3、もう一方の1週間_
消えてしまう、君……。
「ん〜………!!!」
さっきからベッドでゴロゴロしている翼くん。今日も一応念の為学校を休んだが、今ではこの通り元気でほぼ治りつつある。
「あー!!!俺も部活したいーーーー!!!!」
そう言いながらベッドの上で大の字になる。まるで駄々を捏ねている子供みたいッス。
「どうするんだ!!俺が死ぬ7月19日までもう部活がない……だと………!?」
今度は足をバタバタさせる。動きも声も大きい子ッス…。
「じゃあ、明日とか明後日、……当日の空いた時間とか…なんかいい時間ないッスかね…?」
オレっちが提案すると今度は座り、うーんと考え始めた。
「明日は水輝と夏祭りに行く予定で、当日は部活が休みだ。だったら……、明後日!!」
その時、希望を戻したかのように、シャッキと立ち上がる。
「よし!!!明日、提案してみよう!!部活、やりたいしな…!!!じゃあ、早速明日の祭りの準備だ!俺のかっこいい浴衣を、見せてやろう!!!」
「本当ッスか!やったッス〜!!」
そう言って、翼くんは夏祭りの準備が始めた。
バーン!!と大きな音を立てる花火。体にまで感じる振動に、大きな音に、綺麗な景色に…オレっちはとても感動してしまう…。
「うわぁぁ…!!」
「綺麗………!!」
翼くんは大きく目を開けて次から次へと花火を見る。水輝くんも、ツクヨも花火に見惚れてしまっている。
「昔は、こんなこと、できなかったのに……」
翼くんが小さく口開けて言う。多分みんなが小学生真ん中くらいの時、お母さんが花火を見に行こうと言い出し、病院を出たらしい。その時連れてこられたのがここだと昨日教えてくれた。その時翼くんにとっては、実物の花火を見るのは初めてだったらしく、ものすごく感動したと。そしてその景色を今、元気になってまだ生きている自分が見ている。他人事だけれど、オレっちはなぜか感動してしまった。大きく花火が上がり、まるで花火に包まれたようになる。それは、空を彩る素晴らしい景色だった。
「わぁぁぁぁ!!!素敵な景色ッスね!!!」
つい声が出てしまう。あまりにも多い星の数。それらは、ただまっすぐ輝きを放っている。
「…はい!本当に素晴らしい…!!」
隣のツクヨも目をキラキラさせて、星を見ている。翼くんと水輝くんは少し遠くで2人一緒に星を見ていた。
「……翼さん…言いましたね…。自分のこと。…よかったのでしょうか………。」
「………。」
……さっき、翼くんは水輝くんに自分のこと_体が弱いこと、入院時期があったこと、高校が学校初ということ、全て話した。正直これは、オレっちもびっくりだったッス。だけれど翼くんの中では、話したいことは話せたんじゃないかな…?今でも笑顔が眩しい彼だが、明日は_
「とうとう明日ですね…。」
オレっちが思っていたことを代弁したかのようにツクヨが言う。
「そう…ッスね。そ、そういや、水輝くんも、計画を……」
「……そうですね。彼なりに立ててありました。明日どうなるか本当に分かりません。」
2人が死の計画を立てている。そして、今回の任務は1人でも多くの命を守るもプラス条件ッス。なんとしてでも、どちらかは生きて_
「1人の命は助けるッス。もし水輝くんだった場合必ず連絡を…」
「……でも、私は…翼さんだと思っています。…翼さんが、……水輝さんのために死ぬと…そう、思っています………。」
詰まらずまっすぐな声で言う。オレっちはとてもびっくりした……。
「なんで、…そんなことが言い切れるんッスか……?」
「………水輝さんには…お世話になった、大切な人が多すぎる……。」
ツクヨはそれだけ言って、静かになった……。
「そういや、この前いい喫茶店見つけたんだよね〜!学校帰り、水輝くんと寄ってきたら?」
朝食中お母さんがそんなことを言う。
「ほう……。気になるな……!どこにあるんだ?」
その言葉に、お母さんはスマホのマップを出す。
「ここ!ここ!!ショッピングモール近くにあるんだ〜。私、この前ここのパンケーキ食べたんだけどねもう、本当に美味しくて!!あ!今日のお昼も、ここにしようかな〜!」
そう言って、翼くんにネットにのってある喫茶店のパンケーキの写真を見せる。
「うぉぉ!なんと、美味しそうなんだ……!!俺も今日水輝を誘って行こうと思う!!」
「うんうん!感想聞かせてね!」
「あぁ!!」
そう言う翼くんはいつも通り元気だった。今日は7月19日。彼の命日だ。そんなこと知らないみたいな顔をして、いってきまーす!!!と翼くんは家を出た。
「何かあったか?」
「……っ!ごめん!!」
「っ!水輝!!!!」
水輝くんが走って学校から出る。……翼くんは悲しい顔で水輝くんの背中を見つめた…。だけれど、その顔もすぐ元通りになった。
「み…、水輝も、忙しいんだな!!…って、もうこんな時間じゃないか!?5限目が始まってしまう!!」
