68話 常識外れは罪となる
よろしくお願いします。
「と、言うことなのですが.....」
食事室へと戻るなりフィルスは町長であるサクリに事情を説明する。その間、サティウスとカースト、クロには見えているハルナは雑談の和に入っていた。流石にこればかりはノンシーに目視させることは出来ないのでノンシーには我慢してもらっている。
「成る程....もう少し、詳しい場所の風景をお聞かせ願えるかな?」
「えぇ、それは勿論。」
あらかじめハルナに聞いていた場所の風景によると大きな大木が生えて、そこ以外は全てまっ平らな草原.....変わってると言えば大木の近くに腰掛けに丁度良い程の岩があったくらいだという。そう伝えると町長は少し考えるように目を瞑り思案顔で顎に手を当て、暫しの沈黙が訪れる。
〈そんなに難しい事かな?.....平原しか無かったのならパッと思い浮かびそうだけど.....〉
[フィルスよ。夕食とデザートの礼だ。少し町長とやらの気持ちを教えてやろう。この者、なかなかに罪深い。しかもそれを自分でも分かっていて、後悔しておる.....あやつが悩んでいるのは『場所』ではない。話すべきか話さないべきか悩んでいるのだ。]
〈っ!?そ、そんな.....い、一体、サクリさんが何をしたって言うんですか.....?〉
[残念じゃな。こればかりは教えられん。罪を見つけるのはお主自身でやり遂げてみせよ。ワシはそろそろ神界へ帰らねばならない.....それに、これはあくまでお礼じゃ。本来、創造神とは生み出したもの全てに平等でなければならない。許せ我が愛しき子よ。]
〈.....分かりました。やってみます。〉
フィルスは少し受け入れ難い事実に戸惑いながらも町長が過ちを犯しているのなら止めねばならない。多分、それは町長も望んでいると思うから.....
「.....すまぬ、ワシはこの町を創ったのだが、何も初めからこの町の作業を手伝っていたわけではないのでな。すまないが.....」
「い、いえいえいえ!それなら仕方がないですから。自分達で探してみます。協力していただき、ありがとうございました。」
「ワシも出来るだけ手伝おうと思っておる。何か気になることがあれば何時でも聞きにきておくれ。」
〈.....カースト様.....〉
[用件は分かっておるが.....なんじゃ?]
フィルスは笑顔で町長にお礼を言いながら暗い声でカーストに話しかける。流石は創造神.....フィルスが何を言おうとしているのか分かっていたが、本人の口から聞きたいようで聞き返してくる。
〈.....やっぱり、まだ町長が過ちを犯しているなんて信じられません。〉
[そうじゃろな。じゃが、人には表裏と言うものが存在する。表は笑ってても裏で悲しげな声を出すお主のようにな.....それを含まえてもの申せ.....なんじゃ?]
いつにも増して冷たいカーストの言葉には威圧感を感じるが同時に何か期待しているようであった。そんな期待に応えられるかどうかは分からないが、自分の意見をいってみる。
〈でも、僕はその裏を知りません。誰でも貴方のように心を見透かして生きていけるわけではありません.....現にこうやって僕は取り繕った笑顔で町長と向き合うことしかできません.....本当に自分が情けない.....ですが!どうしても町長の罪を暴いて罪悪感を少しでも取り除いてあげたい!お願いです!!僕に力を貸してください!〉
犯人の気持ちなんて分かりたくない.....本当にそうだろうか?違う。そんなものは知ろうと思っても知ることが出来ない自分への言い訳だ。誰だって不安や苦しみや孤独や寂しさを抱えて生きている。その中で少し脱線してしまった者を罪と人は呼ぶ。常識はずれだと蔑む....そうなれば被疑者や被告人と呼ばれ完全な『法律上』での罪となる。
それを気づかれず生きるって言うのは罪悪感に苛まれる毎日だ。魘され、不安に襲われ、気づけば独り....社会が産み出したもう1つの罰だ。そんな罰を町長は今、受けている事だろう。それを少しでも償うため.....もしかしたらそんな思いで建築などに携わっているのかもしれない。
フィルスのその願いは言うなれば被疑者に味方したと同意。そんなもの常識という鎖が許すはずはない.....縛り付けられたフィルスが助けを求めたその相手はその常識という鎖を粉々に砕き割った.....そんな常識外れの行動をとっても笑っているその顔はご満悦であった。
[気に入ったぞ!フィルスよ!お主に助言ほどはしてくれよう!貸しじゃからな!きっちり後程返してもらうとするわい!]
ありがとうございました。
少し重かった気もしないでもないのですが・・・・・・(´д`|||)
恐らく、このような話はまだあるでしょうが、これも一種の作者の特徴だと思って最後までお付き合い頂けるとありがたいです(。>д<)