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第67話 次の標的はお前だ!狙われたメリクリ(3)

 

 森の中にある氷像をどんどん割っていくゲール。だが、いくら破壊してもメリクリが現れる事はなく、本人もイラついていた。


「いつになったら出てくるんだよ!!」

「僕はここにいるよ」

「!?」


 突如背後から現れて、氷の剣を振りかざした。ゲールは背後の攻撃にすぐさま対応して、爪で反撃を繰り出した。爪と氷の剣との鍔迫り合いが発生した。だが、二人とも笑っているが、お互いにいやらしく笑っていた。


「オラの爪がそんな氷如きに」

「氷って簡単に割れるけど、凍らせれば何度でも蘇るんでね!」

「ケッ!ならオラの爪が何度でも引っ掻いて砕いてやるぅ!」


 爪は氷を砕き、そのままの勢いでメリクリの顔へ貫いた。何か硬いものを貫く音が響き、貫いた顔からは血ではなく、氷の破片が落ち、崩れ去った。


「ま、また!!」

「僕の技は変幻自在だよ。簡単には見破れないよ」


 ゲールの背後からメリクリが木から飛び降り、氷の剣を振りかざした。だが、簡単に避けられて、爪で反撃の一撃が繰り出されたが、メリクリは再び液状化して姿を消した。

 すぐに背後から現れて、ゲールの背中を蹴り飛ばした。倒れたゲールはメリクリの顔へと爪を向けた。


「……!?」


 突如、爪が発射された。メリクリは氷の剣で爪を弾き飛ばし、周りの木に突き刺さった。再びゲールを見ると、その場から消えていた。

 メリクリは背後から気配を感じ、足元に垂れている水で氷の壁を形成して、盾としてゲールの爪攻撃を防いだ。


「ちぃ!!」


 そして氷の壁は溶け、ゲールの足元に残っている水が、蛇のようにクネクネと身体をよじ登って手と腰を巻いた。

 必死に離そうとするが、キツく巻きついていた。そして体勢を崩して倒れたゲールの前にメリクリが姿を現した。


「やぁ久しぶりだね」

「な、何をしたんだ!?」


 ゆっくりと近づき、ゲールの顎を撫でた。そして甘い言葉で囁いた。


「さぁ、君のことを教えてもらおうか?」

「お、オラは教えないぞ!骸帝様を裏切る気はないぞ!!」

「骸帝への忠誠心が高いのはいいけど、僕は聞きたいだけなんだよ」

 

 締め付けが更に強まり、ミシミシと骨から音が鳴り出した。


「ぐががが……!ぐがっ!」

「少しでも情報をくれればいい。そしたら多分倒さないから」

「ぐぅ」

「教えてくれないのなら……」


 メリクリはゆっくりと本物の剣と変わらない精度の氷の剣をゲールの首元に近づけた。焦りを見せるゲール。慌てて弱々しい声をあげた。


「ちょっ!待ってくれ!!オラは凰姫っていう女に操られてるだけだぞ!」

「凰姫?」

「あぁ、凰姫だ、お・う・き!!」

「ほぉう……詳しく聞こうか……」


 *


 CityTOKYO。保安局TOKYO支部屋上で女性隊員定岡と渋い顔の男性隊員片桐が街を眺めていた。何かに黄昏ているわけでもなく、ただ呆然としている。そんな中、定岡はポツリと片桐に呟いた。


「……最近のプレイヤー狩り事件についてどう思いますか?」

「以前起きたシーカーというプレイヤーが謎のフィールドに閉じ込められた事件と違いな」

「え?」

「フィールドから閉じ込められ、謎なプレイヤーに襲撃された。今回のプレイヤー狩り事件の被害者も同じだ。謎のプレイヤーに襲われた。全員が言っていた。仮面の男に襲撃されたと……」

「まさか……それって」

「あぁ、そのまさかだ。数時間前、廃ビルフィールドでまた強制ログアウト現象が発生した。だが、二人だけ無事だった奴がいた」


 そう言うと定岡は食いつくように聞き返した。


「まさか、シーカー!?」

「ご名答。更にもう一人プレイヤーがいた。アルという女性プレイヤーのようだ」


 アルと聞いた瞬間、定岡は耳を疑うようにまた聞き返した。


「アルってまさか、あのアイドルの!?」

「あぁん?俺はあんまりそうゆうのは知らないが、シーカーがライブに乱入した時のアイドルって事か」

「今をときめくスーパーアイドルですよ!でも、何でシーカーが……」


 アルがアイドルであろうともなかろうとも別にどうでもいい片桐は話を切り捨てるように話題を戻した。


「まぁ、そんな事はどうでもいい。こんな偶然があると思うか?一度ならず、二度までも……よっぽど運が悪いのか、それとも意図的にシーカーを呼んでいるのか」

「つまりプレイヤー狩りはシーカーを狙っているって訳ですか?」

「そうかもしれないし、単に強いプレイヤーだから狙われている。どちらにせよ、まだシーカーを調べる理由は出来たな」

「ん?片桐さんもシーカーが気になって来ました?」


 少しばかり微笑みながら言う定岡。片桐は馬鹿言うなと言わんばかりに定岡の額にデコピンを打ち、定岡は地味に痛いデコピンに額を抑えてその場にしゃがみ込んだ。


「痛ててぇ!!何をするんですか片桐さん!」

「俺はあのガキが気になるんじゃない。奴を引き寄せる原因が気になるんだ。運営にもこの現象についての解明は出来ていない。色々な障害が検査や修正を邪魔をしている。仮面の男との接触で唯一生還した奴だ。これ以上の収穫があると思うか」


 定岡は額を抑えながら立ち上がった。そして痛みからの涙目で返事をした。


「……たしかに貴重な情報を持っていそうですけど、また探すんですか……」

「もちろんだ。我々の仕事を忘れたか。この世界の平和を守る……だろ」

「はい……」


 片桐は定岡の頭を軽く叩いて、屋上から出て行った。


「なら、近々奴の元に行くぞ」

「はい!」

「なら、仕事だ。もっとプレイヤー狩りの情報を集めるぞ」


 その真剣な表情と声を。それに感銘を受け、追いかけるようについて行った。



 *


 メリクリはゲールから色々と聞き出していた。凰姫の存在、仮面の男との関係、骸帝の事はあまり知らないだの、多少の情報を得た。本人は焦りの汗を大量に流しながら答えていた。

 メリクリはその顔を見てニヤリと見下すように笑っていた。


「情報はそれだけかい?」

「そうだよ!嘘偽りなく本当だよ!!」

「本当は殺したい所だが、今日は帰っていいよ」


 メリクリは水の蛇を解き放ち、ゲールを解放させた。


「くっ……」


 悔しそうな表情を浮かべ、メリクリに爪を立てるが、ジリジリと後ろへと下がっていく。そして木の上にジャンプし、枝に捕まった。


「ちっ!お、覚えておけ!オラが絶対を倒す!!」

「なら、凰姫とやらと骸帝に伝えてもらおう。僕は絶対に君らの野望を食い止めると……な」

「くぅ……」


 そしてゲールは逃げるようにフィールドから消えて行った。それを確認し、空を見上げた。


「まだまだ敵は多くいるみたいだね……」


 一人で呟いてフィールドから消え去った。

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