第68話 意外な標的達
あれから1日が経ち、Syoはメリクリからゲールに襲われた事を告げた。そして凰姫の存在など、1日で多くの情報が耳に入り、一人情報整理をしていた。
「メリクリやシーカーが狙われたか……敵は骸帝と凰姫。どちらも力は未知数……手下らしきゲールと名乗る敵、そしてシーカーとアルちゃんを襲った大男。段々と敵の脅威が近づいているなぁ……」
「一人で考えに耽るのはいいけど、僕達がここにきた訳って?」
「私の武器の素材集めのためよ」
洞窟の中を歩く三人。Syo・マッキー・そして新参者の新新がヘッドライトを照らしながら奥へと進んでいる。コウモリが天井に引っ付いており、三人を敵と見なしているのか、睨みつけていた。鼻をつまむ新新がメサで色々と調べているSyoに聞く。
「なぁ、本当にあるんだろうな。その弾の素材が」
「あるからここにいるんだよ。この奥に行けば、特殊な毒葉がある。撃てば傷口から毒が侵食して、敵もイチコロさ。普通の毒とは格段に違う。毒薬の効力をも上回る力がある」
「コウモリも多いし、フンの匂いがキツイしよ……」
「匂いに惑わされるなって。綺麗なお花畑を想像しながら歩け」
マッキーは列の一番後ろに歩いている。すると首に何やらヒンヤリとして感触を感じた。背筋が凍りつき、恐る恐る確認すると、そこには大型のヒルが首に巻きついていた。
「あっ……あっ……あぁ──」
「黙れ!」
新新が叫ぼうとしたマッキーの口を押さえつけて、ナイフをチラつかせた。
「大声出すと、コウモリ達が騒ぎ出して、ややこしくなる。黙れ」
「んん……」
新新は首に巻きついているヒルを、そっとナイフと剥がして、手掴みで投げ捨てた。
「よく、流れるね」
「ゲームの中だからよ」
「……」
何か腑に落ちないマッキーだが、その勇ましく歩く新新の真後ろについて行った。そんな中、Syoはマッキーの気をそらすために呟いた。
「ところでマッキー、あの武器の完成具合は?」
「あれか?まだまだ完成とはいかないがそこそこは完成。実戦にももう少し調整が必要かな」
あれ、に気になる新新も会話に混ざった。
「あれって?」
「最高の武器だ。骸帝とやらも吹き飛ばせるロ──」
「しっ」
突如新新の目が鋭く変わり、何か気配を感じ取り、動きを止めた。そして懐に隠してある拳銃へ手を伸ばし、小声で二人に語りかけた。
「何かいる……」
「え?」
「何か気配を感じる……それも近くに」
「あぁ?」
二人は全く気配に気づいておらず、周りをライトで照らした。Syoがふと天井を照らした。そこには超大型のコウモリが背中を向けていた。明らかに周りのコウモリとは桁違いの大きさをしており、Syoはそのコウモリを指差した。
「新新が言ってたのって、あの大型コウモリの事?」
「……多分そう」
新新がそのコウモリに銃を向けた。その瞬間、大型コウモリの目が光り始め、羽が広がった。その正体はコウモリ型のマントを羽織った人間だった。更にマントの中に光り輝く二つの刀が見えた。
「に、人間!?」
「くっ!」
新新はコウモリ人間から殺気を感じ取った。咄嗟にコウモリ人間に向かって拳銃を放った。コウモリ人間は攻撃を即座に避け、三人の方へと滑空し刀を取り出した。
「ちぃ!!」
更に銃撃を加えるが、刀で防ぎ、洞窟の奥へと逃げていった。更に発砲音にコウモリ達は驚き、一斉に洞窟の外へと逃げた。逃げて行くコウモリに三人の視界が閉ざされた。
マッキーは一人手を振り回して、子供のように叫んでいた。
「うぎゃぁぁぁ!!」
Syoと新新はコウモリ人間を必死に探していた。
「くっ!何だ!?」
「奴はあたしらを狙っている!」
「狙っている!?誰だ?」
コウモリ達が妨害する中、新新は飛んでいるコウモリ人間へと銃を撃ちまくる。だが、銃弾はコウモリたちに当たり、コウモリ人間には掠りもしなかった。
「コウモリどもが邪魔で──」
「兎にも角にもここから脱出を──って何!?」
マッキーがメサで脱出しようとすると、メサは何も反応しなかった。その瞬間、シーカーやメリクリ達の話をふと思い出して、冷や汗が流れ、顔が青ざめてきた。
「これってまさか……」
Syoは苦笑いしながら、二人に言った。
「俺たちが標的って訳だね……」
「うそぉぉぉ!?」
怯えるマッキーは逃げるように洞窟の外へと向かう。だが、いきなり、空から巨大な岩が落ちてきて、出口を防いだ。
「で、出口が!?」
出口とは逆に口は開けっ放しになり怯えるマッキー。新新とSyoは冷静に敵の動きを見ていた。Syoも拳銃を取り出した。
「俺たちが狙われるなんてね……有名人にでもなった気分だよ」
「プレイヤー狩りとは言え、負ければ終わるのよ。気を引き締めなさいよ」
「分かってるよ」
二人は銃を構えながら奥へと向かう。ヘッドライトから映し出されるのは、冷たくて臭い洞窟。音もなく、水が滴り落ちる音と、後ろから弱々しい声で怯えているマッキーの声だけだった。そんなマッキーにSyoがキレた。
「ひぃ……ひぃ……」
「うるせぇんだよ!こんにゃろ!コウモリ野郎にやられたくなかったら塞がった入口のところにいればいいだろ!」
「だって、暗いの苦手なのよ僕……」
「あぁぁぁう!もう!」
頼りないマッキーを見捨てて、奥へと突っ走る新新。Syoも行こうとすると、マッキーが足を両手で掴みかかり、歩くのを妨害してきた。
「お前、離せ!!」
「いやぁぁぁ!!」
まさにお荷物である。
新新だけは、マッキーとSyoのやり取りを極力耳に入れないように、一人先に歩いて真剣を尖らせた。
水滴が一滴地面に落ちた。その瞬間、弱い風を感じ、何かが急激に近づいてきた。咄嗟にライトを照らすと二つの刀を取り出したコウモリ人間が襲撃してきた。
新新は顔に目掛けて銃撃をするも、体を横に回転させて綺麗に刀で弾を切り裂いた。新新の真上を通過し、背後に着地して一気に迫って来た。
「くそっ!」
すぐに弾を入れ替えて、銃撃するも巧みに攻撃を避けられた。すぐに懐に銃をしまい、ナイフを取り出した。
刀を振りかざし、素早い攻撃を仕掛けて来た。短いナイフで顔面すれすれで受け止めた。コウモリ人間は決して力強い訳でなかった。新新にでも、十分に受け止めれるほどであった。だが、もう片方の刀で追撃。受け止めている刀を弾き、しゃがみ込んで攻撃を避けた。髪が少しだけ切れたが怪我はなかった。
その隙を見せ、銃を取り出してコウモリ人間へと向けた。
「大人しく降参して、あたしらをここから解放しなさい」
そしてコウモリ人間背後からも銃撃音に気づき、マッキーを引き連れたSyoが銃を構えて澄ました顔で現れた。決め台詞のように声を変えて言い放った。
「さぁ……あんたの狙いを──」
「ひぃ!!やられる!!」
「うるせぇよ!」
カッコよく言おうと思った矢先、大失敗に終わり面目丸つぶれであった。




