ホットミルク
一日遅れてしまいましたが、どうぞ
俺は、リリアさんにお礼を言った後、彼女と別れた。そして、クラリッサさんを探して、ギルド内を歩き始める。俺が、もふもふさんに角うさぎを託したあたりまでは、近くにいたのだが、リリアさんに依頼達成の処理をお願いしたあたりから気が付くといなくなっていたのだ。
「それにしても意外と広いな」
俺は、ふと呟いた。
クラリッサさんを探しつつ、このギルドを見て回っているのだが、意外と中は広くなっているのだ。そして、冒険者たちが依頼を受けたりする受付以外にも色んな施設が内包されている。なんだかよくわからない所からおそらくトレーニングをするような場所など様々である。
そんなふうに俺が見ていると、コンも俺の服の中から顔だけ出して、周りを興味深そうにキョロキョロとしている。ただ、まだ眠たかったのかコンはちいさなあくびを浮かべるとそのまま服の中へと顔を戻したのだ。これからまたひと眠りするのだろう。俺は、服の上からコンの頭を何度かなでると、クラリッサさんを再び探し始めた。
俺は、ギルド内の一角にあるバーのような場所で、クラリッサさんを発見した。俺は、彼女の元へと近づいていく。そして、何かを飲んでいた彼女に声をかける。
「クラリッサさん。探しましたよ」
「あら?ユーゴくん?どうしたのかしら」
彼女は、少し不思議そうに首をかしげながら答える。
「依頼の報酬も手に入りましたので、先ほどの助けていただいたお礼と護衛してもらったお礼を渡そうかと思いまして」
俺は、そう言うと100リンを彼女に手渡す。相場が分からないので正直不安だ。
彼女は、少し驚いたような姿を見せた後、口を開いた。
「ユーゴくん、ありがとう。一応受けとっておくわ」
彼女は、俺に微笑みかけてそう言った後、俺から100リンを受け取るとそのまま自分のテーブルに置いた。そして、探しに来てくれてありがとう、と付け加えて言ったのだ。
なにはともあれ、クラリッサさんにとりあえずお礼を渡せたことに俺はホッとしていた。すると今度は、匂いにつられたのかコンが再び俺の服から顔を出している。目がややうつろとしているが、どうやらクラリッサさんが飲んでいたものが気になるようだ。鼻をひくひくとさせている。そして、ふとした拍子にクラリッサさんがいることにコンは気付いた。少しの間、固まっていたが、やがて彼女のことを認識したであろうコンは、ぐるる、と彼女に唸ると急いで、俺の服の中へと逃げていったのだ。その一連の流れを見ていたクラリッサさんは、案の定というかやはり軽くショックを受けていたのだった。
クラリッサさんが、ショックから立ち直ったのを見計らって、俺は彼女に言葉をかける。
「それって何を飲んでるんですか?」
「これ?ホットミルクよ」
彼女は、そう答えた。
その答えは、とても意外であった。俺がその答えに驚いていると、おそらく表情からそのことを察したであろう彼女がクスッと笑って口を開いた。
「これを飲むと落ち着くの。それにとても美味しくて、意外と奥深いわ。ユーゴくんもぜひ飲んでみて」
そう言うや否や、彼女はマスターを呼ぶと、彼にも同じミルクをちょうだい、と注文してしまったのだ。突然の出来事に俺が少し困惑していると、彼女は何を勘違いしたのか言葉を発した。
「大丈夫よ。あなたからもらったこのお金で私とあなたの分も払うから安心していいわ」
どうやら彼女は、俺がお金の心配をしているのだと思ったようだった。ただ目の前の出来事についていけなかっただけなのだが、そのことは胸の中にしまうと素直に俺は、ありがとうございますと頷いたのだった。
ほどなくして、俺の前にホットミルクが運ばれてきた。軽く湯気がたっており、とてもおいしそうだ。いただきます、と言ってからまずは一口飲んでみる。口の中に広がるのは、ほどよい甘さとまろやかさだ。それが喉を通って、身体の中に入るととても気持ちが落ち着いてきたのだ。
「ユーゴくん、どうかしら?」
クラリッサさんは、俺に尋ねてくる。
俺は、一呼吸置いて彼女に答えた。
「クラリッサさんの言うとおりでしたね。おいしくて、奥深くて、とても落ち着きます」
俺の答えに満足したのか、彼女は笑顔で良かったわ、と言ったのだった。
次回更新予定は月曜日です




