第43話 狙われしアイドル(2)
「まずはこのビルにいる全員に検査を行う‼︎ビルのオーナーに会おう‼︎」
善は急げと、さっそくSyoは行動を起こし、アル達を連れて、オーナーの部屋へと向かった。
するとマネージャーはSyoに耳打ちをした。
「オーナー結構凄い人ですよ……気をつけて下さいね」
「どんな凄いやつだろうと、俺はアルちゃんの為、火の中、水の中、草の中、森の中だろうと行きますよ‼︎レッツゴー‼︎」
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「……」
引きつった顔をするSyo。その前に聳え立つのは……
「いや〜わざわざアルちゃんがボディーガードまで連れてくるとは、いやはや恐れ入りましたぁ」
この綺麗な角刈りをしたやたら筋肉質な両手をこすり合せる男。スーツ越しだが、その筋肉のつき方がよく分かるほどだった。これがこのビルのオーナーである、マクラウドさんだ。
そしてこのマクラウドの後ろにいる、筋肉質の塊と言える黒服サングラスのマッチョが2人、無表情で立っていた。立っているだけなのに異常な程の威圧感を醸し出している。
それにこの金色に輝く部屋。金色の椅子と机、そしてマクラウドさんの全金歯。全てが金の部屋であった。
マクラウドさんはアルちゃんで大ファンであり、わざわざ自分からこのライブを持ちかけたのだ。
「ボディーガードなら私が手配したのに」
「い、いやぁ……これは私の友……」
「私のボディーガードは世界1‼︎絶対にアルちゃんを守ってみせますよ‼︎」
マクラウドは世界的に有名な金属などを取り扱う企業であり、このゲーム内の街中に多くの広告が貼られているほどである。
そんなムキムキなマクラウドを見たSyoは軽くビビり、もうアンタがボディーガードしろよと思う中、所詮はゲームの中だと言い聞かせて、堂々と接した。
「ま、マクラウドさん」
「何だい?ボディーガード君」
「実はお、お話が……」
Syoはマクラウドに今回の事を全て話した。
「なぁ〜にぃ〜⁉︎このビルに侵入者が‼︎」
頭に血管を浮き出して、慌ててマクラウドは椅子に座り、パソコンを弄り始めた。その間、Syoは部屋に何か監視カメラなどをないか調べ始めた。金の植木鉢の中や部屋の隅など、調べたがなかった。
「う〜ん……」
「このパソコンにはこのビル内にいる全アバターがある‼︎それをここで調べる‼︎」
パソコンからは多くのデータが現れようとロードを始めた。すると、Syoはマクラウドのスーツに着目した。
「⁉︎マクラウドさん‼データの︎ロードを今すぐ中止にして下さい‼︎」
「ど、どうゆう事だね⁉︎」
とりあえずマクラウドはSyoが言うようにロードを一時的に中断した。
「ちょっと失礼します……」
「な、何を……」
近くSyoにボディーガード達は警戒するが、マクラウドは手で"大丈夫"だと合図して引き下がった。
そしてSyoはマクラウドの胸ポケットを確認した。すると米粒ほどの大きさをした超小型カメラが仕掛けてあった。
全員が驚き、Syoはそれを取り思いっきり潰した。マクラウドは驚き、腰を抜かした。
「……こ、こんな物が……いつの間に……」
そしてSyoはこの状況を端的に推測した。
「多分、最近貴方に付けたのでしょう、小型の監視カメラを」
「で、でも私の近くにいるのは、秘書かボディーガードの2人だけだった……」
「多分その内の誰かが、ハッキングされて一時的に操られていた可能性がある」
「だが、この会社の社員全員にはハッキング対策ソフトをインストールしたはずだ‼︎そんな事が……」
「もし相手がそのソフトを超える技術を持っていたら……」
「……」
マクラウドは黙り込んだ。そしてSyoは更に推理をした。
「多分、その犯人はこの会話も聞いているはずだ……」
「何⁉︎」
「そこでこの俺が作ったアイテムをご紹介しよう‼︎盗聴・盗撮対策機"Jet2"を‼︎」
「Jet2⁉︎」
このまるでひと昔前の折りたためない携帯のような装置。それに全員が驚き、そして思った。一体何の装置なのかと……
誰も聞きもしないが、Syoは意気揚々と説明を始めた。
「このJet2は、俺が開発した装置の1つであり、この探知機を発動しておけば、敵の装置の居場所を見つける事が出来る‼︎」
それにシーカーがツッコむ。
「いつの間にそんなの作ってたんだよ……」
「こっそりとね……ではこのJet2の威力をご覧あれ‼︎ホイ‼︎」
そして全員が見守る中、Syoはボタンに強めに押した。
すると、Jet2からサイレンのような激しく、耳に響く嫌な音が部屋全体に響き渡った。
全員苦しそうに耳を閉じ、シーカーが叫びながらSyoに言う。
「おい‼︎何だこの音‼︎Syo答えろ‼︎」
「こ、これはーー」
「な、何だって⁉︎」
「だ、か、ら‼︎ーー」
「何ぃ⁉︎」
「ーーって言ってんだろ‼︎」
あまりにも巨大な音に何を言って何を伝えたいのか、全く聞こえなかった。Syoはすぐにボタンを押して音を中断した。
全員が怒りの目をSyoに向ける中、Syo自身は絶望的な顔をして、下に俯いていた。
「はぁ……なんて事だ」
「なんて事だ、じゃねーよ‼︎それ欠陥品じゃないのか‼︎」
「ち、違う‼︎この音は……この機械はビルに仕掛けられている盗聴器や盗撮カメラの量を音に表している……普通はもっと少ない、だが、この音は異常だ。100、いや1000個はあるかも知れない……」
全員がこの事実に静まり返った。だが、Syoは突如ニヤリと笑った。
「俺の腕が立つぜ……ライブまでは1時間あるな……」
「お、おい‼︎」
Syoはメサを操作して何処かへと消えていった。




