あと1日_
君のことをもっと知りたい……。
7月18日
ガチャ
「「「お邪魔しまーす!」」」
家の扉を開けると3人が元気よく挨拶してくれる。今日は休日だから、学校で部活はできない。でも、どうしても最後みんなで集まって部活をしたかった僕は…じゃあ僕の家でやる?と提案した。みんなを家の中に入れ、自分の部屋へと案内する。
「外暑かったでしょ?飲み物持ってくるから、ちょっと待ってて。」
そう言ってジュースを取りに冷蔵庫まで向かう。
「はぁ………」
「…朝から、なんのため息ですか?」
隣から呆れたツクヨの声が聞こえる。確かに朝からずっとこんな感じだ。でも、僕がこうなるのもおかしなことじゃない………。だって_
「だって、…家に友達を呼ぶことが初めてなんだよー」
そう、今はただ緊張をしている…。なんであの時僕の家でやる?なんて言っちゃんたんだろうと昨日の自分に当たる…
「友達が自分の家に遊びにきた、となったら何をしたら正解なのか…わからない……」
気づいたらツクヨに弱音を吐いていた。小、中とクラスに馴染めず、友達と言えるような子がいなかったし、そもそも一緒に遊んだり喋ったりする子すらいなかった。そう今の僕は、家に友達を入れるという人生初の体験の最中なのである……。
「…いつも通りで大丈夫なのではないでしょうか?」
…だけれど、そうツクヨは優しく言ってくれている。
「いつもあの子達とのお喋りをしている水輝さんはとても楽しそうに見えます。今日も今まで通りで大丈夫なのでは?…というか、なんでそんなに緊張しているんですか?いつも喋っている子たちですよ?ほら、待たせています。早く部屋に戻りましょう。」
そう言って僕の先を行く。確かに、僕は何に緊張しているんだろう…。今からは、僕が大好きな時間を目一杯楽しむだけだ……。自分勝手だけど、これで最後だと思うと大切にしないとね。そう思い…僕は、自分の部屋へと向かった。
「今日は、みんなで改めてひとつの作品を作るんだよね?」
「わぁー!いつもの部活は稽古だけど今日はちょっと違うんだね!!楽しそう!!!」
「あぁ、“俺たちと言えば”と言えるような作品を作りたくてな。少し案を考えてきたんだが、まだまだ物足りない。だから、みんなで脚本を完成させていこうじゃないか!!今回は全員役をやってもらう!!」
今日は部活を本格的にやるのではなく少し遊び感覚を入れる。この部活内容は翼がずっとやりたいと言っていた。”僕たちと言えば“か……。ファンタジー系かな?それとも青春?そう思い、翼が考えてきてもらった原案を見る……。__今回の話は、ショーが大好きな4人の話。ショーの関係で4人は仲良くなり一緒にショーをするようになる。しかし、意見が食い違ったり本番の失敗などでショーを理由に離れ離れになってしまう。しかしその数年後、4人は再びショーで再開、仲直りをし共に歩んでいくという物語だ。
「……っ!」
最初の感想はびっくりだった。なんというか…“僕たちと言えば”と言うとギャグ一直線だと思っていたから……。……これはやりがいがありそうだ。時間は約45分くらいの台本だから、一場面ごととても重要だ。
「では、配役を発表するぞ。えーまずは、主役にあたるエース役は、俺がやる!!」
自分の胸をとんと叩き自信ありげに言う。
「そして、そのエースのライバル関係にあたるゼロ役を、みおにお願いする!!」
「うん。分かった。」
「今回のショーの運営もろもろの仕事を行うコハク役を、花凛にお願いする!!」
「はーい!!頑張りまーす!」
「では、最後。ショーの監督と演出を専門とするアスト役を、水輝にお願いする!!今回の配役は以上だ。これを軸としみんなで考えていきたい!」
なるほど…。配役もみんなの性格や個性を合わせてくれている。実際に役者を磨いている翼とみお。役者もやるが舞台の裏や運営、経営を学んでいる花凛。そして演出家の僕だ。そうなると、今回はみんな演じやすそうだ。
「じゃあ、さっそく…このシーンなんだけど……」
台本に手をつけ、時間はあっという間に過ぎていった_
『私は楽しかったよ?、、だから、またやろうよ、!みんなで、、』
あれから台本作りをやり、形になっていった。そして今は、本番中だ。本番と言っても僕の部屋だし、お客さんもいない。簡単に言えば通しだ。今は、ショーが失敗に終わってしまい、コハクが必死に喧嘩を止めようとしているシーンだ。
『こんなの………楽しいわけがないだろう……』
『エース!!なんで…そんな……』
