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小狐さんといく~異世界モフモフ道中  作者: ところてん祐一
第二章:もふもふギルド入会編
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そのもふもふの名は

 長かった夜も過ぎ去り、朝がやってきた。異世界生活はこれが三日目である。

 俺は、目が覚めるとコンと共に朝食を取りはじめる。そして、俺たちが食べ終わると、このままギルドへと向かってしまいたいところであったのだが、俺はそこをグッとこらえて一度部屋へと戻っていく。その前にやることがあるのだ。それは、コンへのブラッシングだ。いくらコン自身のポテンシャルが高くともしっかりと手入れをしなければ、その毛並みは保たれないのだ。


 「こゃーん!」


 あまり鳴き声を出さないコンではあるが、この時ばかりはブラッシングをおねだりするかのように俺の肩で鳴いている。それと同時にコンのパンチも俺の顔へとペチペチされている。

 俺は、コンを自分の膝もとへ寝かせるとリーゼからもらったブラシでブラッシングを始めていく。そうすると、コンの毛並みがどんどんきれいになっていくと同時に、コンもとても気持ちよさそうにしている。だが、問題はこれからだ。まだもふもふの権化たる尻尾が残っているのだ。いくら魔法のブラシと言えど、ここは繊細なところだ。丁寧に整えてあげないともふもふは、維持できない。

 俺は、集中するために少しの間無言でブラッシングをおこなっていったのだった。




 俺が時間をかけて丁寧にコンにブラッシングをした甲斐もあってかコンの毛並みは、とてもきれいになったのである。


 「思いっきりモフりたいなぁ」


 俺は、思わず呟く。これだけきれいになると、その魔力にやられてモフりたくなってくるのだ。だが、現状問題は二つある。

 一つ目は、せっかく整えた毛並みがまた崩れてしまうことだ。そして、二つ目は、単純に時間があまりないのだ。今日は、リリアさんに案内してもらってモフリストのギルドに行く予定なので、さすがにそろそろギルドにいかないといけない。

 なので、俺はモフることを泣く泣く諦め、部屋を出てギルドへと向かっていたのだった。




 宿からギルドまでの道のりは流石に慣れたもので、俺はサクサクと進んでいく。ちなみにコンは、俺の頭の上でじっとしている。コンもこの道に慣れてしまったのかもしれない。単純に寝ているだけかもしれないが、とても大人しくしているのだ。

 そうして、俺たちはギルドに到着した。走ってきたので、やや息が乱れている。俺が息を整えていると声をかけられる。


 「ユーゴさん。おはようっす。もしかして走ってきたっすか」


 そう言って話しかけてきたのは、リリアさんであった。珍しくどこか元気そうである。

 俺は、彼女に挨拶を返す。


 「リリアさんおはよう。実は、そうなんだ」


 「やっぱりそうなんすね。そんなに急がなくてもよかったっすのに」


 リリアさんは、やや呆れ気味にそう答える。どうやらそんなに急がなくてもよかったようだ。これなら一モフりしてもよかったかもしれない。

 俺がそんなふうに考えていると、彼女が再び話しかけてくる。


 「まぁ、でも時間はあった方がいいっすね。ユーゴさん昨日が初めての依頼でお金ないでしょうからモフリストのギルドに行った後、ギルドのお仕事入れるっすよ」


 「えぇー!?」


 彼女が意地悪そうな顔を浮かべながら爆弾を落としてきたのだ。確かにお金はあまりないので、依頼はこなしたいところではあるが、少ししんどそうである。とはいえ、そんなことも言ってられるほどの余裕があるわけではないので仕方ない。俺は、彼女が比較的楽な依頼を入れてくれることを願うことにしたのである。



 「ユーゴさん。それじゃ、さっそく向かうっすよ」


 リリアさんのその言葉を機に俺たちは、目的のモフリストギルドへと向かい始めた。

 彼女によると、ギルドからはそんなに離れていないらしいので、すぐに着くとのこと。

 そして、俺が彼女と話をしながら進んでいるうちにどうやら目的の場所へと辿り着いたようである。


 「ユーゴさん。ここが目的の場所っす。準備はいいっすか?とはいえ、問答無用で開けるっすけど」


 彼女は、その言葉通り、問答無用で扉を開け、俺の手をつかみ、中へと入っていく。そして、俺が中に入るのを確認したと同時に彼女は、こちらを振り向きこう言ったのだった。


 「ようこそ、もふもふギルドへ」


 彼女は満面の笑みを浮かべて俺の方を見ている。その笑顔に少しの間見惚れていた俺は、我に返るとよろしくお願いします、と彼女に答える。

 彼女は、その答えに満足したようで、俺の手を掴んだまま奥へと進んでいく。そうして、彼女に手を掴まれたまま歩いていると、ふと奥の方になにやらもふもふのようなものが見えた気がする。しかし、その姿は一瞬で消えてしまった。それと同時に俺の身体に衝撃が走り、思わず倒れてしまう。何だろうと思い、俺は自分のお腹の方を見てみる。


「ぷぅ!」


 そこには、嬉しそうに鳴きながら俺の身体に顔をこすりつけている角うさぎがいたのであった。


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