表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
450/452

第十五話 調査2日目

 ヴィクトル・スゴーの固有魔法(スキル)どおり、その夜は何ごともなく明けた。


「騎士団長の固有魔法(スキル)はさすがだな」

 『危険』を察知することのできる固有魔法(スキル)は貴重だ。

 そのため、国家事業とも言えるこの予備調査飛行に、重鎮の一角を務める近衛騎士団長ヴィクトル・スゴーが参加しているわけである。

 国も、この探検行に大きな期待を寄せているという証拠である。


「ハルト、体調はどうだい?」

「うん、ちゃんと寝られたから大丈夫だ」

 分割したとはいえ十分な睡眠時間を確保できたため、操縦士たちのコンディションはまずまずである。

 なにしろ王都でも、飛行場で、ではあるが『ヴァイエ』の中で寝る訓練も行ってきているのである。

 そのため、ハルトヴィヒもレイモンも、またアンリもシャルルも、十分な休息を取ることができていた。

 予定した時間どおりに朝食……乾パンと甘いホットミルク……を摂る。

 そしてこれも予定どおり、午前6時、出発である。


 まず『ヴァイエ1』が、1分遅れて『ヴァイエ2』が発進した。

 2機は再び北を目指す。

 空は晴れている。

 東の地平線から昇ってくる太陽が北の山々を照らした。

「なんというか、荘厳な眺めだな……」

 たなびく雲が茜色に染まり、太陽の光が山々を赤く染める。

 冷たいはずの雪が薄紅色に染まるひととき。『モルゲンロート』である。

 太陽が昇るにつれ、茜色は橙色となり、金色へと変化する。

 雪山が元の白さを取り戻したのは午前7時頃。


 そして一行の前には、もう立ちはだかる山々はなかった。

 すべてが機体よりも低い位置にある。

 今、『ヴァイエ1』と『ヴァイエ2』は、広々とした高原の上を飛んでいた。

 眼下には険しさを減じた山々が連なっており、ところどころには湖や草原らしき場所も見える。


「あの山も雪を被ってはいるが、それは北へ来たからで、標高は3000メートルを切ったぞ」

「ついに北の山を越えたんだな!」

「そういうことになるな」

「おめでとう!」

「やったな!」

 ハルトヴィヒは操縦桿を握っているので握手もハイタッチもできない。アキラは言葉だけで喜びを分かち合う。

 とはいえ、まだ人の営みの痕跡は見えなかった……。


*   *   *


 『ヴァイエ2』でも同様に喜び合っていた。

「これで今回の調査飛行は半ば成功だな」

 近衛騎士団長ヴィクトル・スゴーもいかつい顔をほころばせていた。


「あとは、どこまで飛ぶか、だな」

 計画としては、午前9時に引き返すことになっている。

 帰路は地図の作成をする必要がないので、速度を3割増しにできるため、夕方までには帰還できるはずなのだ。

 それ以上遅くなると夜になってしまうため、危険度が増す。

 もっとも、ハルトヴィヒたちは夜間の飛行訓練も行ってはいるが、リスクは避けるに越したことはない。


 今も、目視と手描きによる地図は作成中である。

 目印にしやすいのは山もそうだが、湖や川も特徴的なものがあればそれを使える。

 というよりも、山が低くなりつつあるため、目印としては湖の形を記録していくことになる。

「あの湖はデカいし、真ん丸だな。目印になるかもしれない」

「アキラ、右手前方に赤い岩肌の山があるぞ。あれも目印になるんじゃないか?」

「ああ、いい目印だな」

 水の量によって形が変わってしまう湖よりも山のほうが目印としては有効だ。

 ただ雪が降って赤い岩肌が隠れてしまうと意味がないが……。


「あの山はどうだ? それほど高くはないが、きれいな円錐形をしているぞ」

「ああ、本当だな……多分『成層火山』だ」

 成層火山とは、度重なる噴火により、溶岩・火山灰・火山礫などが円錐状に積み重なったものである。

 ほぼ円錐状で、日本では富士山・後方羊蹄山シリベシ・鳥海山・浅間山などがそれである。


「あっちには煙を噴いている山がある。あれも目印になるだろう?」

 こちらへ来ると活火山も幾つか見られるようだ。

 おかげで目印にはこと欠かない。


 時刻は午前8時を回ったところ。あと1時間弱で、どこまで行けるか……。


*   *   *


 『ヴァイエ2』でも、眼下の景色の変化を地図に落とし込んでいる。


「あと1時間で見通しは立つであろうかな……」

 近衛騎士団長ヴィクトル・スゴーは、この調査飛行の終わりを感じ取っていた。

 ここまで来れば、今回入手できる情報はほぼ手に入ったといえる。

 残るはもう1箇所、中間着陸できる場所が見つかるとさらによい。

 そして、得た情報を持ち帰ること、これは必須である。

 ゆえに危険は冒せない。

 これまで以上に注意深く、地上を観察するヴィクトル・スゴーであった。


*   *   *


 午前8時半。

「アキラ殿、あそこに見える平地はどうでしょう?」

 副操縦士のレイモンがアキラを呼んだ。

「あそこか……よさそうだな。中間基地の候補になりそうだ」


 小さな湖があり、その周りは広い砂の平原に見える。

 おそらくここも、雪解け水の有無で水位を大きく変えるのだろうと思われた。

「『ヴァイエ2』でも見つけているだろうから、確認してみるか」


 ということで、取り決めたコードを発信する。

 『5』(・・・・・)『高度落とせ』である。

 これだけで、あの場所を見てみようという意志は伝わるだろう。

 そして反対なら赤色の点滅信号が返ってくるはずだ。


*   *   *


 返ってきた信号は、『了解』を意味する緑の点滅信号だった。

「よしハルト、高度を落としていこう。よさそうな場所だったら着陸だ」

「了解」


 まず『ヴァイエ1』が高度を落とし、『ヴァイエ2』がそれに続く。

 2機は、眼下に広がる平原へと降下していった……。

 お読みいただきありがとうございます。


 次回更新は2026年4月4日(土)10:00の予定です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
3月28日はシルクロードの日!! >>ヴィクトル・スゴーの固有魔法どおり、その夜は何ごともなく明けた。 つまり、危険を、全部、避けることに、成功した、と。 >>国も、この探検行に大きな期待を寄せ…
今回の調査飛行は山越えが可能だったって成果だけでも十分ですからねー 次は今回のルートでもっと先に行く事を見据えた計画を練りたいですねえ
>>その夜は何ごともなく明けた 仁「凄~い」 56「棒読み・・・・」 明「滑るって分かっているのに・・・」 >>甘いホットミルク 腐「!」 >>茜色に染ま 仁「・・・・・坂?」 56「ほう・・・・…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