『さてと…』
覇王が少しだけ動きます(* ̄∇ ̄)ノ
ダークは一瞬で寝た。
さながら徹夜続きのランカーが走り終えた瞬間の如く、死んだように眠っている。
一応寝ているのを確認した後、ベッドの周りを遮音結界で覆う。
己にかけていた認識阻害を解く。
『天井裏、窓の外、扉の向こう、クローゼットの中…そして部屋の中央床下に居る奴等、出てこい』
静かな声が部屋に響く。
『誰も出てこない、か。
面倒だが、押し付けられる奴が居ないしな…』
何も無い空間へ手を伸ばすと、空間が揺らぐ。
揺らぎから鈍刀を取り出し、天井に放る。
天井に開いた穴から刀を伝い、鉄臭い液体がボタボタと落ちる。
『まずは一人。
早く出てこなければ、全員こうなるぞ?』
暫く待つが、反応は無い。
『一人ずつ黙らせて行く。
早く出てきた方が身の為だ』
刀の回収はせず、またも揺らぎから取り出した刀を窓辺に放る。
刀身が壁の向こうへ消えると、一拍遅れて何かが地面に落ちた音がした。
『二人目』
新な刀を扉へ放る。
何か硬質な物を貫いた様な音がした。
『三人目』
出すのが面倒になり、三人目に投げつけた刀を抜き取る。
床下に有る気配を消すべく、振り被り、降り下ろす。
刃先が床を切り裂き、床下に居る何者かを骸に変えようとした瞬間。
邪魔が…もとい、待ったが入る。
「待ってくれ!」
クローゼットの中から、昼間の姫に付いていた隊長格が出てくる。
「監視してたのは謝る、だから話だけでも聞いてくれ!」
「隊長!!我らに下った命は、勇者の監視。
そして、もしも発見されたら口を割る前に死ねと命じられたでしょう!」
「だがな…」
ああ、やはり隊長だったらしい。
床板を外し出てきた、一目で真面目と分かる女騎士が叫ぶ。
職業意識が高いのは結構だが、語るに落ちるとはこの事か。
しかし、くっころさん…成る程、邪魔が入る訳だ。
「くっころさんは殺されない伝説」
俺すら止めるとは…侮れんな。
ダークが起きていれば
「くっころさん…くっころさんだ!
是非、俺の護衛に!
後で、一緒にオークの巣に行きましょう!」
と言ったに違い無い。
そして、この世界には本当にオークが棲息しているから困る。
ゴブリンも勿論棲息している…わりかし近い森に。
「だが、ここまで被害が出ては投降する他無いだろ?
俺は姫様に忠誠を誓っているが、国王や宰相の為に死にたくはない」
「ですが!
我々は姫の親衛隊である前に、国の騎士なのです。
ですから、王の命に逆らう訳には…」
『おい』
「なんだ!今は隊長と話し「このバカ、さっさと黙れ!」」
隊長が女騎士に拳骨を落とし、無理矢理頭を下げさせる。
どうでもいいが、イリスと仲良くなりそうな性格だな。
この女騎士。
二人をオークキングの下にでも送りつけるか?
「何か、物凄く嫌な予感が…」
「ようやく気付いたか、目の前にいる奴は3人を瞬く間に殺した化物だぞ?
大人しくしとくのが一番だ」
「いえ、そうではなく……はっ!貴様、よくも皆を!」
『先に言った筈だぞ?出てこい、と』
「だが!!」
『貴様らが少し賢ければ、被害は一人で済んだものを。
隊長…だったか?
貴様が判断を遅らせたせいで、無駄に仲間を死なせる結果となったのだ』
「隊長は悪くない!与えれた命に従っただけで、悪いのは貴様だろう!
貴様が皆を殺さなければ済んだ話なのだ!」
『貴様らが此方を監視しなければ何も起きなかった。
投降する機会も与えた。
それを蹴ったのは貴様らだ。
相手の許可無く、相手の事を探れば…何が起きても自己責任だろ?』
「しかし…、納得出来ん!
目の前で仲間を殺され、敵の情けで生きるなど騎士の名折れ!」
「おい馬鹿やめろ!」
『何が言いたい?』
「生き恥を晒すくらいなら、討ち死にしてくれる!」
俺に走り寄る女騎士を隊長が抑え込む。
「アンタが誰か知らんが、コイツは見逃してやってくれ!
アンタがくれた投降の機会を蹴ったのは俺だ、コイツに非は無い!」
『…確かに、一理有るな』
「本当か!?ありがたい…!
お前は許してもらったんだから、大人しくしてろ!」
隊長が女騎士を絞め落とす。
「ったく、言われなくても大人しくしてくれよ…」
『…で、此奴は貴様にとっての何だ?
命懸けで庇う様な価値が有るとは思えんが』
「…俺にとっちゃ娘みたいなもん、です」
『堅苦しい言葉は不要だ。先程まで、普通に話していただろう』
「そりゃ必死だったから…」
『何なら、そこで転がってる奴から心臓でも取り出そうか?』
「分かった!分かったから、それは勘弁してくれ!」
…良い反応だな。
偶然だが、良い玩具が手に入った。
コイツは「姫」と「女騎士」さえ無事なら此方へ来るだろう。
これからが楽しみだ。




