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最後の物語  作者: 無月 華旅
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第四章~旅~下

 二か月以上、投稿があいてしまっていました。お待たせしました!

 アルとクルムとティーの三人は港町ポルトに来ていた。そこで、ティーの仕事について聞く内にクリスタル認定試験の話が持ち上がる。図書館長が怪しいと思った二人は、館長に会えるかもしれないという、その試験に参加したいが……。



     ✡



 ティーの話を聞きながら、もちろん口も動かしながらアルとクルムは同じことを考えていた。

 クリスタルの生成。それは並大抵の人が出来るものじゃないし、だからクリスタルは希少価値が高く高価なものなのだろう。ティー自身もそう言っている。クリスタルの生成術を使えるのは二人の知る限りではリスタしかいない。十中八九、その図書館司書長がリスタを利用してクリスタルを無理矢理、生成させているのだろう。仮に司書長が犯人ではなく、クリスタルの生成術を知っているなら、それはそれでリスタの手掛かりになるかもしれない。なにはともあれ、その怪しい司書長に会ってみる必要がある。

 正攻法で行っても良いのだけれど……と考えているところに認定試験の話。これはもう乗るしかないだろう。

 はぁーっと隣から大きなため息が聞こえていきた。もちろん隣に座っているのはティーだ。

「出たいって言ってもいろいろ条件があるみたいだし、それにお前たちは当面は俺についてくるんじゃなかったのかよ?」

「……あ」

 そう、アルはティーに借りを作っている。その借りを返すまではティーと一緒にいる約束だった。クルムは色んな町を回るティーについて行けばリスタの情報が得られると思ったからだ。

「じゃあ……わ、わたしだけティーについて行くよ」

 クルムがティーと一緒にいる理由がなくなったのだ。アルにしてみれば当然の結論だが、

「だめ」

 クルムに却下された。アルにもクルムの考えは分かっている。クルムは人間、ティーでさえ信用してはいけないと思っている。その気持ちを分かっているから、アルも自分の結論を押し通すことが出来ない。

「まぁー俺は、お前らを俺の元に引き止めるつもりはないが……」

 ティーも引き止めるつもりはないみたいだが、一緒にいて欲しいことは目に見えている。二人がティーと共にいることを決意した時の笑顔がまだ脳裏に焼き付いていた。ティーも自分の意見は言わないようだ。

 手持無沙汰になってしまって、なんとなく居心地を悪くなった二人は運ばれてきた料理に手をつけた。森では火を使った料理なんて食べたことがなかった。そもそも火という、ほぼ人工的なものを使うことがなかったのだ。

(どうしようかなぁー)

 アルとティーが自分の主張と相手への思いやりに悩んでいる。

「アル」

 さっきまで、黙って食事をしていたクルムがやっと口を開いた。

「しけん、でる。しゃっきん」

「あ……」

 クルムのその言葉だけで、理解できるほうがおかしい、とティーは思ったが何も言わない。

「そっか」

 アルはやけに納得した様子だった。

「ゆうせん」

「うん」

 クルムの諭すような言葉にアルは元気に頷いている。微笑ましい光景だが、結局のところどうなったのだろう。ティーは、我慢できなくなって思い切って聞いてみた。

「で、どうすることにしたんだ?」

「え?」

 その質問が意外だったのか、アルはティーを見つめ返している。

「いや、さっきの会話からだと何が何だか……」

「あぁ、そうだよね」

 なるほど、と口の中で呟いた声がティーには聞こえた気がした。

「クルムが言うにはね」

 そう前置きをしてから、アルは二人の結論を述べた。

「認定試験に出るには、お金がかかるでしょ? だから余計にティーに借金しちゃうことになるから、それはよくないよねって」

「な、なるほど」

 さっきの会話に、それだけの情報量が含まれているとは、とうてい思えないが、今はそれは気にしないでおこう。

「だから優先順位を考えてたの。わたし達が一番にしたいことは、やっぱりリスタを探すことだから、そのためにはティーについていくのが一番だし、お金を返すのが第一の目標だから」

 わたしにとってはね。とアルは付け加えた。クルムの目的は、いろんなところを見て回ることだから、アルとは考えを異にしている。ティーはさっきも言った通りお金には困っていない。でも、そういった見解に至ってくれたことに、少なからずほっとしていた。

「そ、そうか……」

 嬉しさを隠しながら、それだけ言うのがティーには精一杯だった。わざとらしい咳払いを挟んでから、ティーは徐に立ち上がった。

「それじゃ、腹も膨れたことだし、行くか!」

「うん」

 元気なアルの隣でクルムも小さく頷いて、三人は店を出た。



     ✡



 ガタゴトと、馬車の心地よい揺れに身を任せながら街道を進んでいく。しばらく雑談をしていて、気が付いたことがある。港町ポルトを出てから誰かの視線を感じる。

「ねぇ、ティー?」

「ん?」

「……なんでもない」

 ティーも気が付いている様子なのは分かっているけれど、あえて口に出さないのが鉄則のようだ、とアルも理解した。馬車を操るティーの隣に座っているアルからは後ろの様子は確認できないけれど、荷台の中にいるクルムはじぃっと後方を見ていた。ぼーっとしているように見えなくもないけれど、ちゃんと後ろを警戒しているのが分かった。

「何が、目的かなっと……」

 ティーが雑談をするときみたいに、何気なく核心に触れた。それと同時に少し馬車のスピードを速める。

「……クリスタルかな?」

「それも、あるな」

「本かな」

「それも、あるだろうな。ははっ、心当たりが多すぎてどれのことやら」

 なんとなく楽しそうなティーに、アルもついつい口元が緩んでしまった。

 これからの旅。退屈することがなさそうだ。


 こんにちは、初めまして。無月華旅です。前回の投稿から二か月以上あいてしまったことに驚きを隠せません……。待っていてもらった方には、本当に申し訳ないと思ってます。安定して、投稿できたらそれが一番いいのだと思うのですが。

 今回の話で結局、三人での旅が始まったわけですが、前途多難な予感がしますね。小説を書くとき、ある程度の構想はあるのですが、フィーリングで書いちゃうこともあるので、前回の「試験にでたい」発言には、自分でもびっくりしてます。この後の展開どうしようと悩んでいたらズルズルと……。のんびりと書いているので、そのあたりは長い目で見ていただけたら幸いです。

 最後になりましたが、ここまで読んでくださってありがとうございます!また次話で会えますことを。

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