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134 ドラゴン族ジャンヌの思惑

「ふわぁ・・・すごいですね」

「あれがドラゴン族の英雄か」

 ドラゴン族同士の対決は、1秒もたたずにでジャンヌが勝利を収めた。


 ザァッ・・・・


 ジャンヌが自分の身長よりも大きな刃を持って、えぐられた地面に立っている。

 ザスが攻撃を与える隙も無く、圧倒的な力の差があった。


 ザスは殺されそうになったところを、強制的に転移させられていた。

 バトルフィールド内でなければ、確実に仕留められていただろうな。


「・・・ドラゴン族のジャンヌか。僕でも聞いたことあるよ」

「ん?」

「血も涙もない、冷徹なドラゴン族の英雄ジャンヌ、彼女がいたから『ドラグーンの牙』のある谷には神すら近づかなかったって話があってね。伝説だと思ってたけど、この力を見たら本当かもしれないな」

 グレンが前のめりになって呟く。

「あんなに可愛い顔してるのにね。ちょっと冷たい感じがするけど、ファンも多そうだなー」




『勝利、ジャンヌ!!!!』

 えまが声を上げる。ジャンヌが刃を仕舞って、くるんとした髪を後ろにやった。


 ワアァァァァァ


 歓声が上がる。


「ハンス様、あの子、『ドラグーンの牙』でかなりの難易度の高いクエストばかりこなしているみたいです。紹介に書いてあります。ほら・・・」

 ヒナが『ドラグーンの牙』のギルドの紹介画面を表示しながら言う。

「へぇ、与えられたクエストは99,9%完遂してるのか」

「はい、あと、『ドラグーンの牙』にはRAID学園の生徒も2人行ってるみたいですね」

「え・・・あの・・・ドラゴン族のギルドなのにRAID学園の生徒が?」

 結花が声を小さくしながら、ヒナに近づく。


「ドラゴン族が受け入れを許可したのか」

「はい。『ドラグーンの牙』は他の種族を入れていないので、RAID学園の生徒の中に、デフォルトでドラゴン化できるようになっていた生徒がいたってことでしょうか」

 ヒナが口に手を当てて、2人の生徒の顔を表示する。

「両方とも高等学部1年の生徒ですね。予選落ちしたようですが、たぶん、この会場にもいると思います。『ドラグーンの牙』がいた場所のどこかに・・・」

 ヒナが上のほうを眺めた。



 巨大モニターがジャンヌの表情をアップで映す。


「ちょっといい?」

『あ、はい』

 ジャンヌがえまに話しかけて、マイクを取っていた。

 髪をふわっとなびかせて、前に立つ。予想外の行動に、えまとりまが首をかしげていた。


「あー、みなさん、こんにちは。私は、『ドラグーンの牙』のジャンヌです」

 無表情のまま、甲高い声で話す。

「私はここで宣言します。必ず勝ち抜いて、ドラゴン族初の新帝エンペラーになります」


 オオオオオオォォォォ


「!」

 会場の空気がジャンヌに集まる。

 作戦を立てていたBグループの者たちや、他のギルドの者たちも、一斉にバトルフィールドに視線を向けていた。


「堂々としてますね。この場でわざわざ流れを止めてまで、宣言するとは・・・」

「ドラゴン族は血気盛んな種族らしいし。僕は早々にリタイアしておいてよかったよ。彼女と当たったらどうなっていたか・・・」

 グレンが頬杖をついた。


「ここで皆さんに伝えたいことがあります」

 配信のカメラがジャンヌに寄っていく。

 長いまつ毛を、ゆっくりと瞬かせていた。


「闇の王はこの会場にいます」

「!?!?!?」


 ざわ・・・・


 会場がどよめく。

「どうゆうことでしょうか・・・・」

「さぁな」

 はったりだろうか。いや、俺の存在に気付いてい確信を持った目をしていた。

 ドラゴン族は闇を感じやすい性質があるのか?

 どこにいるのか完全にわかっているわけではなさそうだったが、彼女とすれ違えば気づかれるかもな。


『ここに、闇の王がいるわけありません。皆さんご安心を』

『そうです。ここは闇の王を倒す新帝エンペラーを選ぶために集まったバトラーの方々がいるのですから!』

 りまとえまが会場の混乱を避けようと口を出す。


「まだ、話は終わってないから。あと少しだけ、マイクを貸して」

 ジャンヌが手を上げて、りまとえまを止めた。


「私は新帝エンペラーになり、必ず、闇の王を倒します!」

「・・・・・彼女は強いかもしれませんが、蒼空様には敵わないですよ。まだ、蒼空様に会っていないから、蒼空様の強さがわかっていないのです」

 ヒナが不満そうに、息だけの声で呟いていた。


「そして、闇の王を倒した暁には・・・」

 ジャンヌが初めてふわっとほほ笑んだ。


「私が闇の王の花嫁になります」

「は?」

「な!!!!!!!」


 ガタン


 ヒナと結花が同時に立ち上がった。会場が動揺と興奮で沸き立っている。


『な、なぜそのようなことを?』

「私が闇の王を倒して、闇の王を思うがままにするの。もちろん、この世界を闇に落とすような真似はしないわ。ドラゴン族を守ることは変わらない、ただ、闇の王が私の花婿になるというだけ」