『なんで!?ショーが失敗に終わって……今日見に来てくれた観客も笑顔が消えて………ショーは全てが勝負だ。…そのために……俺たちは成功し続けなければならないんだ…………』
空気が重い。そして辛さがこちらにも伝わってくる。さすが翼の演技はとても上手だ。そしてシーンはどんどんと進みラストまでくる。
『まだ、、ショーを続けていたんだな……。』
『まぁ、僕の生きる道はこれしかないからね。』
僕は台詞を言う。そして、翼は口を開けた。
『…あの時から、オレはずっと考えてきた……。…みんなに取り返しのつかない酷いことを言って、バラバラにさせてしまった……。嫌な思いだってしただろう…。だから、自分は、まだショーを続けてていいのかなと、考える日々で……。オレは………またこうやってみんなと会えて嬉しいんだ…!…まだショーを続けてくれている……!お前らは変わってないんだ、変わってしまったのは、オレだけなんだなと。…謝りたい……。本当に申し訳ない!』
翼の…エースのその顔には、辛いや悔しいなどの表情はなかった。ただまっすぐに言葉が飛んでくる。
『わたしは!!あんたが、姿を消してから前みたいに思いっきり楽しめなくなった!!小さい時に見たエースのショーが大好きになって、負けてられなくなって、ショーをやる気持ちに火がついて!!そしたらあんたがいなくなって……!わたしは悲しかったし、辛くもあった!!だけれど、今思い返したら、あの時あんたが言った言葉は間違ってないと思っている!だから、またみんなでショーをやりたい…!!!わたしたちで、自分と、見にきてくれたみんなの笑顔を守ろう……』
そんなゼロの言葉にエースは涙を流しながら笑った_
「うん。いいんじゃないかな?」
「とーっても楽しかった!!!翼くんとみおちゃんの演技かっこよかったよ〜!!私もつられて涙出ちゃった!」
「私も…翼が書くにはいい台本だなって改めて思ちゃった。」
「…ん?なんか一言多いな……。まぁ、いつかこの話を客がいる前でやってみたいな……。」
「…あ…………」
いつか……だけれど、僕はあと1日。こんなに楽しい時間があるとそんなこと忘れてしまいそうだった。……僕の大好きな時間。最後になるこの話はとても大切な…そんな作品になった__
ガタンゴトン
「まだ、ダメなのか?」
「うん。もう少しそのままね。」
今は夜の21時過ぎ。僕は翼と電車で移動中だ。あの後、通しで少しおかしいんじゃないかと感じたシーンや台詞を修正し解散となった。僕は翼に行きたい場所があると言って今この状態だ。そして、行き先は翼には言っておらず、彼には今、目を瞑ってもらっている。その時、電車が駅に止まり、前を見てはダメな翼の手を引き電車を降りる。そして、ほんの少しだけ歩き広い野原に出て翼の手を離す。
「…目、開けていいよ。」
僕がそう言うと、翼はそっと目を開けてから、周りの景色に驚き目を大きく開けた。そう、僕も連れてきた身だけれど、……あまりの絶景に見惚れてしまっている。__その景色は、ものすごく数の多い綺麗な星たちが、夜空で瞬く間に輝いていた……。今年の夏に行きたいところリストの最後、”星が綺麗に見える駅“だ。
「わぁ…………綺麗……」
つい溢れてしまった言葉のようだ。360度どこから見ても視界に星が入ってくる。小さい星でもこんなにもたくさんあればやけに眩しかった。
「ねぇ、少し話をしようよ……。」
彼がこっちを見る。そして僕の提案に小さくニコッと笑い翼は話し始めた。
「会った日のこと覚えているか?」
そう言って視線を星へ戻す。
「覚えているよ。入学式の日同じクラスになって、席が近くて……。君が話しかけにきてくれたよね。」
「あぁ、お前がなんだか不安そうにしていたからな…!少しでも話して不安という気持ちを紛らわしてやりたかったんだ。友達作りも兼ねてな!!」
そう言ってドヤついた顔を見せる。
「……確かに…不安だったかも…だけれど君が話しかけてくれてとても嬉しかったよ…!」
……君はよく見ている。周りの人のことや状況を。そして君がする行動はいつも正しいと僕は思ってしまう……。
「それで、お互い舞台好きってことがわかったんだよね。だから、君が同じ演劇部に入らないかー?って聞いてくれたんだよね。」
今思うとそこから僕の人生は楽しい方へ進んでいったんだ。彼が手を引いてくれたから…。
「…あのさ、気になってたんだけど、翼はいつ舞台が好きになったの?」
「ん?急な質問だなぁ……………」
と言い、なんだか翼が言いにくそうにする。もしかしたら、翼にとってはすごくダメなことを聞いてしまったのか…?
