れんきんじゅつ
めちゃくちゃ遅くなってしまいすみません
どうぞ
「ねぇねぇ、ユーくんもリーちゃんもむずかしいお話はおわり?」
依頼の話も終わり、雑談をしていた俺とリーゼの間から突然ニーナちゃんが現れる。
「はい、もう終わりましたよニーナ先生。……ですよねユーゴさん」
「そうだね。それでニーナちゃんは、どうしたの?」
俺達の言葉を聞いたニーナちゃんは、にぱーっと笑顔を浮かべたのだ。
「じゃあ、リーちゃん。ユーくん借りていくね!」
ニーナちゃんは、そう言うや否やすぐに俺の手を掴んできて、そのままどこかへと連れて行こうとしている。
「えっ? ちょっと、ニーナちゃん? どこに行くの?」
「えへへー、秘密だよー」
結局どこへ連れて行かれるのかも分からないままに俺は、笑顔のニーナちゃんに引っ張られていったのだ。
ニーナちゃんに連れられて俺が辿り着いたのは、部屋の奥にある大きな釜の前だ。その釜の傍には、コンとスラちゃんがおとなしく座っていた。
「ニーナちゃん?」
「ユーくん、わたしのれんきんじゅつ見せてあげるね!」
「えっ? うん、ありがとう?」
ニーナちゃんは、俺に嬉しそうな顔を見せると、何か準備があるのか、ちょっと待っててね、という言葉を残してどこかへと行ってしまったのだ。
「俺は、なんでニーナちゃんの錬金術を見ることになってるんだろう……。とはいえ、あんな嬉しそうな顔を見せられたらそんなこと言えないよな」
勿論、俺がニーナちゃんの錬金術を見たくないわけではない。むしろ、かなり興味があるのだが、どうにもここに至るまでの流れが謎なのがモヤモヤする。
俺は、ひとまずコンやスラちゃんと一緒に、ニーナちゃんを待つことにしたのだ。
俺は、たまたま持ってきていたもふじゃらしでコンたちと遊んでいると、肩からポーチをぶらさげて、両手で木製の踏み台を持ってこちらに近づいてくるニーナちゃんの姿が見えた。ニーナちゃんは、ゆっくりとした足取りでこちらの方に近づいてきている。おそらく、踏み台を運ぶことに集中しているのだろう。
「これは、手伝いに行った方がよさそうだな」
ニーナちゃんが一生懸命運ぶ姿は、とても応援したくなるほど微笑ましいのだが、近くに俺がいるのに、それを見て応援しているだけだとどうにも罪悪感が涌いてくる。
俺は、急いでニーナちゃんのもとへと近づいていく。
「ニーナちゃん、持つの手伝うよ」
俺は、ニーナちゃんが持っていた踏み台を持ちあげる。
「あっ!」
ニーナちゃんは、自分が持っていた踏み台がなくなったことに驚いたようだ。なくなった踏み台を探してキョロキョロしているニーナちゃんと俺の目がばったりと合う。どうやら、ニーナちゃんには先ほどの俺の声が聞こえていなかったようで、さらに驚いた表情を浮かべていたのだ。
「ニーナちゃん、勝手に取っちゃってごめんね。持っていくの手伝うよ」
「ほわぁ! ユーくん、持ってくれるの?」
俺は、ニーナちゃんの言葉に頷いて見せる。
「えへへ、ありがとう!」
ニーナちゃんは満面の笑みを浮かべたのだ。
俺とニーナちゃんが、先ほどの大きな釜がある場所まで戻ってくると、俺は、ニーナちゃんの言葉に従って運んできた踏み台を釜の前へと置く。ニーナちゃんは、その踏み台に乗ると何やら周りをキョロキョロとしていて、位置を確かめているようだ。
「ユーくん。それじゃあ、はじめるね!」
ニーナちゃんは、一度俺の方へと振り返って宣言すると再び釜の方へと向き直る。そして、ポーチからおそらく素材だと思われる物を取りだしては、釜の中へと次々に入れていく。
ニーナちゃんは、さらにポーチから不思議な形をした杖のような物を取りだすと、それで釜の中をかき混ぜ始めたのだ。
「ぐ~る。ぐ~る。ぐ~~~る」
ニーナちゃんは、楽しそうに口ずさみながらずっとかき混ぜ続けている。すると、大きな釜は、白い煙を上げながらきらきらと光り始めたのだ。
「ぐ~る。ぐ~る。えいっ!」
ニーナちゃんは、さらに何かを加えたようだ。白い煙や光もさらに強くなっている。
白い煙がニーナちゃんを包み込んで、その姿が見えなくなり、少し時間が経つと、突然ポンッという音が聞こえてきた。その音を皮切りに白い煙はどんどんはれていき、再びニーナちゃんの姿が見えるようになったのだ。
「ユーくん、これあげる!」
ニーナちゃんは、踏み台を降りて、俺の方へと近づいてくると、おそらく先ほどできた物を渡してくれる。
「これって……」
俺がニーナちゃんから受け取った物は、虹色に輝く丸くて小さな宝石のような物がついた指輪であったのだ。なんとなくではあるが、その指輪からは、オーラのようなものを感じる。これは、もしかしなくてもすごい物なんじゃないだろうか。
「ニーナちゃん、ありがとう。この指輪すごくきれいだね。俺がつけるには、もったいないぐらいだよ」
「えへへー。ユーくんに合うようにがんばったよ」
ニーナちゃんは、すごく嬉しそうな顔を浮かべていたのであった。
 