慌てるように、水輝くんから目を逸らし逆方向に走った。
「じゃあーな!綾瀬!!」
「あぁ!!またなー!!!」
クラスの子達に大きく手を振り、教室は翼くん1人になった。
「今は、17:00過ぎ…。みんなと遊びすぎてしまったな…。」
そう言って自分の席に座る。
「けれど、時間もできてしまったなぁ……。いっそう、もう死んでもいいんだがな…!!」
椅子にもたれかかり、ぐーっと伸びをする。その時、何かを思い出したかのように鞄を漁り出す。オレっちはずっと元気に溢れている彼を黙って見ていた。
「最後に世話になった水輝に手紙でも書いておこう!!!あいつも驚くだろうな…!」
ノートと筆箱を準備しペンを出す。そして、つらつらと文章を書き始めたと思ったら_
「……っ、……………っつ……あ、、」
ペンの持つ手が、震えていた…。目から大きな雫が頬から落ちて、…紙をどんどんと濡らしていく……。
「あれ………俺…っ…なんで………、」
書く手が止まり涙を拭う。椅子の上で、体育座りをし頭を中に入れた……。
「…俺…………っ、死ぬのは…………怖く…ないのにっ……なんでっ………!」
そんな光景を、オレっちは放っておくことができなかった…。
「…っ………、うっ…………、うわぁぁぁぁ!!」
自分でも止められないほど大きく泣き始めてしまう。オレっちは小さく丸まっているその背中に自分の手をおく。翼くんからは触れられた感覚はないけれど、オレっちは優しく背中をさすった。
「だいぶおさまったッスね、」
「あぁ、すんまんな…。」
あれから約1時間手紙を書き終え、屋上にいた。
翼くんは涙はおさまったけれど、泣きすぎて今も目を真っ赤にしてしまっている。そして、彼は話し始めた。
「……死ぬのは怖くない。それは、本当だ。実際今も怖くない。」
屋上の柵に手を置き話し続ける。
「…だが、さっき気付いたんだ…俺は、、みんなと一緒にいられなくなるのが怖い…!みんなと離れてしまうのが…!!!俺がいなくなることなんて、どうでもいいのに………みんなの中で俺が忘れ去られていかないか…怖い…!」
「…翼くん……」
死ぬのは怖くない…それはきっと、彼の過去にあるんだろう。翼くんは、いつ状態が悪化して死んでもおかしくない日々を過ごしてきた。だから、多分死は怖くないと言い切れるんだろう…。だけれど、彼にとっての初めての仲間、…友達から存在がなくなる…確かにそう考えるとそれは、とても怖いこと……
「…翼くん……オレっちは…!!オレっちは、忘れないッス!!翼くんのこと…!!!たった1週間と短い間だったッスけど、君との過ごした時間は…とても、いい思い出になったッス。……翼くんはどうだったッスか?この1週間幸せだったッスか?」
そう聞くと、翼くんはニコッと笑った。
「ありがとうな…!!!お前には本当に迷惑かけたな。俺も…ものすごく楽しく充実した1週間だった!!幸せな思い出は数えきれないほどできた!!どれも俺の宝物だ!!!!」
そして、少し俯き思い出を漁るように喋る。
「…中学_病気が1番悪化した時、…俺は、もう何もかも嫌になって…一度だけ、…死にたいって言った時があったんだ……」
翼くんの目から少しずつ涙が溢れて、これ以上はこぼさないかのように今度は空を見た…。
「そしたら、…母さんが、いつか…一緒に…舞台をする大切な人に……出会えるから、って…言ってくれて………あの時、…母さんの言葉を……信じて、生きてきて……本当に…、よかったと………思っている……!」
「翼くん……」
涙を拭って鼻を啜り、翼くんは外の方を見た。
「…俺が死んだら、悲しむ人もいるだろう。今以上に迷惑にはなるだろう…。母さんや部活のみんな…今からだって、ここから飛び降りたら下にある花壇を汚してしまうし校庭にいる生徒もびっくりする…。だが、俺は水輝にまだ生きて欲ほしいからな!!!」
翼くんが柵の上に立つ。そして、屋上にいるオレっちの方を向いた。
「水輝は、多分俺がいなくなって、自分を追い詰め元気をなくすと思う…。…だから!水輝がまた前を向くまで、一緒にいてやってくれないか……そして、水輝に何があっても生きろと……そう言っておいてくれ!…俺があげる命だ!無駄にしてくれたら困る!!!俺が………あいつの命なら、、きっと長生きすることだろう!!!!」
…翼くんは、今までにないくらい大きく笑い、そして…屋上の反対側の方へと足を退けた__
「………………っ任務完了__」
改めて作品を読んでいただきありがとうございます。
コメントや感想などで、嬉しい言葉をもらったり、アドバイスをもらったり……学んでばっかりです…!!
このお話まだ続きありますからね…!大丈夫、ここで終わりません…!
今後ともよろしくお願いします。
次の更新予定日は8日の水曜日です。ありがとうございました!




