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104 エルフ族の祠

「死者の国?」

「あぁ、俺が作った国だ。行き場のない魂を集めている。実体は死者じゃなくても見えるようになったけどな」

 RAID学園の者も今後来る可能性もあるのだろうか。


「ソラ様は死の神でもありましからね」

「え!? 死の神って、死の神?」

「同じこと二度言うなって。キキペペ、お前らに話したことあったか?」

「テイアから聞いたでしよ」

 キキペペがごろごろ寝転がりながら、足を上げていた。


「すごい、蒼空君・・・・」

「死の神と言っても、ほとんど仕事はやっていないよ」

 立ち上がって、部屋を見渡す。


 確かに、壁際に置かれた魔法石や装飾品はエルフ族のものだろう。

 消えたエルフ族の街、か。

 せめて、テイアが起きていれば何か聞けそうだが・・・。


 深雪とテイアは眠ったままだ。ユピテルの雨はどんどん体力を奪い、気づかなかったら、あのまま死ぬところだった。

 深雪は、戦闘能力を完全に奪われてしまったようだ。

 魔力もないため、その辺のモンスターでも危険な状態になってしまう。

 幽幻戦士ゴーシェがいるとはいえ、気は抜けない状態だった。




 カタカタ カタ

 ガタッ


 洞窟の入口のほうから音が聞こえる。


「侵入者でしね」

「人間臭いでし」

 キキペペが双剣を構えた。人の気配が入ってくるのがわかった。


「天路蒼空・・・ハハ! やっぱりここにいた!」

 プレイヤーの男の高笑いが響く。


「マジか」

「ほらな、こんなところに隠れてるとは。久しぶりだな、俺のこと覚えてるか?」

「・・・・・・・・・・」

 白い歯に堀の深い目、RAID学園の高等学部2年の生徒だ。


「はははは、覚えてないか。俺たちからすると爆笑ものだったんだけどな。まだ、動画持ってるぜ」

 こいつは確か、RAID学園でのゲーム実況中に、後ろから水をかけてきた奴だったか?

