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絶望転生令嬢 血パンの味と本の虫  作者: 和琴
冒険者としての歩み
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16/20

その16:冒険者としての初のダンジョン。そして喪失の序章

――そして、魔法少女クサダは水竜の指し示すまま

山脈を超え、そして村にたどり着いた。


白銀の雪景色、そこにたたずむ木の家の群れに圧倒される。

そしてそんな中でも石をパンとして齧りながら、ギルドを探すのであった。


ひときわ大きい、二つの看板が立った居酒屋の前。


ギルドだ…ギルドだ。

心が騒めく。


剣をしまい、村人から頭を下げて借りた袋にドレスを入れて

その費用の返済のためにギルドの中に足を踏み入れる。


その瞬間、冒険者たちの視線がこちらに向いた。


茶色い髪と髭、緑色のインナーに鎧を付けた男性が

ビールの泡を付けながら見ていたり

頭より大きく歪んだ、虫の頭を杖に付けた

美脚の赤服、そして帽子の女性が舌なめずり。


ギルドの少女は何故か両手を合わせて憧れの目で見てくるし。

皮膚に傷のついた、威圧感のある裸鎧の男性は

ニヤリと笑った。


「黒騎士様みたい。

依頼を受けに来られたのですか!?」


私に少女が駆け寄ってくる。


「魔法…」


「??」

私の高い声を聞いて不思議に思ったのだろう。


ちょっと魔法少女、ここでその名乗りはまずい。

うう、抑えきれない。

もう抑えきれない、破壊の力が…!!


「魔法少女クサダ!ただいま見参!!」


名乗って、しまった…!!!

恥の概念、捨ててしまったぁ…!!!!

うちの魔法少女が、名乗ってしまった…!!


「へ?へぇえぇぇえぇぇ!!!」


少女が3歩引いて、よりによって

裸鎧のおじさんに支えられる。


緑色のインナーを着た男は、ビールを一口飲み、

自身の顔にかけて洗い、そして再びこちらを見た。


美脚の女は、肘をついてこちらを見ていた。


そんな事をお構いなしに、うちの魔法少女は突き進む。


「冒険者登録お願いします。」


「その装備…何処で?」

当たり前の反応が飛んできた。


「私が水竜と戦って、受け取ったものです。」


「じゃあ実力を見せてもらおうか。」

ビールを飲んでいた緑インナーのおじさんが

肩を持ってくる。


「おこちゃまの遊びじゃなきゃ、仲間に入れてやるぜ

GATIだGATI。

でもお子様の遊びなら、アブねぇから装備だけ頂く。」


「同じですよね?」

おい、ちょっと待て魔法少女。

装備でも賭けるつもりか。


多分このお兄さんもシンクロしただろう。

怪訝な顔だ。


「ビールを飲んでますけど、それはおこちゃまの遊びと

同じじゃないですか?」

そっち…!てっきりああいう方面かと…


「じゃあ、俺たちは仲間になれないのか?」


「もしよろしければ、最初に受けるべき依頼を教えて頂けますでしょうか?」


魔法少女は急におしとやかになって、語り掛けたので

お兄さんが驚いてしまい、腰を抜かした。


「お前、魔法タイプか物理タイプか。」

裸の鎧男が、少女の方を持ちながら声を掛けてきた。


私は魂の間で完全に魔法少女に押さえつけられている。

遊びたい年頃の子供は怖い。


「試してみますか?」

幾何学のバリアと、その上の炎の弾を見せると

男はニヤリと笑った。


「生半可な魔法なんか、効かねぇぜ。」

と。


そしてお互いの拳を合わせる。


「これで壊れねぇなら、そこそこ頑丈だ…な!!」


ドォン!!!


