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決着……

魔王は己を鼓舞するかのように、大広間に響き渡る雄叫びを上げた。

やはり、覇王と戦うのは恐ろしいのだろう。

それでも、アイリスさん(守りたい人)がいる魔王に後退は許されない。


魔王は必殺の意思を込めた袈裟斬りを繰り出す!

名前は知らないが、かなりレア度の高い剣なのだろう。

刃の輝きが其処らのログボで貰える剣とは違う。

魔王ってやっぱ儲かるのかな…ガチャ引き放題?


俺がアホな想像をしている間に袈裟斬りが覇王に当たる。

まあ攻撃させてやると言っていたし、これは予想通りだ。

魔王の袈裟斬りの軌道をなぞるように、覇王の胴体に紅い線が走る。

一拍遅れて鮮血が飛び散る。


ん?切り裂かれる筈のマントがいつの間にか消えている。

マントの下には、素肌しか無かった。

俺に言える事は、今の覇王は女だったらしいという事だけである。

凹凸は少ないが、見事なバランスである。

例えるならば、蕾か……。

眼福眼福。


因みに、男と女どちらにでもなれるとの事だが…俺は紳士だから何処とは言わんが、サイズ変更は出来るのだろうか?


『出来るぞ』


質問に答えてくれてありがとう!

いつかお願いします!


「いくら僕が相手だとしても、もう少し緊張感をさ…ね?

一応、僕はこの世界で最強の一人なんだよ?」


『この世界で最強クラス?

そんな括り、俺が来た時点で何の意味も無いだろうに』


てか魔王!相手が強かろうが、会心の一撃叩き込んでも「何かしたか?」とばかりにニヤニヤしていてようが、斬った筈の所が瞬く間に無傷になろうが、ヒロインに攻撃するとは許し難い!

万死に値するぞ!

俺は弱いから参戦出来ないけどな!


「覇王に性別は無いんだから、ヒロインとは言えなくない?」


女体はイコールで、問答無用でヒロインなんだよ!

(ただし性格と姿が一定のレベル以下の者を除く)


『女の身体であろうと、俺の正体を知っている者に女扱いされたのは久し振りだな。

後で胸でも触るか?』


え!マジで!?


「覇王……攻撃しても良いかな?」


『構わんと言った筈だが?』


くそ!魔王のせいで言質が取れなかった!

おのれ……!


仕切り直しとばかりに、魔王が体重を乗せた突きを放つ。

身体のバネも最大限に利用した、文字通り全力の一撃が覇王の腹に吸い込まれていき……

覇王の身体を貫通し、背中から飛び出た。


魔王は油断せず、傷口を抉るように剣を引き抜いた。

そして逆袈裟を繰り出す。

その勢いを殺さずに遠心力を上乗せした右薙ぎ、左切り上げ、唐竹を繰り出し、止めとばかりに

鳩尾、腎臓、そして心臓に三段突きを放った。


俺、リョナ系は苦手なんだが……。


ここまでしても、魔王は一切油断が無い。

剣を引き抜き、覇王から距離を取った。


俺は魔王が警戒している以上、覇王は平然と立ち続けると信じたが……俺の期待は裏切られた。


剣を引き抜かれた覇王は、糸が切れたように倒れ伏した。


「覇王!!」


俺は我を忘れ、痛々しい傷口を晒す覇王のもとへと駆け寄った。

必死に呼び掛けるも、覇王の身体は冷たくなっていく…。


俺は、覇王の自分に正直な所に惹かれていた。

最初は少し不気味に感じたけど、すぐに良いやつだと分かった。

天災のような規格外の力に、素の姿を相手に見せられる心の強さに憧れた。

過去の出来事を淡々と話す、どこか悲しげな声色に心を締め付けられた。


会ったばかりだが、覇王はいつも楽しそうだった。


そんな、そんな覇王が今、俺の腕の中で息絶えようとしている。

俺はそんな現実を受け入れる事など出来ないと、必死に呼び掛ける。


しかし、現実は何処までも非情だった。

僅かに残っていた温もりが失われていく。

俺は何か出来ないか、必死に無い知恵を振り絞った。


だが、俺の脳は何の案も出さない。

俺は無力感に苛まれながらも、冷たくなった覇王の身体を抱きしめ続けた。


魔王はまだ此方に剣を向けている。

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