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絶望転生令嬢 血パンの味と本の虫  作者: 和琴
呪いと絶望のソースを、喪失の物語に彩らせて。
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19/19

その19:できないをする。…決別を

――黒騎士…ね


良い選択だわ。


…やはり、呪いの追跡を断ち切るには人生を変えるのが一番。


名前を変えてダメ。

学生から魔法少女とかいう意味不明な役割にしてもダメ。

家を捨てても、それは術者の想定内。

地域を変えてもダメ。

冒険者に変わってもダメ。

服装が制服から鎧になってもダメ。


最早身体的特徴とかが条件の一つでもおかしくない。


ならもう…もう一度変えるしかないからね。

私をリーダーとした傭兵黒騎士として鍛え直す。

あだ名も一度変えた、これは自主的に変えてくれたわね。

魔法も使わせない。道具と剣で戦わせる。

口調も変える。


それで、都市の対呪術師を頼ってもし…

呪いが飛んできている様なら。


圧倒的に非対称、相手の方が有利…だって条件を替え放題なんだもの。

自爆するまで…待つしかない。

それでもこの子にはそんなこと言う必要はないわ。

才能の塊…ぜひとも育てて、恩返ししてほしいものね。


それに…私も…呪いを掛けられた経験があるから。

そうじゃなきゃこんなに脚出さないわよ…寒。


だから…これを伝えた。

覚悟の準備をしておいてもらうために。


「あなたが…その"それであった理由”を

いったんすべて捨てて。

例えば、軍閥貴族としての矜持、友達の心配

好きだった人への思い。全部ね。

安全が確認できるまで、全部。

…叶う願いも叶わなくなるから。」


返事は帰ってこなかったが、宿に入った。


「あなたの姿を見せて。

身体的な特徴を見たい。」


そして、私の部下の黒騎士に向き直った。


――それを聞いた時…


私はそれだけはできないと思った。

そんなことをしたら、もう二度と。

繋がっていると思いたかったのに

私の方からその感覚を忘れてしまう。


"今言った、繋がってると思いたいって。

はーあ。そう言う事なんだね。

それも呪いの糸になるんだ、残酷だねア…サコ

キーワードから逃れるだけじゃない。

一時的に全てを捨てないといけないんだ。”


草田…さん。


”例えば、なろうっていう検索サイトみたいなところのタグで言うなら…"

異世界転生/シリアス

女主人公/西洋

学園/令嬢

チート/魔法

冒険/青春

身分差/悲恋

サスペンス/監禁

魔法/少女


"みたいなタグが付いてる状況だと思うんだよね。

それで検索を絞り込んで、かつアントワーヌの

体の特徴や勉強内容に当てはまれば、数人以下になる。

そうしたら…呪いが有効になるみたいな。

そんな感じに聞こえた。”


つまり…その"タグ"の中でお父さんが見れそうなものは全部…


"消さないと死ぬって事だね。最悪…!だね…"


「あなたの体の特徴を見たいの。」


「もう少し、お話を整理させてください。」


「分かったわ。少し待つ。」


隊長、もう少し考えます。


異世界転生←お父さんには明かしてないよね。

シリアス←危険!

女主人公←変えられない。

西洋 ←ってなに?

学園←危険…フィエル君とネルさんへの執着も

令嬢←軍閥貴族としての使命も。

チート←関係ないよね。

魔法 ←今まで学んできた技術も。

冒険←これは、がむしゃらにあてはめられてもおかしくない。

青春←フィエル君とのことだ…

身分差←フィエル君

悲恋 ←フィエル君

サスペンス←これは…多分ちょっと違うよね。 状況だから。

監禁←学園生活で得たもの。先生との関係も。

魔法/少女←追放されてからの私の姿も。


だから、黒騎士になるのが必要なんだ…


そう納得して鎧や兜、サングラスを外し始めた。


数分後…


私は、一糸まとわぬ姿で

ヤハリ…ン隊長の目の前にいた。


宿の部屋の中、誰にも見られることはない。


「髪を切りましょう。」


「え?」


「髪を剣で、切りなさい。」


絶望、その二文字がまた頭をよぎった。


――絶句した黒騎士に替わって。


「何で髪を切るのか聞かせてもらっても良いですか。」

私、現代の草田麻子が主導権を握る。


「それはね…その髪が特徴的過ぎるからよ。

白が混じった独特の金髪。

これだけで世界に一つだけ咲いた特徴かもしれない。

もし、そうやって呪いが指定されていたら…」


何時まで経っても、逃げれない…と。


「逃げても完全に呪いを断ち切れないと

推測で今の状況を捉えられて情報が洩れる。

呪いが良く効くようになればそう言う状況って事だから。」


呪い、ってそんなことまで。


「物理的に捜索される可能性すらある。

その髪は…女という自認や、恋心の未練を断ち切り

今までの生活を一気に捨てるのに

間違いなく好都合な特徴なの。」


っぐ…これは…


”正論…”


「呪いってそんなに人を追えるの?

