59話 日本の創造神
よろしくお願いします。
驚愕の来訪者への驚きも収まり、早速調理に取りかかるフィルス。21歳であった地球の休日はデザートや夕食を作り、家族に振る舞っていたので料理は自分のちょっとした趣味でもある。
その経験を生かせるのはフィルスとしても嬉しいのでワクワクが止まらない。
「よしっ!材料はこんなものかな?」
【......何を作るつもりなの?フィルス.....?】
〈あ~.....サティウスって確か、甘党なんだよね.....少し辛いかも知れないけど、それ以上に美味しく作れればどうにかなるよね!......多分.....〉
自分は決して辛いものが食べられないわけではないので辛いものが苦手な人がどれ程で辛く感じるのか分からない.....
フィルスは台所にジャガイモのような球体の物と、玉ねぎのような形のものを並べて切り刻む。人参はフィルスが嫌いなので使わない。もうお気づきの方も居るのでは無いだろうか.....?
「これはね.....《カレー》だよっ!」
【かれえ......?辛いの?】
【......やった....】
〈少しサティウスが嫌悪感を示している.....う、う~ん.....サティウスには辛いものはダメかな?〉
少しお子ちゃまな舌を持つサティウスにため息を吐くフィルス。だが、よくよく考えれば精霊は食べ物がなくても生きていける.....つまり.....
「まぁ~.....食べれないんだったら作らないから大丈夫だよサティウス。勿論!他の人のは作るけどね~.....」
【なっ!?ず、ズルいよ!フィルス!僕の分も作ってよ~!】
駄々をこね始めたサティウスに苦笑しながら冗談だと告げるが怒りが治まらないのか膨れ顔でフィルスを恨めしそうに見るサティウス。まったく、怖くないどころか可愛いと言うとまた怒りそうなので心の中にしまっておくことにする。
〈そういえば、カースト様は何してるんだろな?茶を嗜むって言ってたけど.....この世界にお茶なんてあったっけ?〉
[あるわけがなかろう.....こんな厳しい環境と生活で娯楽を楽しむ暇もないわい.....]
〈そ、それじゃあどうして.....?〉
[簡単な話じゃわい!ニホンという国の創造神から貰ったんじゃよ!友好の証じゃとかなんとかで.....]
「えっ!に、日本?!!」
聞き覚えのあるその国名についつい声が出てしまったフィルス。周りの不思議そうな視線に気づき、逃げるようにカーストのいる部屋へと飛び込んでのんびり茶を飲んでいるカーストを見つめる。
「ど、どういうことですか?な、何故、僕が前にいた国の創造神と.....?」
「ん?なぁ~に.....神だって仲良くするわい。あやつとはなかなか馬が合うでな、それで仲良くなったまでじゃ。」
〈な、成る程.....でも気になることがまだ.....〉
「あ、あの~.....ちなみに創造神様の名前は.....?」
「むっ?国を作った神の名前を知らぬか.....?あやつはまっこと目立つのが嫌いじゃの~.....あぁ、名前じゃったな.....確か.....アメノミナカヌシノカミ.....じゃったかな?長いからあまり覚えておらぬ。」
「神話通りなんですね.....天之御中主神.....」
天之御中主神.....高天原に最初に出現した神とされ、高御産巣日神、神産巣日神が次々に現れたことにより、身を潜めたという『造化三神』の一人で、性別のない独神だという。
〈創造神としては初めての神だけど.....造化三神の残り二人は実在するのかな.....?〉
[さぁ?ワシが会ったのはあやつだけじゃからな.....そこまでは分からぬわ。]
どんな疑問も即答で返してくれるカーストの話では他、二人とは会ったことがないから実在するのかどうかは分からないのだという。
「.....それより、調理を進めずして良いのか?折角、コメと言うものを貰ってきたのに.....」
「あっ!そ、そうだった.....調理をしない.....と?」
フィルスはカーストが片手で差し出してくる俵を見て驚愕する。色々可笑しなこの状況に頭がついてこず、しばらく固まった状態で頭の整理をする。
「.....えっ?な、なんで??」
状況は整理した......だが、分からなかった。何故、先程無いことに気づき買わなかったことに後悔していたフィルスの目の前に俵があり、そしてどうやってそんな重そうなのを片手で渡せるのか......
「じゃから言ったであろう?ワシとニホンの神は友だ。このような頼み事くらい快く引き受けてくれるのじゃよ。」
「え~.....あ~.....うん.....そ、そうなんですか?な、なら遠慮なく使わせて頂きます。」
久しぶりの米が食べれる!......だが、色々解明できないことが多く腑に落ちない部分もあり素直に喜べず、貰った滅茶苦茶重たい俵を肩で担いで、部屋をあとにした。
[む?贈れたかな.....?]
[おう!バッチリなタイミングであったぞ!礼を言う.....ありがとうなアメノミナカヌシノカミよ。]
[ふむ、礼を言われるほどの事はしておらぬ......その代わり、我が愛しき世界にいた者をしっかりと見守っておいてくれ。]
[あぁ、分かっておるわい.....心はそちらでも産まれた体はこの世界のもの.....つまり、ワシ等の子でもあるのじゃからな。]
心の中で話ながら茶を啜り、調理に夢中になるフィルスにそっと微笑みを浮かべるカーストであった.....
ありがとうございました。
日本の神に関しても多少の間違いがあるかもしれませぬがお許しくだされ・・・・・・m(__)m