 何も言わないのをいいことに、やりたい放題やって、笑っていた。

 名前は知らないが、ランクに入ったことがない。弱小プレイヤーだ。


「お前の予想通りだったな」

「こんなところに居るとはね。私たちが最初よ」

「な、あの子のあとつけておいて正解だっただろう?」

 RAID学園のプレイヤー3人が、洞窟の中に入ってきた。


「どうして? 私はちゃんと、マップを切っておいたのに」

「『アラヘルム』のギルドで情報収集していたら、中野結花を見つけたんだ。君が蒼空の熱狂的なファンだったことは知ってるからね」

「!?」

「アカウント変えたって駄目よ。そんなの私たちからすると、すぐ見つけちゃうんだから」

 釣り目の女が鼻で笑うように言う。意地の悪さが顔ににじみ出ていた。


「天路蒼空が闇の王? 笑えるね、ゲームの中でしかイキれない癖に」

「お前らはゲームの中ですら、イキれないだろうが」

「なんだと?」

 男が大剣を抜いていた。


「大河、まずは、みんなに情報を連携しないと。RAID学園に報告しようよ」

「いや、いいよ。この場で倒してからにしようぜ。こいつ、いつもギルドに所属しないし、人見下してるみたいで嫌いだったんだよな」

「そうね。ただの先生のお気に入りって感じ」

 女は魔導士か。モニターをスクロールして装備を杖に変えていた。


「え・・・大河君がそうゆうなら仕方ないけど。僕も、確かに君が嫌いだったし、何か鼻につくんだよね。成績いいからって見下してるみたいでさ」

 メガネの男がモニターを素早く切り替えて、こちらのメンバーを分析していた。

「なるほど、なるほど。弱点はわかった」

「止めて・・・私のせいで・・・こんな」

「下がってろ」



 ― 黒雷龍ジーグ ― 


 杖先から黒い電流を飛ばす。


 バッ

 ジジジジ・・・・ ジジジジジ・・・ 


「な!!!!」

 プレイヤーの3人から、モニターが消えた。

 一瞬で下に回って、深淵の剣を中央の男に突き付ける。


「っ!?!?」

「お前らランクの中でも下だろう? 弱すぎる」

「ば・・・馬鹿にしやが・・・・」

「動かないほうがいいでしよ」

「!」

 キキとペペがそれぞれ、釣り目の女とメガネの男に双剣を突き付けていた。


「た・・・大河・・・」

「桁違いだ。こんなに強いとは・・・魔導メガネをかけていても、何も見えなかった」

「梨華、直樹・・・」

「こんな弱さで、よく俺を倒そうとしたな? 馬鹿が」

「っ・・・ゲームじゃなければ」

「今は、この世界が全てなんだよ」

 RAID学園の生徒には、ゲームを甘く見ている奴が一定数居る。

 頭を使わずに、運だけで勝利できると思っている奴らだ。

 あまり、難易度の高いゲームをプレイすることがないから、突発的な動きをしてすぐに死ぬ。

 通常のゲームはすぐに生き返るから、麻痺しているのだろう。


「クソッ・・・通信さえできれば、こんな奴・・・」

「居場所を知られた以上、お前らを生かすわけにはいかない」

 

 ― 煉獄プルガトリオ― 


 剣に炎をまとわせる。

 女が身震いしながら、結花のほうを見る。

「ゆっ・・・結花、助けて。貴女はこんな残酷なこと望まないでしょ?」

「私?」

「そう。だって、私と同じギルドにいたことあったじゃない。ここで死んじゃったら、向こうでも死ぬって・・・」

「私が残酷じゃないなんて、誰が決めたのですか?」

 結花が冷たく言う。


 スッ・・・


 弓を持って、真っすぐ梨華に向けていた。

「私は残酷ですよ。蒼空君を邪魔する人は、みんな殺します。そう、決めたんです」

「!!!!」


「終わりだ。死ね」

 剣を振り下ろそうとしたときだった。



 シュッ・・・ルルルルルルルルル


「!?」

 突然、3人が煙になって消えていく。

 転移魔法か? 

 いや、違う。こいつらの名前が、死の神の本に書かれた。


「ど・・・どうして? 誰かが魔法を?」

 結花がおどおどしながら、固まっていた。

「・・・見たことない魔法でし」

「え・・・・」

 キキが低い声で周囲を睨みつける。




 ザッ



「はじめまして、こんにちは」

 女神像の前に、エルフ族の少女が立っていた。

 真っ白な柔らかいワンピースをなびかせて、赤い唇に手を当てる。


「そっちの寝ている子は、プレイヤーの子? あとはティターン神族の子ね。へぇ、天候の神もいるんだ。おかしくなっちゃってるみたいだけど」

「さっき、3人を消したのはお前か?」

「そう。この神聖な祠に、汚いプレイヤーたちに入ってほしくなかったんだもん」

 無邪気に笑う。軽やかに飛びながら、こちらに近づいてきた。

 2つに結んだたおやかな髪が波打つ。


「貴方が闇の王。噂通り、かっこいいね」

「・・・何の用だ?」

 動こうとするキキとペペを止める。

 こいつからは、何か得体のしれないものを感じた。


「変わったパーティー。いいね、いいね」

「あの・・・消したってどうゆうことですか?」

「跡形もなく、殺したってこと。だって、邪魔なんだもん」

「殺したって・・・一瞬で・・・?」

 エルフ族の少女がにやりと笑った。


「あれ? 貴女は、さっきの子たちを殺そうとしたんじゃなかったの? それとも口だけ?」

「っ・・・・・・」

「止めろ。こいつは関係ない」

 結花の腕を引っ張って後ろにやる。びくっとして、弓矢を落としそうになっていた。


「ねぇ、怖がってるの?」

 少女がラピスラズリのような瞳でこちらを覗き込んだ。ふと、花の匂いが香る。


「・・・怖がってる? 俺が?」

「ふふ、私に嘘はつけない。だって心が読めるんだもの」

「・・・・・・・・・・・」

「やっぱりそうだったのね。へぇ、その子が・・・・面白いものを持ってるのね。さすが闇の王。あ、混沌から生まれた、冥界の王? ま、どっちでもいいか」

 深雪のほうに視線を向けて、笑っていた。


「消えちゃった・・・RAID学園の生徒が・・・」

 結花が唇を震わせながら、誰もいなくなった場所を見つめている。ぐっと手を握りしめていた。

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