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不毛な恋の諦め方

拍手に載せていたものを移動しました。


もう今更ですが近親相姦ネタなのでごにょごにょ






 妹は普通に可愛い。

 思えば今まで、弟妹たちに会ったことがあっただろうか。遠目に見たことはあっても、直接会うことは無かったような気がする。

 ――好きになれないと思ったからだ。


「おにーちゃんさ、ほんと不毛だよね!」

「マザコンは死ななきゃ治らないよ」

「死んでも治んないでしょー」


 からからと笑っている妹の言葉に、そうかもしれないと思ったが――いくら何でも、生まれ変わってまでこんな不毛な恋はしたくない。

 どうせなら、母とは親子としてではなく出会いたいものだ。







 世界にも終わりはやって来る。

 老いのない精霊とはいえ、生に飽いて死ぬことは珍しくないし、精霊王ですらそうだった。


 一番平和だった両親が死して、その数年後後を追うようにミサが亡くなって、また1人になった。

 両親の死に目には会えなかったけど、ミサは晩年を共に過ごした。しばらく遭っていなかったけど、未だに恋人の1人もいないようだった。


「お兄ちゃん、……」


 憔悴した妹は、ゆっくりと俺に手を伸ばして呟いた。


「……生まれ変わったら、今度はママじゃなくて、ミサにしておきなよ」


 真意は、分からなかった。そしてその数日後、眠るように死に至った。

 長い冬の後、リーベルは病に蝕まれてしまったらしい。大地は枯れ、海は渇き、空は濁った。母星の緩慢な死と共に、精霊の力は奪われていた。長く蓄えた力があればこそ、俺はその緩やかな滅亡を見届ける事を許された。


 そして――


「お前もお気に入りなんだよな。つーか一家揃って倒錯しすぎだろ、いいぞもっとやれ」


 ――滅びたと思った神が、目の前に現れた。


 愛の神と名乗るそれは、この世界の神に代わり、あの大戦が終わって以降この世界を管理していたという。そして今、彼は彼の元々居た世界とこの世界を統合しようとしているそうだ。

 そうした後、どうなるのかは分からない。

 けれど、俺にとっていいことが起きる、とだけ言った。


「一度だけ、だ。お前の愛した“家族”を、もう一度揃える機会をやるよ」


 そして、神は――軽薄な笑みを浮かべて、俺の背を押した。


 ぐるぐると視界が回り、そして、暗転。







 そこにいるのが母親であると、直感が告げていた。

 思い出す。母が、あの世界へ来る要因となった死の原因は――謂れ無き恨みが巡り巡った八つ当たり。刺され、切られ、今際の際にまで父に脅されながら死んだ。心底かわいそうである。


 母にぶつかりながら、女は手に持った鋭い針のようなもので母の脇腹を突いていた。鍛えられていない、やわらかいであろう腹。絹を裂くような悲鳴が聞こえた瞬間、勝手に体が動いた。


 武器を叩き落して、女の腕を捻り上げる。しかし女はこちらを認識できていないようで、戸惑ったような声を上げながらも、未だ母に憎しみの篭った目を向けていた。


 そのすぐ後に、父が現れた。一瞬目が合ったが、やはり気づいた様子はなかった。


 そうして父と母がゆっくりと人生を歩んでいくのを、俺は数年の間、見続けた。

 誰にも認識されないまま、両親がくっつくまでをじれったい思いで見続けて、そして。


 あの神は、このことを言っていたのだろうか。


 ――時が来た。ゆっくりと意識が途絶えていくが、不思議と不快でもないし、怖くもない。

 暗闇が迫り、やがて完全な無が訪れ、そして絶対的な安心を感じた。


 おぎゃあ、と自分のものでないような声。

 ゆっくりと記憶が零れ落ちていく事は怖いが、それでも、幸せは予感できた。


 ぎゅ、と抱き付く。これがきっと最後。俺が俺として生きていられた、最期になる。







 覚えているのはたったひとつの、ある少女の遺言。


 ――今度はママじゃなくて、ミサにしておきなよ。


 強烈な感情を誰に向けていたのかも忘れてしまったから、だから、その言葉に従った。妹を愛するのは、きっとその時よりもずっと楽なのだろう。


 自分でそう言ったのだから、責任は取ってもらおう。

 そう思いながら、新しい人生を歩んでゆく。少し嫌いで、大好きだった家族と共に。







→生存ルートへ


という締め方をしてみました。

お付き合いありがとうございましたー。またネタが出てくれば。

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― 新着の感想 ―
それぞれの話も面白かったし、話が繋がっていく感じもすごく好きです!! この家族全員好き!!!!
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