第24話 謎の青年の実力
デビットは軽くステップを刻みながら掛け声と共に少し体を屈めて、ファイティングポーズのまま、青年へと向かって行く。歴戦のボグサーの素早さは予想以上に早く、10m以上も離れている青年の元へとすぐに距離を縮めた。
シーカーやSyoもこの勝負を真剣に見ていた。
「流石プロボグサーだ。ゲームの中とは言え、あのスピードを出せるとは……」
「あの青年勝てるのか?」
「さぁな」
依然として動かず、ただデビットが近づくのを見ている青年、そして目の前にたどり着いたデビットは青年の顔をへと素早い右ストレートを仕掛ける。
「大人気ないけど、youにはここで倒されてもらいます‼︎year‼︎」
顔面一歩手前にパンチが来た瞬間、青年はニヤリと笑い、軽く顔を振りパンチを避けた。
「No⁉︎私のマッハパンチを避けるとは⁉︎」
だが、ここで諦めるデビットではない。更に追撃するように左手でまた顔面にストレートを仕掛ける。だが青年は、再びぬるりと顔を軽く振りパンチを避けた。
「sit‼︎」
デビットは自慢のマッハパンチが軽々と2発も避けられ、悔しそうな顔をする。少しイラつきを覚え、ムキになって青年の顔に無数のジャブを仕掛けた。猛スピードで繰り広げたジャブは残像が見えるほど早く、他人から見れば、左右から襲いかかるパンチは避けれるのはほぼ不可能に等しかった。
でも青年も負けてはいなかった。その場から動かず、残像が見えるほどの連続のジャブ1発1発確実に全部はっきりと残像が見えるほどのスピードで避けた。
「早い⁉︎」
「デビットのマッハパンチをすべて……」
このあまりにも完璧な避けにデビット自身も驚いていた。
「(No⁉︎私のマッハパンチがこんなBOYに避けられるなんて⁉︎)」
青年へのパンチに意識が完全に向かっており、足の方はお留守になっていた。それを分かっている青年は避けながら、デビットの足を軽く払った。
「⁉︎」
足を払われ、何が起きたか分からないデビットは更に打とうとしたパンチは届かず、そのまま情けなく地面に膝を着いた。
デビットが上を見上げると青年は見下すように微笑んだ。
「これはボクシングじゃないですよ……蹴りは無しではないですね?」
「ふっ……BOY‼︎調子に乗らない方が良いネ‼︎」
膝を着いた状態からの不意打ちにも近い直線的なストレートを仕掛けたデビット。パンチはそのまま青年の顔に……
「……」
「⁉︎WHY⁉︎」
パンチは顔面ギリギリで青年の手によって受け止められていた。しかも異常な程力強い拳により、デビットでもいくら引っ張っても青年の手からグローブを離す事は出来ない。寧ろ青年の方は余裕の表情だ。
「No⁉︎なんて言うpower‼︎」
「あ、すいません。強すぎました?」
「ShutUP‼︎力強いだけがボクシングじゃなっsing‼︎」
「そうかな?」
青年はそっと手を離し、右足をボールを蹴るように膝を着いているデビットの腹を蹴飛ばした。何mも飛んだ。だが、そこは世界ボクサー、何とか受け身を取り地面に着地した。
「グッ……‼︎」
「流石ボクサー、腹の部分は鍛えているようですね」
「ふんっ‼︎」
身体中から焦りの汗が流れ、完全に余裕のあった顔は消えているデビット。そしてファイティングポーズを取り、一気にステップを取りながら迫り来る。
そして先程より素早く、そして鋭いアッパーを青年へと仕掛ける。
「(このジャイアントアッパーは誰も避けた事はありません‼︎youにはここでknockoutしてもらいます‼︎)」
風邪を切るようなアッパーを青年の顎へと振り上げた。砂浜に波打ちの音とアッパーを振り上げた音が響き渡った。
「……⁉︎」
決まり顔をしていたデビットだが、いざ青年を見上げるとそこにはもう青年はいなかった。
シーカーとSyoは今の光景を見て驚いた。その場から消えた青年はデビットの背後に立っていた。
「いつの間に⁉︎」
背後に人の気配を感じ、振り返ろうとするデビット。だが、その時にはもう遅かった。振り返ろうとした瞬間、青年の手刀が首を攻撃し、デビットは崩れ去るようにその場に倒れ、気絶した。
気絶してデビットを青年は担ぎ、そのままデビットが乗って来た馬に服と一緒に乗せて頭を撫でてから軽く尻を叩いた。馬はそのままゆっくりと歩き出し、砂浜から立ち去って行った。
「さぁシーカーさん……戦ってくれますよね?それともここからあの馬のように尻尾を巻いて逃げますか?
呆気にとられているシーカーとSyoの元へと悪魔的な笑みを浮かべ、挑発しながら迫ってくる。あの実在するプロボクサーのパンチをすべて避け、アッパーもストレートも完全に避けていた。Syoはこの青年の中には別のプロボクサーが入っているんじゃないかと思ってしまうほどに。
それにシーカーの腕の刻印が一向に収まる気配もなく、寧ろ近づいてくる青年に更に鼓動が増してくる。
するとシーカーは突如、目の前の地面に刺さっているモリを抜き、それを槍投げ選手のように綺麗なフォームを描き、青年向けて投げた。モリは歩いてくる青年の足元に刺さった。シーカーの顔を伺うと、こっちもまた悪魔的な笑みを浮かべていた。どこか少年のような目の奥からキラキラした何かが見えてくるような感覚だった。そしてシーカーは青年の顔を睨みつけながら言い放つ。
「その挑戦やるしかねぇな‼︎」
「ふっ、そうこなくっちゃ」
この青年は一体何のなのか?
だが1つだけ言える事……それは強い、事である。




