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Sea you  作者: 白羽 海菜
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カーテンの隙間からこぼれる僅かな光で目覚めた。

また、「私」の今日が始まるらしい。


真っ先に洗面所に行き、不機嫌そうな自分と目が合った。昨日タバコを吸いながら寝たせいだろうか、口内が不愉快だ。社用携帯のしつこいバイブ音が聞こえて、十分に歯を磨けていないのに濯ぐはめになった。

画面にはCCに入れられたメールが羅列されていた。まったく私宛じゃないのかと辟易としながらも身支度を始める。

扉を開けると曇天が広がっていた。重たい足を何とか進めながら、駅に向かい、発車寸前の電車に乗った。運がいいのか悪いのか分からない。


目が覚めた。馴染みのない駅名が目の前にあった。全く不運だ。

すぐに乗り換えようとしたが、そこでふと目の前に座っている男に私は釘付けになっていた。慌てて目を逸らそうとした頃にはもう遅かった。男がこちらに向かっているのだ。自分よりも遥かに大きいその男は、見た目にそぐわず柔らかな表情で「逃避行しませんか。」そう言った。これは幸運?それとも不運?

田舎で過ごした平穏な日々から一変、都会の喧騒は俺自身をとても惨めな存在に感じさせた。こんなことなら見栄を張って上京しなければ良かった。


社会人6年目。大した学もない割にそれなりの企業に就いた。何をこれ以上求めるんだと思わなくもなかったが、くだらない上司からのパワハラ、良いなと思った同期はその上司と不倫。社会人3年目でできた彼女には10か月前に前触れもなく振られた。あとから知ったが、ライブハウスで知り合ったしょうもない男と浮気して妊娠していたらしい。プロポーズまで考えていたのに散々だ。


退屈だった。でもこれ以上他人に自分を揺さぶられるのは御免だ。


今日は仕事を休んで、半年間企てていた計画を実行する。遺書なんてものは書いていない。文才はないし後で笑いものにされちゃたまったもんじゃない。心配する家族はいない。世にいう親ガチャは大ハズレで6年前に縁を切った。

ところで言い忘れていたがもちろん無断欠勤だ。パワハラ上司からの着信は拒否。どうとでもなれ。


恐らく人生最後になる電車に乗った。前の人、絶対に寝過ごしたんだろうな。それにしてもやけに視線を感じる。

瞬間、自分の意思とは裏腹に体が動いてしまっていた。

「逃避行しませんか?」俺は何を言ってるんだ。

「喜んで。」彼女は笑顔でそう言った。嘘だろ。何を言っているんだ。

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