GATI!?女の命だよ髪は。」


分かっていて反論をしてみた。

私も気持ちの整理が…徹底的に反論してほしくて。


「追えるのよ。私もそうだったから。」


…え?


ヤハリン隊長が外した帽子の下は…髪が…

短く剃り上げられていた。


「元々好きだった奴がいるんだけどさ、

呪われてしまって別れたのよ。

私よりもっと、そいつを好きな奴が居たんだろうね。

完敗さ…中途半端に姿かたちを変え続けた私は…

これを切らざるを得なくなった。分かる?」


「そ、そんな」

声がうまく出せなかった。

そんな、バカなことが。


「今切れば、将来伸ばせる。

これ以上バレる前に、早く。」


私は正座した。

これ以上反論しても意味がない。


――変わるよ。クサダが選択して。


私はヤハリン隊長が正しいと思う。


「きり…ます。」


震える声を絞り出した。


震える手で剣を手に、髪をばさりと…切る前に。


「フィエル、ネル。」

ヤハリン隊長に告げる。


「私が女の子であることを忘れても

覚えてたら、教えて。

その二人と会いたいこと。」

頷いたのを見て再び言葉を続けた。


「ヴァームホーム」


手を握りしめて話す。


「その時が来るまで、忘れます。

お父様、お母様…ごめんなさい。」


深く頭を下げて。


「切ります…髪…」

ヤハリン隊長が背中側から髪を上に引っ張った。

私は両手で―背中側から、思いっきり前の方に剣を動かした。


ヤハリン隊長が魔法で片側だけ切れ味を良くした剣は頭の上を通り過ぎて行った。


儀式が終わった後は、呆然とする私に対して

ヤハリン隊長が細かく、草田さん曰く坊主になるまで切った。

…坊主黒騎士アサコ。


それが私のすべて。

全て…忘れる。

忘れてしまう、託した未来の為に。


ヤハリン隊長、草田さん、未来は…お願い。


「私は坊主黒騎士アサコになった!!!」

図太い神経で、大声で叫んだ。


――そうね、この切った金髪の名前は…

"アントワーヌ"

髪の人形にしましょう。


呪い移しの人形に。


これから見た特徴的な石は

アントワーヌX番という名前にしましょう。


ヤハリン傭兵隊長として部下にできる限りを。


私が失敗した過去、徹底的に変えてやるわ。


お前らが私たちを辛い目に遭っていると思うなら

とことんふざけてやる。


追ってみろよ、さぁ…


「今日は寝ましょう、命令です。黒騎士アサコ。」


「了解」


ベッドに入り、目を閉じる。

それだけでいい。今日は…


★境界からの独り言★

結構奇抜で重い作品なので、少しだけ今後の方針を開示します。

未だに少し考え中な部分がありますが…おおむねこんな感じです。


1.決定的な喪失をいくつか含むビターエンドもの。(現状のメインルート)

  →現状のままだと実は…

2.ハッピーエンドもの(現状の伏線や文脈に沿ってアントワーヌが最高に幸せになるもの)

  →あることで分岐可能。

3.ヴァームホームの災厄が思ったより遠い物。(考えてなかったけど、サブルート)

  →1と2が両方起こった場合。

   もしくはある人物があることを連想できれば…

4.そのほか…ほぼ絶望ルートとか?

  →1の派生ルート


現状どのルートも紙一重で変わる。しかも考えれば考えるほど紙一重に。


…凄く整合性のあるシナリオなので…

もしメインルートがどうしてもいやだって人がいたら教えてくださいね。

※そうじゃなくとも変わるかも…かなり悩ましい。


そうじゃなければ、これからもお楽しみに。


…ゲームってズルい、ほんのわずかな掛け違いを

全部実装できるんだもの。

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