表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
113/149

112 女神リテの目的

「RAID学園の生徒はみんな、このゲームに入っています。他のVRゲームに入っていた生徒も集められて・・・えっと、近未来指定都市TOKYOごと転移したので、ゲームどころじゃなくなってたのですが・・・」 

 結花が落ち着いてくると、ぽつりぽつりとRAID学園の状況を話していた。

「蒼空君が闇の王になったって聞きました。みんな一気に掌を返したように、闇の王を倒すって・・・他のゲームで蒼空君に助けられた人もいたはずなのに・・・」

「煙たく思ってたんだろうな」

「先生まで、闇の王討伐を目的とするなんて、おかしいです。みんな狂ってます」

「・・・・・」

 あまり驚きはしなかった。

 RAID学園との関わりは薄かった気がした。


「クリエイターたちはどうしてるんだ?」

「『アラヘルム』にいます。既存キャラのメンテしたり、闘技場を作ったり、プレイヤーが闇の王を倒せるように、いろいろ協力してるみたいです」

「へぇ・・・・」

「本当に大事になってるんです。このゲームにたくさんプレイヤーが入ってきて、近未来指定都市TOKYO以外からも・・・プレイヤーのギルドもどんどん増えて、みんな命懸けのこのゲームで英雄になるって」

「そうか」

 魔法陣が一区切りついたところで、後ろに手をついた。


「どうしてお前は、俺側につこうとした? 別にゲームなんて助けたり、助けられたりするのが当たり前だ。そんなに恩を感じる必要なんてないだろう?」

「私、蒼空君に憧れてたんです。えと、もし、RAID学園と蒼空君が敵対することになったら、蒼空君のほうにつきたいって思いまして・・・深い意味は無いんですけど・・・」

