依頼達成と魔法のかばん
「それはともかく、ユーゴさん。依頼は終わったんじゃないっすか?」
ここにカゴを置いてくださいっす、とリリアさんは、机の上を指して言う。どうやらこちらの方で中身を全部出す必要はないようだ。
俺は、彼女に言われたとおりにカゴを机に置いた。そして、ハッと気づく。そういえば、自分で使えないかと思って依頼の量より多く採ってきたのだ。俺は、そのことをリリアさんに伝える。
「大丈夫っすよ。受け取るのは、依頼の量までにしとくっすから」
そう言って、リリアさんはカゴから入っている物を取りだして、次々と分けていく。驚くことに、それが驚異的なスピードで俺の目の前で行われているのだ。彼女が、めんどくさそうにしている姿ばかり見ていたこともあってか目の前の光景に圧倒されてしまった。
そうこうしているうちにどうやら仕分けが全て終わったようだ。そして、再び彼女が口を開く。
「ユーゴさんやるっすね。15束も多くエノノノコ草を見つけて来るなんて。初心者冒険者じゃ一日だけではなかなか見つけてこられないっすよ」
群生地でも見つけったっすか、と彼女は付け加えて言う。俺はその言葉に頷いた。
それにしても初心者冒険者が一日で見つけてこられない量ということは、この依頼は数日に跨って行うものであったのかと気付く。そんな依頼を初めての依頼で持ってくるなとも思ったが、彼女なりにきっと考えがあったのであろう。そのことは、自分の中だけにとどめておくことにした。
「ユーゴさん。依頼書を出してください。依頼達成の処理をしますんで」
その言葉を聞いて、俺は依頼書を取りだして、彼女に渡した。この依頼書だけは、カゴに入れず自分で持っていたことを忘れていたのだ。そして、彼女は俺からそれを受け取ると、処理して来るっす、と言って奥の方へと行ってしまった。
しばらくして、リリアさんが俺の前へと戻ってきた。
「ユーゴさん。依頼達成おめでとうっす。これが報酬の500リンになるっす」
そう言って、彼女は俺に報酬金と残りのエノノノコ草を渡した。
そして、それとと続けて彼女は言う。
「モフリスト専用ギルドへの入会条件達成もおめでとうっす!」
彼女は、一人でドンドンパフパフと口で言いながら盛り上げている。しかし、俺には全く意味がわからなかったので、そのことを彼女に聞いてみる。
「ユーゴさんは、もふもふさんから勧誘を受けてたっすよね。モフリスト専用ギルドに入るには、この依頼を達成することが条件なんすよ」
彼女は、そう答えた。どうやら聞くところによると、例え勧誘を受けていても条件はこなさないといけないらしい。俺はまだ入るといっていたわけではなかったが、リリアさんによるとモフリストは絶対に入るべきで、むしろ、そこがスタート地点だそうだ。だからこそこの依頼を俺にさせたそうなのである。
正直まだまだ分からないことは多いが、明日そのギルドにリリアさんが連れていってくれるらしいので、その時に何をしているのかわかるだろう。ちなみに彼女自身もそちらのギルドの一員らしく、同様に受付嬢をやっているらしい。
「あっ、そうっす。せっかくなので、この魔法のかばんをユーゴさんにあげるっすよ」
特別サービスっすよ、と言いながらリリアさんは、俺にかばんを渡してきた。彼女の話によると、このかばんには、空間魔法が付与されているらしく、ある一定量まで物が入って、しかも重さも感じない優れたものであるらしい。言うなれば、制限付きの四○元ポケットのようなものであった。
「リリアさん、こんな高そうな良いもの本当にもらっていいの?」
思わず俺は、彼女に聞いていた。
こんな便利そうなもの貰って嬉しくないわけはないのだが、正直困惑の方が勝っていた。
「大丈夫っすよ。初めての依頼達成のお祝いっす。それにこの世界で生きていくには必要っすからね」
彼女は、ニコニコしながら快く渡してくれたのだ。
「リリアさん、ありがとう!」
俺はそう言って、彼女にお礼を言ったのだった。




