私は、君が好き
いったんこのトキメキを知ってしまうと、人間は元に戻れないのだ。
嘘をついたって、苦しくたって、とことん傍にいたいのだ。
「早乙女、お前は俺を裏切るなよ」
「何、それ?」
「何となくだよ」
そう言って、クッキーを食べてる。
私には、歩君の気持ちが一ミリも理解できなかった。
「カレー食べる?」
「うん、食べる」
私は、レトルトカレーを温める。
「最近は、レンジで作れて便利だな」
「その他、大勢と同じことしてる?」
私の肩に歩君は、顎を乗せていた。
「別に」
「あっそ」
後ろから、抱き締められた。
「やめてよ、そうやったら好きになると思ってるなら大間違いだから」
「わかってる」
歩君は、私から離れた。
ダイニングテーブルの椅子を引いて、腰かけた。
炊飯器から、お米をよそってカレーをかける。
【歩君が、好きです】
【俺の勝ち、バイバイ】
たくさんの女の子が、そうされてるのを見た。
「はい」
「ありがと」
私と歩君は、カレーを食べる。
【手繋いでくれるの?】
【この方が、危なくないだろ?】
たくさんの女の子が、振り回されてるのを見た。
私は、その他大勢に紛れたくなかった。
「ゴロゴロの具材のカレー食べたいな。」
「そうだね」
「学校のカレーだって、小さいだろ?野菜。もっと、ゴロゴロしたやつ食いたい」
「そうだね」
「早乙女、怒った?」
「別に」
「もう、キスしようとか言わないから」
「だから、何?」
「俺を見捨てるなよ」
何で、そんな寂しそうな顔するの?
私に、興味なんかないくせに…
「お隣さんでしょ?」
私は、カレーを食べ終わった。
「だよな、ハハハ」
「ダサいよ。なんか、そういうの。歩君ぽくないよね?」
「だよな。わかるわかる。」
歩君に惹かれる人の気持ちがわかる。
真っ白な肌に、茶色の瞳、キリッとした目、柔らかそうな唇。
カチャカチャ
お皿を流しに置く
「なに?」
また、後ろから抱き締められた。
「ダサいのわかってるけど、聞いてくれ。俺を裏切らないでよ。早乙女だけは」
「意味わかんないよ」
「早乙女」
「そうやって、優しい言葉かけたら女子はみんな好きになるって思ってるなら大間違いだよ」
「だよな、忘れて。帰るわ」
ガチャンって、閉じた扉。
どうせ秒で、追い出されるのに…
まだ、7時半だよ
私は、泣きながらキッチンにしゃがみ込んだ。
嬉しくて、心臓がちぎれそうなぐらい速かったのに…。
私は、嘘をついた。
冷凍庫から、チョコレートアイスを手に取った。
ガチャ
「ほら、食べな。デザート」
「何だよ、早乙女」
「どうせ、二秒で追い出されたんでしょ?」
「馬鹿野郎」
「ありがとう」
私は、また歩君を部屋に入れた。
アイスを食べてる。
「チョコレート好きだよね」
「うん」
「リラックス効果あるんだって」
「へぇー。」
「まだ、やってた」
「うん、金もらってるから」
「違う人?」
「うん」
「何人いるの?」
「さあな」
「気持ちいいのかな?」
「興味あんの?」
「さあね」
私は、体育座りしながらアイスを食べる。
「それ、エロいな」
「はぁ?」
「こうやって、あの人やってた」
「やめてよ。アイスで遊ぶの」
「チョコレートついてる」
唇の端を指で、なぞられた。
ゾクッとした。
「俺にやってよ。早乙女なら、いいよ」
「そういうのは、好きな人にしなよ」
「早乙女は、俺が嫌い」
愁いを帯びた目に、長い睫毛がかかる。
そのコントラストを見ていると嫌って言えなくなる。
「まだ、アイス食べてんの、あっ!!」
「うまいわ」
「もう、噛らないでよ」
間接キスってやつかな…
それだけで、お腹いっぱいだった。
ただ、いるだけでお腹いっぱいだった。
「ハハハ、残念だったな」
9時になったら、帰る。
でも、日曜日以外は私の家にいる。
どんな関係って言われたら、答えられなかった。
初めては、全部歩君がいいよ
でも、私を好きになってくれなきゃ嫌だよ。