「い、言いにくかったらだいじょ……」
「……俺は、あまり外に出られなかったんだ。」
僕はその言葉にびっくりする………。
「生まれた時から体が弱くてな…。病弱だったんだ。」
その事情に僕は驚いたけれど、今から翼が話してくれることをちゃんと聞いて受け止めようと、そう思った。
「小さい頃はほとんど入院生活で、家に帰れても外にはあまり出られなかったんだ。そんな時、母さんが舞台のCDを病室に持ってきてくれて、その時にとてもハマってしまってな。舞台が好きになったのだ。」
そんなことがあったなんて……。…翼は星をまっすぐ見て話を続けた。
「そんな生活が小学生卒業まで続いて…少し体調が良くなってきて退院ができたんだ。でも、学校はもう少し先って言われてたから、家での生活になってたんだが…それから、1ヶ月が経った頃くらいに、今までにないほど体調を崩してしまって、……長期入院って言われてしまったんだ。…せっかく家に帰れてもう少しで学校にも通えるところまできていたのにな。そこからは、治療や検査で舞台を見る機会も減ってしまって………。」
…星をまっすぐ見ていた翼の目に瞬きが増える。
「…母さんには本当に感謝している。父親がいない中、母さん1人で入院と退院を繰り返す俺の面倒を見てくれて…。俺が病院にいた時も毎日見舞いに来てくれて、夜遅くまで働いて…。一時退院の時は、病院から許可をとってリアルの舞台に連れていってくれたり、高校でやっと学校が初めての俺に、心配しながらもなるべく自由にさせてくれた。本当に感謝しても仕切れないっ……。」
そう言って翼の目から涙が溢れ出す。星から顔を下ろし手で涙を拭う。僕も気づいたら泣いてしまっていた……。…初めて知った翼のこと。大好きな舞台にはそんな思い出があって……辛い時もあっただろうけれど、舞台が彼を救ってくれたんだ。なんだか……
「話してくれてありがとう。僕、翼のこと知れて嬉しい…。本当に……」
もう少しみんなと一緒にいたい。まだ生きたい、……そう思うのは僕の我儘だ。
「…じゃあ、俺も知りたい……。水輝はどうやって舞台が好きになったんだ…?」
僕のこと……?そう思って自分の過去を思い出しながら話した。
「僕が舞台を見始めたのは、中学の時かな…。その時は、周りの人と馴染めず、どんどんと学校という場が嫌になってきて…学校に行かなくなってしまったんだ。」
「……不登校っていうやつか?」
「……うん。そうだね。学校に行きたいと思っていた翼にはちょっと考えにくいことかもだけれど…。僕自身、人の接し方とかいわゆる友達の作り方?がよく分からなくて……。……それがだんだんと不安になってきてしまって、自分にも嫌気がさしてきて…そこから、学校に行かなくなってしまったんだ………。そこからは全然外に出なくなってしまって……僕にはお姉ちゃんがいるんだけれど、そんな時お姉ちゃんが少々強引にとあるファッション店に僕を連れて行ったんだ…。お姉ちゃんは服が大好きで、その影響もあってか僕もお姉ちゃんが作る服が大好きだったから、…もともと少し興味はあったんだ……。で、僕はそこの店に一目惚れというか、……とても気に入って…そこからその店に行くため少しずつ外に出るようになったんだ。自分の自信の持てる好きな格好をしていると外にも出やすくなって、メイク商品も取り扱っているお店だったから、同じように自分の自信を引き出すアイテムになったんだ。……その時にお世話になった店員さんに気に入られて……。…その店員さんと一緒に舞台を見に行ったのが僕と舞台の出会いかな……?」
今思えばあの時お姉ちゃんに着いて行かずあの店に行ってなかったら、…舞台を見に行っていなかったら僕はどうなっているだろうか。もう学校はやめただろうか…。だけれど、昔に比べて今は、友達と言える人がいて、何かに熱中することができて……今が、いい方向に進んでいることだけは分かる。僕も成長したな…と自分でも思う。
「…いい、お姉さんだな……!…その店、……また今度連れてってくれ……!!」
そう言って、翼は大きな涙を流した。僕の話なのに、まるで、自分ごとかのように……
「…だけれど、今の僕があるのは変われたのは、……翼のおかげだ。君が優しくて、温かくて、見るたびに眩しく見えて、共に大好きな舞台の話をしてくれる。だから……」
「それは、違うぞ。」
「え?…」
翼の言葉にびっくりして、僕は彼を見た…。彼の瞳は泣き腫らして、赤くなり潤んでいる。
「確かにお前が言うように、俺はお前がお前らしくあれるようにしたのかもしれない。だが、変わったのはお前自身だ。…水輝が変わろうと思って変われたのだ。だから、……俺は何にもしていない。」
そう言われて、僕の涙はまた頬を流れる。君は僕が1番欲しい言葉を言ってくれる。泣いているのに、…今とても温かくて幸せだ。鼻を啜り空を見れば、たくさんの星が絶えず輝いている。なんだかそれだけでも涙が出てきた……。
「…だって、俺もお前のおかげで変わったからな…!」
そう言って涙を流しながら翼は幸せそうに笑った……。星に負けないくらい彼は眩しく輝いていた。…死なせたくない…。今のこの時間は終わってほしくない。だからこそ、僕が助けないといけない。……僕の心は決まっている。
「……ありがとう!」
僕も涙を流しながら笑ってみせた__。
改めて読んでくださり、ありがとうございます…!毎度の投稿のたびにもうここまできたんだな…って感じるばかりです。この前、この作品がランキングに載っていてものすごくびっくりしました!!本当にありがとうございます…!!嬉しい限りです。次の投稿は約1週間後を予定しています。ありがとうございます。




