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小狐さんといく~異世界モフモフ道中  作者: ところてん祐一
第二章:もふもふギルド入会編
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女性の正体

 扉から出てきた女性がリリアさんに声をかけたのだ。リリアさんを見た当初は、彼女の顔は驚きであふれていたが、徐々に嬉しそうな顔へと変わっている。

 対するリリアさんの方だが、女性に声をかけられた当初は、同じく驚いた顔をしていたが、徐々に顔色を悪くしていた。そんなリリアさんが、女性に向けて口を開いた。


 「なはははー(棒)。何を言うっすか。わ、私はリリアと言う人じゃないっす。新人のモフリストを案内する謎の受付嬢Xっす!」


 リリアさんは、そう言ってコンを自らの顔の前に掲げたのだ。

 そして、掲げられたコンはコンで、空気をよんだのか、面白そうな空気を察したのか、ひと言鳴いたのであった。


 「こゃーん!」


 二人の間には、無言の空気が流れている。場の雰囲気としては、シリアスのような重たい感じではなく、とてもゆるい感じだ。そんな心配することなど何もないような雰囲気であるのだが、何故か傍から見ているだけの俺は妙に緊張を覚えているのだ。


 少しの間、二人の間に無言が続いていたが、やがて女性は目をキラキラとさせながら口を開いた。


 「か、かわいい~。リリア、どこでその()拾ってきたの? 私にも触らせて!」


 「だ、ダメっすよ。私が拾ってきたわけじゃないっすから。コンちゃんは、そこにいるユーゴさんの相棒っすから、彼に確認してからっす」


 「そっかぁ、コンちゃんって言うんだね~」


 女性の勢いは爆発したかのようにすさまじい。リリアさんがやんわりと止めるも彼女の勢いは止まらない。というより、リリアさんの話をまるで聞いていないようだ。ちなみに当事者のコンであるが、一鳴きした後は、リリアさんの手の中で毛づくろいをしていた。なんともマイペースな相棒である。

 おそらくそんなコンの姿も女性には刺さっていたのであろう。彼女の暴走は留まるところを知らず、ついにその魔の手がコンに伸びようとしていた時であった。ひょいっ、とコンは彼女の手を見事にかわすと俺の元へと戻ってきて、そのまま俺の頭の上へと登っていったのだ。


 「コンちゃぁぁぁん!」


 謎の女性は、コンの名前を呼びながら俺の方へと一歩、また一歩近づいてくる。その姿は、恐ろしいほどの迫力があり、あっという間に飲み込まれてしまいそうだ。

 俺がその迫力にやられ、立ちすくんでいると、謎の女性との距離が徐々に近づいてくる。そして、彼女の射程圏内に入ったかと思われた時であった。


 「ぷぅ!」


 俺の手の中で眠っていたはずの角うさぎがいつの間にか飛び出して、謎の女性にたいあたりをかましていたのだ。


 「ぐふっ!」


 角うさぎの体当たりがよほど良いところに入ったのか、およそ女性とは思えないほどの声を出して、女性は沈んでいったのであった。こうして、コンは魔の手から守られたのである。





 「先ほどは失礼しました。私は、リリアの姉のイリアです」


 先ほどまで暴走していた女性は、そう名乗った。

 俺は、すぐに自分も彼女に名乗り返す。


 「俺はユーゴです。いつもリリアさんにはお世話になってます」


 イリアさんは、俺の名前を聞いた時に一瞬驚いた顔を浮かべたが、その後はニコニコとした表情を浮かべている。どことなくその表情は、リリアさんに似ている。流石は姉妹といったところだろう。

 ちなみにリリアさんは、何故か姉のイリアさんにがっつりと捕まっていた。


 「ユーゴ君。よろしくね。これからもリリアと仲良くしてあげてね」


 「こちらこそよろしくです。勿論です!」


 俺は、イリアさんの言葉に当然だといわんばかりに答える。リリアさんと話したりするのは、とても楽しいのだ。それに、彼女にはたくさん助けられてきたので、その恩返しもしたいのである。

 俺の言葉を聞いたイリアさんは満足そうにしている。一方で、リリアさんは、嬉しそうな、少し照れくさそうな表情を浮かべていた。



 突如、イリアさんはハッと何かを思い出したかのようにリリアさんに言葉を発する。


 「そういえば、なんで最初知らないふりをしたの? リリア?」


 イリアさんは少し悲しそうであった。

 その言葉を聞いたリリアさんは、またもや何かを誤魔化すような形で答えた。


 「お姉ちゃん、それは後っす。もふもふさんがユーゴさんを待ってるっすから」


 「確かにそれはそうね。扉開けてから少し時間経っちゃったし、まずはユーゴ君を優先しないとね。でも後でもう一度聞くからねリリア」


 イリアさんは、とりあえず納得したみたいだが、うまくリリアさんにはぐらかされていたような気がする。

 リリアさんは、俺の方を向くと再び口を開いた。


 「それじゃあ、ユーゴさん。ちょっと回り道しちゃったっすけど、もふもふさんの所に行くっすよ」


 「了解」


 俺が、リリアさんに返事をした時であった。開いている扉の方から声が聞こえてくる。


 「ふぉっ、ふぉっ。その必要はないぞ」


 俺たちは、一斉に扉の方を向くと、そこにはニコニコとしたもふもふさんが立っていたのであった。



 


 

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