ペンダント
のちのち、サブタイトル変えるかもしれません
「リーゼ! このペンダント買わせてもらおうと思うんだけどいくらになるかな?」
「こゃ!」
俺は、カウンターの向こう側でニコニコとした顔を見せて俺たちの方を見ていたリーゼに値段を尋ねる。彼女は、俺達が持ってきた物を見るとさらに嬉しそうな顔を浮かべていた。
「わぁ、ありがとうございます。実はその子、最初にコンちゃんにお会いした時に思いついて調合したものなんですよ」
「コンにあった時に? ……そうだったんだ」
「はい、そうなんです。ですから……」
「お金はいらないは無しだよ!」
俺は、リーゼがなんとなく言いだしてしまいそうな言葉を先に出して釘を打つ。アステールのお金の代わりに別の物を買うということで、話が進んでいたのにここでまた貰ってしまっては、本末転倒なのだ。ここは、なんとしてでも買う方向に持っていかないといけない。
「ユーゴさん……。私、まだ何も言ってないです」
リーゼは、悲しそうな顔で俺の方を見てくる。俺の言葉が、ショックだったのかもしれない。
俺は、リーゼの悲しそうな顔を見て、少し罪悪感がわいてくるもそこでぐっと踏みとどまる。ここでリーゼに負けてしまえば、アステールの時と同じになってしまうのだ。それに、今一度考えなおしてみると今回は罪悪感を抱く必要はないはずだ。前回、リーゼから貰った分を別のアイテムとして今回買うわけなのだからここで彼女のあの顔に負けてしまってはダメなのだ。
「リーゼが言いだしそうだったからね。今回は、何があってもちゃんとお金は払うからダメだよ!」
「もう……」
リーゼは、ぷくーっと頬を膨らませて不満そうな顔をしていたものの、俺の意思は変えないという思いを感じたのか、一つ息を吐き出すと再び俺に笑顔を見せたのだ。
「わかりました。お金は、ちゃんといただきますね。でも、ユーゴさんそんなに遠慮しなくてもいいんですよ?」
「いやいや、流石に貰いすぎだからね。それでいくらになるかな?」
「こちらのペンダントは、300リンになりますね」
俺は、魔法のかばんから600リンを取りだすと、それをリーゼに手渡す。
リーゼは、俺からお金を受け取って金額を確認すると一瞬、その場で固まった。
「ゆ、ユーゴさん。お金が多いですよ。こちら300リンはお返ししますね」
「いや、それであってるから大丈夫だよ。返さなくていいからね」
リーゼは、過剰分のお金を俺に返そうとするものの、俺はそれをやんわりと拒否する。俺に断られたリーゼは、目に見えてあたふたとし始めた。
「ユーゴさん!」
「本当に大丈夫だから。まだ払えてなかった魔法のブラシも込みでその金額にしてるから受け取っといてね。あっ、でも魔法のブラシのお金が足りなかったら教えてもらえるかな」
「……魔法のブラシは、200リンですからそれでもまだ多いですよ?」
「それなら、リーゼにはたくさん助けてもらってるから少ないけど残りの分は、そのお礼ということで貰っといてよ」
俺は、この話はこれでおしまいとばかりに口を閉じる。
リーゼは、そんな俺に何かを言おうとしていたものの、そのままおとなしくお金を受け取ってくれたのだ。俺は、そんなリーゼの様子を見て内心ホッとしていて、彼女が小さくありがとうございますと呟いた言葉は、まるで聞こえていなかったのだ。
買い物も終わり、コンがスラちゃんと一緒に遊んでいる姿を見ている傍ら、俺は一つ気になったことをリーゼに聞いてみる。
「リーゼ! さっき聞けばよかったんだけど、このペンダントって何か能力があったりするのかな?」
「はい。実は、一度だけピンチの時に攻撃を防ぐ力が備わっているんです。でもそれ以外は、普通のペンダントと変わりはないですね」
やはり普通のペンダントではないようだ。一度限りとはいえ、ピンチの時に攻撃を防いでくれる力は、かなり便利だと俺は思う。それを使ってしまえば、普通のペンダントと変わらないそうだが、これは武器や防具ではなく、アクセサリーなのだから色々な力をこれに求めるのはお門違いだろう。
「リーゼ、ありがとう」
「いえいえ。でもユーゴさん、いくら一度だけ防ぐと言っても無茶はダメですからね!」
俺は、リーゼにしっかりと釘を刺されてしまい、思わず言葉を失ってしまった。リーゼには、そんな意図はなかっただろうが、見事に先ほどの俺がしたことをやり返されてしまった感じだ。
俺は、素直にリーゼに頷くと、彼女は安心したようで、嬉しそうな顔を浮かべていたのだ。
俺は、それからもリーゼと話をして時間を過ごすと、そのままリーゼのアトリエを後にしたのであった。
 




