっきのカップルは、生きているのだろうか?
「おっさん、そいつ離せ」
健斗さんは、僕をしっかり抱き締めた。
暫く殴り続けられた時、新たなターゲットが現れた。
「キャーー」
「うっせーな」
犯人は、そっちに行った。
「健斗さん」
「ゴホッ…」
「死なないで」
「凌平…何もなくてよかった」
「健斗さん、嫌だよ」
カップルが、殴られていた。
「お前ら、何してる」
警察がやってきて、救急車のサイレンが聞こえた。
「よかった」
犯人は、その場で逮捕された。
救急車がやってきて、健斗さんは乗せられた。
僕もついていった。
「健斗さん、嫌だよ」
「凌平、愛してるよ」
そう言った後、意識を失った。
搬送先の病院で、手術が行われた。
僕は、健斗さんの鞄を握りしめながら震えていた。
「手術は、終わりました。」
「健斗さんは?」
「何とも言えません」
先生は、そう言った。
これが、上條陸だった。
「うゎぁぁぁぁ」
僕は、桜の花が大嫌いになった。
警察がやってきた。
「カップルは、先ほどお亡くなりになりました。詳しくお話を聞けますか?」
「はい」
僕は、起きた出来事を話した。
「犯人の供述内容と同じでした。ご協力ありがとうございました。」
そう言って、警察は帰っていった。
ICUに、入った。
また、上條陸に会った。
「彼氏ですか?」
「はい」
「彼のご家族は?」
「絶縁状態です。」
「脳の損傷が酷いので、出来れば早めにご家族にご連絡して下さい。」
「それって、命が危ないって事ですか?」
「今は、何とも言えません」
「そうですか、わかりました。かけてみます。」
「よろしくお願いします。」
僕は、先生が去った後に健斗さんに近づいた。
「健斗さん、ごめんね。僕のせいで…。」
たくさんの機械に繋がられた健斗さんは、さっきまでの健斗さんじゃなくて…。
母親が、亡くなる前にこんな機械にまみれていたのを思い出して余計に泣けてきた。
「健斗さん、生きてね。死なないでね」
僕は、長くその場所にいれなかった。