「ふうん」

「そうです。モニター・・・」

 呟くように言いながら、耳を触ったり、指を動かして、何度かモニターを出そうとしていた。


「やっぱりモニターが出てこないです」

「永久封印の中だからな。ここで、お前にできることは無い。もうすぐ終わるから待ってろ」

「はい・・・すみません。役に立てず」

「いや、こんなの解けるの俺くらいだ」

 結花が膝を抱えて、星を眺めていた。


 魔法陣は解けかかっていた。女神リテが命懸けで作った封印だ、もっと手こずるとは思ったんだけどな。

 別のことを目的としているか・・・。

 考えすぎだろうか。


 ブオン


「わっ」

「完成した」

 途切れていたすべての魔法陣が繋がる。結花が思わず立ち上がった。

「封印を解くぞ」

「はい!」

 両手を広げて、目を閉じる。

 深く息を吐いて、解除の文字を浮かべた。


 はじまりの・・・。







 シュンッ


 体に感覚が戻ってくる。

 眩しい光と騒がしい音が聞こえてきた。


 ワアアアァァァァァァァァァ


「ここは・・・・・」

「た・・・大変です。蒼空君・・・」

 結花が震えながら駆け寄ってくる。

 一瞬で理解した。


 『アラヘルム』の闘技場だった。大きさは死ぬ前の闘技場の何倍もあったが・・・。

 数台設置された巨大なモニターにはギルドの紹介動画が映されていた。


 魔導士、剣士、賢者、アーチャー・・・数えきれないほど、多くの者たちが集まっている。

 時折、腕慣らし程度の魔法が上がっているのが見えた。

 中には配信しながら、闘技場の様子を映している者もいるようだ。


「闘技場に来てしまいました・・・とりあえず、で、出口を探しましょう。このままだと私たちまでエントリーしなきゃいけなくなります」

「いや、このままバトルにエントリーする」

「えっ・・・」

 女神リテ・・・。

 永久封印と言っておきながら、最初から俺をここに飛ばすことが目的だったのか。


『ん、君はどこのギルドの冒険者ですか?』

「いや、ギルドには入っていない・・・」

 3Dホログラムのロボットが話しかけてきた。 

 闘技場にいたりまとえまと同じ顔の少年だった。

 フードを深々と被る。

『無所属ギルドの冒険者か。珍しいですね』

 モニターを出して、エントリーを探しているようだった。

「あの、私たち、まだエントリーしてないんです。その・・・エントリーできたと思ったのですが・・・」

『そうだったんですか。申し訳ございませんでした。実はエントリー者が多すぎて、申請が重くなってるんです』

 ロボットがモニターを動かしていた。

『今から受付をしますね。あと10分で締め切りだったので、間に合って良かったですね。少々お待ちください、接続が重いようですね・・・』

「結花・・・お前もエントリーするのか?」

「ここはバトラーしか入れないようです。今から出ようとしたら怪しまれてしまいますし、私もエントリーします」

 結花がモニター横に浮かんでいる注意事項の文字を指していた。

「あまり無理はするなよ。強いと思ったらすぐに棄権しろ」

「はい」

 びくびくしながら話していた。

「私も顔は隠さないと・・・蒼空君に迷惑がかかってしまうかもしれないので」

 指を動かして、魔導メガネを装備する。

 あまり変わらないように見えた。



 パパパパパパーン


 花火のような魔法が打ちあがった。えまとりまが闘技場の中央に現れる。


『皆さま、今日は『アラヘルム』の闘技場にお集りいただき、ありがとうございます。このゲームの審判をさせていただく、AIロボットのりまと・・・』

『えまです。他にも私の兄弟たちが、このトーナメントを円滑に進めるためのサポートをさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします』

 闘技場にいたAIロボットたちが深々と頭を下げていた。

 モニターのコメント欄が滝のように流れている。



 うおおおおおおおおおおおお


 観客の歓声が響き渡る。りまの横で、えまが周囲に手を振っていた。

『『イーグルブレスの指輪』、闘技場にはなんと、世界中、及びプレイヤーから10万人ほどのバトラーの皆様にお集りいただいております』


 拍手が沸き起こる。

 ギルドの者たちが、プレイヤーに声をかけているのが見えた。


「10万・・・そんな・・・どうしてこんな短期間で」

「思った以上か?」

「はい。正直、この世界に来ているプレイヤーは1万人くらいだと思っていたので、こんなに来てるなんて・・・それに、たぶんRAID学園の生徒もこのトーナメントに参加しています。どのくらいかはわからないのですが・・・」

 結花がモニターをつけて唖然としていた。

 『イーグルブレスの指輪』公式配信には、エントリー総数が106,102人と表示されている。



 ジジジジジジ・・・


 マイクの電子音が響く。

『改めて今回のトーナメントの目的をお伝えします。ここで選ばれる、3人の英雄には新しいエンペラーの称号が与えられます』

「!?」

 顔を上げた。エンペラーだと・・・?


新帝エンペラーには、賞金のほか、闇の王を倒すための力が与えられます。力の詳細はもちろん、ここではお伝え出来ませんが、必ずや新しい世界を築くのに役に立つでしょう』

『『イーグルブレスの指輪』の闇の王は復活してしまいましたが、これから力を合わせて、平和な世界を築き上げるのです。お集まりいただいた勇敢な戦士の皆さま、どうか、力をお貸しください』



 オオオオオオォォォォ


『知力、体力、仲間との絆、持てるすべてを動員し・・・』

『是非、このトーナメントを勝ち抜いていってください』

 腕を組んで、周囲を眺める。


 茶番だな。

 闘技場に居る者の士気が高まるのが伝わってきた。


「あ・・・・・・・」

「結花、大丈夫か?」

「え・・・私はだ、大丈夫です。でも、蒼空君、こんなことになってこ、怖くないんですか? ここにいる人たち、闇の王討伐で集まってきたんですよ」

「まぁ、俺、強いからな」

「え・・・で・・でも・・・・」

 結花が不安そうに声を震わせていた。結花を巻き込むつもりは無かったんだけどな。


 周囲を見渡す。俺が通った時間軸とはだいぶ違うようだな。

 深雪はパパとかいう奴らと、この闘技場のどこかに居ることは間違いない。勝ち上がるだろうな。

 トーナメントで当たることは、避けられないのか。


 ポケットから手袋を出してはめる。

 りまとえまが巨大なモニターを操作して、集まった有名なギルドの紹介をしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