拳と幾何学バリアがぶつかる。

一瞬歪んだ様にも見えたが、拳は互角に競り合った。

というか…魔法と身体強化の靴があるとはいえ

良く腕もつね、うちの魔法少女。


「へぇ…なあ、黒騎士様だったら良かったのにな。

メンーニ。」


「うん…」

少女の夢を破壊してしまったみたいで、ため息を漏らしたい。


「一緒に魔法少女になればいいよ。

楽しいよ。」


うちの魔法少女は、人づきあいが少ない。

そんなタイトルが思い浮ぶようなkyに見えてしまった。


「魔法少女?」

メンーニと呼ばれた少女が私に問いかけてきた。


”お願い”


いきなりのバトンタッチ、しょうがないなぁ…

「世界で一人しか、魔法を使える少女がいないと思い込んで

特別な振りごっこをすること!

夢見る経験ができて楽しいけど、もうそんな年じゃないでしょ?」


また空気が凍り付く。


「なんだこいつ…」

裸の鎧男が信じられないという目で私を見てきて、しまった!!

OL過ぎた!!!!!


「面白そう!一緒に遊ぼう。」


――魔法少女 バトンタッチ。


「うん、楽しみ。友達と遊ぶの初めてだから。」


「初めてなの?」


「うん、6歳からずっと魔法の勉強をしてたから。」


確かにねぇ…


「じゃあ、ちょっと外に行こう!」


「わ、私、ギルド登録に…」


「後でいいから。ね。おじさん、準備してて!」


「お、おう。」


ギルドの人が棒立ちで見守る中、黄色い服の少女に引っ張られて

私たちはギルドの外に出た。


「魔法球、えい!」

少女の投げて来た球に合わせ、私の過去の話から

やられるポーズをとる魔法少女。


「アーレー…」

それは違う。


回転しながら雪に倒れると、ぴょんぴょんする少女。

まあ、いいか。


暫く遊ぶのを眺めていると

ギルドのおじさんが手を振っているのが見えた。

長袖に長ズボン。

帽子という一般的な寒い所の服装っぽい。


「ねぇ。」

あのへんな美脚のお姉さんだ。

雪国なのに、脚が見えてる。

マジでどうなってんの、ファッションへのこだわり。


「6歳から魔術訓練って今何歳よ。」


「11歳…多分。

もう檻から離れて暫く経つから。」


あそこは檻だった、それが私と魔法少女の結論だ。


「さっき魔法使ってたわよね、小道具に頼らず。」

確かに?


「見習いとしては良いんじゃない。私に付いてこない??」


魔術師として、成りあがる手もあり?


「そのつもりはありません。

いずれヴァームホームの災厄を止めるつもりなので、

年齢だけ見られても、命を散らすのはその時ですから。」


魔法少女のその言葉に驚愕した、フィエルに会いたいから成りあがるって言ってたのに。

うちの魔法少女、どういう心変わりなの。


「アンタ、軍閥貴族の出ね。」

鋭い、このお姉さん。


「もう家名を失っているので、悪しからず。」

私が魔法少女から主導権を奪い、伝えだけはしておいた。

権力や資金があるって勘違いされたら堪らないからね。


「そういう事ね、世間知らずのお嬢ちゃんが

装備だけ持って逃げてきた。

魔法の知識は本物で冒険者としてはこれから…」


妙に否定しずらい、この人の言葉。


「魔法少女です!」


うちの魔法少女以外には。


――それは…


私、明日も分からない時は最後にフィエル君に会いたいと思った。

嘘じゃない、ほんとの気持ち。

でも元々、諦めてたんだそんな夢物語。

窓から飛び出した、あの時に。


ご飯があって、人がいる。

そう思ったら突然、諦めがついた。


だから、このメンーニちゃん達を守るために

世界を守る。

それが今の私の使命。

最優先事項なんだ。


だからこの袋代だけ返したら鍛錬を積みたい。


その為に冒険者としての経験を積むかもしれないけど

それは災厄への備えの為。


”分かった、手伝うよ。魔法少女”


なんて言いつつ、フィエル君に会えたらいいなと思ってもしまう。

もし災厄が数十年先なら…って。


だから今は…どうすればいいのか定まらなかった。

でもマナ玉を貰った以上…もし災厄が起こればそこに向かうことを

心のどこかで確信していた。


――そして、冒険者登録を済ませた。


「カジヒエル村 草田麻子」


魔法少女クサダは名前として認められなかった。

これで正式に私は草田麻子になった。

本物の草田麻子さんの元で。


「よろしくね、私はヤハリ―」

あの女の人と握手を交わす。


対等な冒険者として、ダンジョンを探索することになった。

「俺も手伝うぜ。

魔法使いだけじゃいざという時もあるだろ?

