リリアの隠し事?
「さっ、ユーゴさん。受付はこんなものにして次に行くっすよ」
リリアさんは、そう言って俺の背中をグイグイと押してくる。意外なことに彼女の力は強い。俺はそのまま流されるままに彼女に押し出され、受付から少しずつ離れていったのだ。
ある程度受付から離れるとリリアさんは、俺の背中を押すのをやめて横に並んでくる。俺は、横目に彼女の顔を見てみると、どこかホッとしたような感じであった。ある意味ちょうどいいタイミングなのかもしれない。俺は、押されていた時に疑問に思っていたことを彼女に聞いてみようと思い、話しかける。
「リリアさん!」
「どうしたっすか?」
リリアさんは、首をかしげながら俺に聞き返してくる。
俺はこの後、受付についてほとんど説明されていないけど大丈夫か、と口にしようとしていた。しかし、この時彼女は何かを感じ取ったのかもしれない。俺の言葉に合わせるかのように彼女は口を開いたのだ。
「大丈夫っす。特にこれと言って説明することはあれ以上ないっすからね。そんなことより、ユーゴさん。あそこの扉の奥でもふもふさんが待ってるっすよ」
リリアさんは、やや早口でそう答えたのだ。
そして、その言葉を聞いた俺は、どことなく何かを誤魔化しているかのように感じた。勿論、彼女が嘘をついているわけではないだろう。しかし、彼女が何かを隠しているような気がしてならない。おそらくそれは重要なことではないのだろうが、気になって仕方がない。
俺は、先ほどまでのリリアさんの如くじーっと彼女の方を見つめる。そして、俺の腕の中で大人しくしていたコンと角うさぎも俺の意思をくんだのか真似をしたのか、リリアさんの方をじーっと見つめている。
「あはは、ユーゴさん。そんなじーっと見られてもなんにも出ないっすよ。それより先を急ぐっすよ」
彼女は、その視線に耐えられなかったのか、俺たちから視線を外すと、前を向いて扉の方まで歩いていった。スタスタと歩くそのスピードは速い。俺たちは、彼女においていかれないように急いで追いかけていった。
俺たちが、リリアさんに追いつくと、彼女は例の扉の前で待っていた。彼女は、俺たちの姿を確認すると声をかけてくる。
「ユーゴさん遅いっすよ。この先にもふもふさんがいるっす。準備は大丈夫っすか?」
「大丈夫! というか今度は問答無用で開けないんだね」
「流石にここに入ってくる時とは、わけが違うっすからね」
リリアさんは、やや苦笑気味にそう答えた。流石にもふもふさんという大物の前では、リリアさんのお茶目も発揮されないようだ。
「それじゃあ、さっそく開けるっすよ」
彼女はそう言って扉に手をかけようとした時であった。突然、その扉が勢いよく開いたのだ。扉の前にいたリリアさんに見事にクリーンヒットしていて、とても痛そうである。そのまま彼女は、その場に蹲ってしまった。
心配になった俺は、彼女の元へと近づいていき、声をかける。
「リリアさん。大丈夫?」
「大丈夫っすけど、めっちゃ痛いっす」
リリアさんは、若干涙目である。
ひとまずパッと見た感じだと怪我はしてなさそうで俺はホッとしていた。
そして、おそらく心配していたのであろうコンは、俺の手の中から飛び降りて彼女の方へといった。そのまま彼女の肩へと飛び乗ると顔をペロペロとなめ始めたのだ。
「コンちゃんも心配してくれてたっすか。コンちゃん、ありがとうっす」
リリアさんは、コンの心配がよほど嬉しかったのか、ペロペロとなめ続けるコンの頭を思いっきり撫ではじめたのだ。その手つきは、とても乱雑に見えるが、意外と繊細で、コンの毛並みを損なわないように大胆になされているのだ。
それを見た俺は、素直に彼女の技術に感心していた。率直に言えば、俺よりも技術が高そうなのである。リリアさんがモフリストギルドの受付嬢だからこそそんな技術を持っているのか、あるいは彼女自身が実はモフリストなのかは分からない。だが、やはり俺はまだまだモフリストのスタートラインに立ったに過ぎないのだと強く実感したのだ。
意外と元気そうなリリアさんが、コンをモフリ始めていると、開いた扉から一人の女性が出てきた。そして、彼女はリリアさんの方を見ると驚いた顔をして口を開いたのであった。
「そこにいるのは、もしかしてリリア?」




