リーゼとの打ち合わせ
俺は、大釜の前でニーナちゃんと別れると、コンとスラちゃんと一緒にリーゼを探しに行く。依頼のことで、俺も素材を集めることに協力することになっているのだが、先ほどの話ではそこまで触れていなかったので、打ち合わせをしておきたいのだ。
「リーゼどこにいるんだろう」
「こゃぁ……」
「だよなぁー。コンもわからないよな」
俺は、いつの間にか頭の上に乗っていたコンを撫でながら適当に進んでいると、一緒についてきていたスラちゃんが、突然俺の前に出てきてプルプルと震えはじめたのだ。
「スラちゃん、どうしたんだ?」
「こゃ?」
スラちゃんは、さらに激しくプルプルと震えると、俺たちがこの部屋に入ってきた扉がある方向へと進んでいったのだ。これは、おそらくついてこいということなんだろう。俺たちは、急いでスラちゃんの後を追っていく。
俺たちが、スラちゃんを追いかけていると、前方にリーゼの姿が見えてきた。リーゼは、ソファに座って、何やら真剣に本を読んでいるようだ。そんな彼女の足元には、追いかけていたはずのスラちゃんがいて、膝の上へと登ろうとしている。
「……って、スラちゃんはやっ! いつの間にリーゼのとこに!?」
俺は、驚きのあまり、思わず足を止めてしまう。ほんの少し目を離しただけだというのに、そのわずかな時間で、スラちゃんは、リーゼの元まで移動しているのだ。いくらなんでも早すぎるだろう。
「こゃーん!」
俺が、立ち尽くしたままでいると、コンは、俺の頭の上から飛び出してリーゼの元まで走っていく。
「えっ? ……ちょ、コン待てってば」
俺も急いでコンの後を追いかけていったのだ。
「リーゼのすぐそばまで来たはいいけど、全然気づく様子がないな……」
俺は、先にリーゼの元まで到着していたコンを持ちあげて抱きかかえると、彼女の方を見る。遠目から見えていた時同様、物凄く本に集中していて、俺たちに気づく様子がまるでないのだ。
「どうしようかな……。これだけ集中してたら、声かけづらいな」
俺がどうやってリーゼに気付いてもらうか考えていると、彼女の膝の上に乗っていたスラちゃんとふと目が合う。スラちゃんは、その場で軽くプルプルと震えると、次の瞬間にリーゼの顔めがけて勢いよくジャンプしたのだ。
「わぷっ!」
これには、さすがのリーゼも驚いたのか、本からを手を離して、彼女の顔を覆いつくすようにくっついているスラちゃんをはがそうとしている。
スラちゃんは、特に抵抗するようなそぶりもみせずに、リーゼにされるがままはがされて、そのまま彼女に抱きかかえられているような状態になったのだ。
「スラちゃん、いきなりどうしたのですか?」
スラちゃんは、リーゼの言葉にプルプルと震えると再び俺たちの方に視線を向ける。そんなスラちゃんにつられてか、リーゼもゆっくりとこちらの方へと振り向いた。
「ユーゴさん!?」
リーゼは、俺たちがすぐ近くにいるとは思わなかったのか、とても驚いた表情を浮かべている。先ほどのニーナちゃんとのやりとりを見られて恥ずかしがっていた時とは違い、純粋に驚いているような感じだ。
「リーゼ、邪魔してごめんね」
「いえ、大丈夫ですよ。それで、どうされたのですか?」
「実は、依頼のことで、俺も素材を集めるのに協力することになってるから、その打ち合わせをしようと思って探してたんだ」
リーゼは、俺の言葉を聞くと合点がいったとばかりに頷いた。
「そうだったんですね。それならちょうどよかったかもしれません。私も今依頼されていたアイテムを調合するのにレシピを調べていたところなんですけど、どうやら三つほど集めにいかないといけない素材があるみたいなんです」
「そうなんだ。それじゃあ、俺がその素材を集めに行けばいいのかな」
「そうですね。ユーゴさんたちにもご協力してもらえると助かります。あっ、勿論私とスラちゃんもついていきますよ! 素材を集めるのも私たち錬金術師の仕事ですからね」
リーゼは、元気いっぱいに微笑んだのだ。そんな彼女に抱きしめられてるスラちゃんもやる気がいっぱいなのか、激しく震えている。
「リーゼたちもついてきてくれるんだね。すごく心強いよ。正直俺たちだけだと、どんな素材が必要なのかは分からないけど見極めには自信がないからね」
「いえいえ、きっとユーゴさんたちでも大丈夫ですよ! それに今回は、ユーゴさんのモフリストとしてのお力がきっと必要になると思います」
リーゼは、俺の手を両手で握ると真直ぐに俺の目を見つめてくる。その彼女の目からは、俺のことを信頼しているということがひしひしと伝わってきたのだ。
俺は、一度リーゼから目線を離すと、俺の肩の上に乗っているコンの方に目を向ける。
「こゃ!」
コンは、短く鳴くと俺の方をじーっと見つめる。コンもやる気は十分なようだ。俺は、コンに頷き返すと、再びリーゼの方へと目線を戻す。
「ありがとうリーゼ。力の限りがんばるよ!」
「こちらこそ、ありがとうございます。ユーゴさんたちの力お借りしますね」
リーゼは、嬉しそうな笑顔を見せたのだ。
その後、俺たちはさっそく明日から素材を集めに行くことに同意すると、待ち合わせの場所と時間を決めて、その場は解散することになったのであった。