俺もGATIだって見せてやらねぇとな。」


「分かりました、よろしくお願いします。

GATIさん。」


「おう、俺はGATIだ。GATIって呼べぇー!」


”顔が赤い、こういうのを酔っているっていうんだよ。”

お父さん以外もそうなるんだね草田さん。


「本当はビエルデがいいけど、町の護衛だからしょうがないわ。

だから今回は、事前に狭そうだった所を探すわ。」


あの裸鎧の人はビエルデっていうんだ。

これで3人パーティーだ。


”いちおう、幽霊もいまーす”


草田さん合わせて4人、幽霊でRPGの仲間欄は埋まってしまっていた。

これが透明キャラなんだね。


急峻な斜面を避けながら、山を下り、青い炎の照らされた

白い石の洞窟の入り口が見えてくる。


私には、拳の幾何学バリア、と剣がある。

ヤハリ―さんの騎士(ナイト)として頑張ろう。


そして、

”ズルズル、ズルズル”

あの杖からかすかに音がした。


「敵の気配アリ、付近には居ない。

声を殺していくわよ。」


魔法少女として叫べない気がする。


"一人になったら、逆に技名を叫んで居場所を伝えよう。"


そうして私たちは、共同でダンジョンに潜った。


――初の共同ダンジョン探索は…

非常に順調だった。


闇を消さない青い炎が灯ったダンジョンは

何処にモンスターが居るか分からず厄介…

かと思いきや、ヤハリ―さんの探索法がばっちりはまって

むしろこちらから魔法で魔物を狙撃出来た。


骸骨の魔物が、煙を上げて動かなくなった。


「嬢ちゃんの雷のお陰で、俺に居場所がねぇや。」


「じゃここで待ってるから、あの宝箱を開けて。」


「GATIかよ…」


ふふっ、共同探査ってこんな感じなんだ。


「宝箱の中身、残して後から回収に来たら分かるからね。」


「はいはいっと。」


何ならと言わんばかりに宝箱ごともつGATIさん。

こちらに宝箱を渡したうえで、蓋の上を指差した。


「ほら、ここの装飾、銀だぜ…売れるはははは…

元々容器としても需要あんだ。

魔物が作ってたり、数十年以上残ってたりする頑丈なハコだ。」


確かに…中身よりよっぽど宝かも。


「ただ、宝箱は重い。

これなら、俺GATIで必要だろ?」


"必要だねGATIで。

実際そういうゲームある。忘れてたけど。"


そうなんだ、日本って想像力の宝庫。


"まあ、そのゲームは世界からだけどね。

アメリカとかについても話したと思うけど、

日本だけじゃなくて沢山の国があるのさ。"


私も、この世界のいろんな国に行きたい。


…ここは悪魔世界の穴と周辺地帯であるヴァームホームの入り口の

ユビル国。


他にも隣接国はあるけれど歴史的に…事案の時には全世界の支援を受ける

前線基地。


その歪みを一点に引き受けるのが軍閥貴族

妹たちの戦いも全部私が…


”おーい、動きそうだぞ”


現実に戻って、パーティーと共に進む。


★後書き★


すみません、連休が終わるので投稿頻度が落ちます。

多分1日~2日に1話ぐらいです。


仕事も忙しくなるので…良ければブックマークで追っていただけると

良いかもしれません。


ほか作品同様、最後まで書ききろうと思います。

ご意見や絶望のお声がありましたら、ぜひ感想をお聞かせくださいね。

なるべく…参考にします。

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