『えっと、配信では・・・そうですか。盛り上がって・・・ますね』

『少々お待ちください』

 えまとりまが情報処理に追われているようだった。

 耳に手を当てて、何かの指示を仰いでいるように見える。


 『ドラグーンの牙』の者たちが火を噴いていた。あいつらは、ジャンヌの意見に賛成なのか。


「ごほん、ここにいるのよね? 闇の王に呼びかけるわ」

 ジャンヌがカメラを見つめながら言う。

「私が闇の王を倒す。世界の脅威を潰すのは、ドラゴン族よ。必ず貴方を私の花婿にするから」


「すげー、さすがドラゴン族だよ」

「・・・・・・・・・」

 腕を組んで、背もたれに寄りかかる。

 ドラゴン族が何を考えているのかはわからないが、あまり関わりたくないな。



「蒼空様」

「蒼空君!」

 ヒナと結花が同時に話しかけてくる。

「けけけけ、結婚するのですか?」

「だって、蒼空様、運命の女神モイラとも・・・じゅ、重婚は認められてないですよ。そんな、結婚だなんて」

「え? 運命の女神モイラ? どうゆうことですか?」

「そう。いきなり蒼空様に結婚をするって申し込んできて。でも、蒼空様はまだ認めてませんよね?」

「落ち着けって。ここで俺の名前を呼ぶな」

「あ・・・・・・」

 はっとして周りを見渡していた。

 誰もこちらのことを気にしている奴なんていないけどな。



『えっと、そうですね。さすが、ドラゴン族の意気込みです』

『結婚とは驚きな発言が出ましたが、もし彼女が闇の王を倒したら、それもアリでしょう』

『皆さん、ジャンヌの今後の活躍に期待しましょう!』

 えまとりまが仕切り直していた。

 コメント欄は闇の王がどこにいるのかという話で盛り上がっていた。時折、ジャンヌ推しだというリスナーの応援のコメントが入っている。


 会場内はざわついたままだった。

 闇の王がここにいるというのが、全くの嘘だとは捉えられていないようだな。


「で、どうするの? ハンスは本当に、彼女と結婚しちゃうの? ま、ジャンヌはロリ顔だけどドラゴン族だから100年は生きてるし、犯罪にはならないと思うけど」

「そんなわけないだろ。ドラゴン族が政略結婚させたがってるんだよ。ほら・・・・」

 『ドラグーンの牙』のメンバーの元に戻ってきたジャンヌが誇らしげに迎えられていた。


「周囲に担ぎ上げられた、贄みたいなものだ。英雄と言われるほど強いのは確かだろうが、ドラゴン族から言われてるんだろ」

「ん・・・まぁ、言われてみれば」

「あ、あの子はハンス様のことが好きなんじゃないのですか? 好きじゃなきゃ結婚なんてできないです。もしかして、ハンス様、あの、あの・・・あのような強い子が好みなのですか?」

「・・・ヒナ、俺の話聞いてたか?」

 ヒナが目を泳がせながら、落ち着きがなくなっていた。


「ドラゴン族は闇の王と手を組んでおきたいんだろ。何らかの野望があるのかもな」

「でも・・・・・」

「ヒナは俺が負けると思ってるのか? そこまで弱いところを見せた覚えはないが・・・」

「・・・・・・・」

 ヒナが何か言いたげな表情で、口をつぐむ。


「そうです。ハンスは強いので、勝つのです。ドラゴン族の思い通りになんてならないのです!」

 結花が急にぐっとこぶしを握り締めて言う。

「でも・・・もし、万が一、万が一、万が一彼女が勝って・・・」

「ヒナさん、しっかりしてください。ハンスが負けるわけないです」

 結花がふらついているヒナを支えていた。

 ヒナは変なときに冷静さを欠くんだよな。



「いいなー、俺も次転生したらモテたいな」

「お前は転生して、今のままでそれなりに楽しんでるんだろ?」

「責任感は無いのは楽だけど、ハンスたちを見てると羨ましくなるんだよね。僕も、なんかチャンス無いかなー。モブ脱出のチャンス」

 グレンがため息交じりにいう。


「・・・・・・・・」

 ドラゴン族のジャンヌか。

 でも、どうしてドラゴン族が・・・?


 何となく、ヴァイスが今の状況を見て笑っているような感じがした。

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