第十話
現在エルムテルダムの北の草原で、街中で受けた討伐クエストを行っている。
討伐クエストの内容は「ブレストボア10体の討伐」であるのだが、この敵は強敵なのでポップ率が悪い。
なので15分おきくらいに出てくるイノシシを待ちつつ、そこらのオオカミやスライムを倒しながら駄弁っていた。
「クレンさんってレベルどれくらいになったんですか?」
「あ~、最近確認したときには17だったよ」
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クレン/人族Lv.17
スキル/《大鎌の使い手Lv.3》《軽業の心得Lv.9》《氷結魔法Lv.2》《水属性魔法Lv.8》
《追跡Lv.1》《金眼Lv.1》
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具体的に言えばこんな感じだ。
最近というかスキルが進化してからしばらくして思ったのだが、やはり進化スキルは育つのが遅い。
これは「心得」が外れてはじめて一人前になったということで、理解できるのだが、やはりここからが本当の冒険ですよと運営に言われているようなそんな気さえする。
「速いですね!?私まだ15ですよ」
15でもトップらへんのプレイヤーだとは思うのだが・・・
そこまで考えてふと思う。
「そういえば俺たち、自分たちがどの辺の強さにいるのかわからなく無いか?」
「大体ですけど、私はわかりますよ」
「どうしてわかるんだ?」
「このゲームの掲示板を見ているからです」
「け、掲示板??」
ちょっと待て。俺は今までそんなものを見たことも聞いたこともないぞ。
もちろん、始まりの街でいろいろ教えて貰ったとき、Fakerさんもそんなこと言ってはいなかった。
そこまで考えているとやっとのことでブレストボアが沸く。
俺たちはアイコンタクトをとり、いったん話すのを辞め、その1体に集中することにした。
「それで結局、掲示板ってどうやって見るんだ?」
「ウィンドウ開いて、全体チャットの欄に行けばいろんなスレッドが立てられてますよ」
そういえば全体チャットなんて見たこともなかったな。
『物語考察スレ』や『スキルスレ』、『モンスター愛好スレ』など様々なものがあったが、俺が興味を引かれたのは『最強PLランキングスレ』であった。
どうやらカザキも同じのが気になったらしく、2人して見ようとするがまだクエストの途中であったため辞めた。
それからはまた狩りに戻り、ブレストボアが沸くのを待ちつつそこら辺のモブを倒していた。
『最強PLランキングスレ』に触発されたからか、俺たちは普段とは何か違うやる気に満ちあふれながらモンスターたちを蹴散らしていった。
「早く見ましょうよ!」
「もう少し落ち着いた場所でな」
ウキウキした様子の弓使いさんは、どうやら早くさっきのスレッドが見たいらしい。
かといって街の中で歩きスマホならぬ歩きウィンドウをやっても人様に迷惑がかかるだけなので、案の定、レストランについてから見ることにした。
レストランに到着するや否や、お互いにすぐに掲示板を開く。
街中ではあんなことを言ったが、俺も実は我慢していたのだ。
見てみると1位から5位までに俺たちの名は無かった。
代わりに、3位にFakerさんがいた。
久しぶりに見た名前だったので素直にうれしい。
あのときフレンド登録しとけばな、とか会ってみたいなとか、いろいろな願望が出てくるが後の祭りである。
下までどんどんスクロールしていくと、最初にボスを倒した人がまだ名乗り上げていないため、実際のランキングが作れない、とか最初にボスを倒した人の考察などもされていた。
正直に言うと少し自慢げになっていたかも知れない。
正面のカザキを見てみると、先ほどまでは自分達の名前がないことにしゅん・・・としていたが今は少し得意げになっているのが顔を見ただけでわかる。
「私たちも今から名乗っちゃいましょうか!」
カザキはニコニコと掲示板に書き込もうとするが俺は悩んでいた。
このゲームで強さを誇示すればするほど、パーティに誘われるようになってしまうのではないか。
となると、俺は大鎌なのでパーティプレイに向かないが、カザキは後衛なのでいろいろなパーティに誘われるようになる。
あれ・・・? もしかして俺だけのけ者にされる可能性がある?
そこまで考えたところで俺は声が出ていた。
「えーと、まだ言わない方が良いと思うな・・・多分」
理由までは言えなかった。
自分がのけ者にされるのが嫌だからなんて子供じみた理由を言えるはずがなかった。
同時にこのバディと離れたくはない・・・と思いながらなんとか言葉を紡ごうとするが、カザキの言葉がそれを遮った。
「私も今の状態で満足しているので、むやみに名前を出して色々ぐちゃぐちゃになっちゃうの嫌です。このことはまだ言わないでおきましょう」
その夜、俺は宿屋に入り考えていた。
珍しく、これからのことを。
いつも行き当たりばったりで、あとは俺たちの好奇心で歩んできた冒険だが少しは計画性を持たないとまずいことになる。
例えば、俺は(多分カザキも)いつの間にかトッププレイヤーでいたいというエゴが生まれてきている。
それは今回掲示板を見たときのお互いの反応を見ればわかるだろう。
そして、掲示板に書かれたメンバーでボスの討伐に向かうとする、このとき俺たちはきっと参加できなかったことを苦やしむと思う。
であれば、いつかは最強とうたわれるメンバー達とコンタクトをとらなければいけない。
そして、このパーティをどうするかを話し合わなくてはならない。
もし解散することになったら・・・
なぜか暗くなっていく思考を遮るように、今日は寝ることにした。
宿屋の1室、俺たちは別々の部屋を借りるのだが、話し合いのためカザキは俺の部屋に来ていた。
俺はなんとしても今日、これからのことを決めなくてはならない。
自由気ままに風景を見れれば良いなどと考えてきたが、それと相反するよう俺はいろいろなエゴやプライドを生み出してしまった。
だからこそ、問題を解決するために話し合う。
「カザキ、君はボスモンスターを倒したい、いや違うな。トッププレイヤーで居続けたいか?」
そんな質問が急に来るとは思っていなかったのか少しびっくりした後、下を向き考える。
「居続けたい・・・んだと思います。最初は好奇心が赴くままに冒険できれば良いなと思ってたんですけど、最初のボスを倒してから、なんというか、無駄なプライドみたいなのが出てきた気がして。昨日掲示板を見たときには正直、なんで私たちが乗っていないんだ、なんて思ってました」
ちょっと下を向いた後、上目遣い気味にこちらを見てカザキは続けた。
「嫌でしたか? こういう考えは」
「全然嫌じゃない。むしろ俺もそうなんだ。おいて行かれたくない、という気持ちが大きい」
そして本題に入るために少し深呼吸してつなげる。
「となると、掲示板に書かれた最強メンバーとコンタクトをとる必要があると思うんだ。俺たちが知らないところでボスを倒される可能性が出てくるから」
うんうん、と頷くカザキを前に、俺は勇気を振り絞り聞いてみる。
「俺とどこかのクラン、ギルドに入る、もしくはパーティを解散して君だけがクランなどに入るという可能性になったらどうする?」
端的に言えば、俺とパーティを続けたいかどうかである。
この言葉が出なかったのは、真っ正面から続けたくないと言われれば俺の心が壊れてしまうと判断したからだ。
「その前に、クレンさんはどうなんですか?」
そういうカザキの顔は今まで見た顔の中で、間違いなく1番優しく、美しかった。
「俺はまだパーティを一緒に組んでいたい。それでありながらトッププレイヤーでいたい」
気づけば自然と声が出ていた。
それを聞いたカザキは窓の外に視線をやりつつ答えた。
「私も、クレンさんと一緒に冒険したいです」
俺たちの心は一致した。




