外伝:シゲムネの悪魔憑き
「悪魔憑きのクエストがそんなムフフ展開なものだったとは……」
シゲムネはケイから聞いた米国サーバーでの『悪魔憑き』を習得するためのクエストをやりに、森の洞窟を訪れていた。
悪魔憑きのスキルは、使用後の反動が酷いと話題になったので、習得するのを躊躇っていた。
「しかし、クエストの食わず嫌いは良くないな! ゲーマーとしてっ」
シゲムネは意を決して、洞窟へと踏み入れた。
洞窟の奥は直径20mほどの広間になっていて、中央に篝火、奥には山羊頭の人間の像が鎮座していた。
「いかにもって感じだな」
入り口付近にいる黒いローブを纏い、フードを目深に被って性別も分からない人へと話しかける。
「儀式に参加希望」
「了承しました。ではこちらをお飲みくださり、そのまま火の側へお進みください」
何やら紫色の液体を渡され、多少躊躇したもののそれを飲み干す。
度数の強いアルコールのような喉が焼ける感覚と、頭をカツンと殴られるような衝撃に、二、三度頭を振って耐えると、篝火の側へと足を進めた。
篝火の側には十人ほどの人々が座り込み、太鼓のリズムに合わせて上半身を揺らしている。
男女比は半々くらいか。
NPC達なのでそれならばと、女性の側へと腰を降ろす。
篝火の炎を眺めて、太鼓のリズムを感じていると、俺も自然に上半身が揺れてくる。
パチパチと木の爆ぜる音、太鼓のリズム、どこからか聞こえる呪文のような歌。
意識は徐々にモヤが掛かったように白濁していく。
俺は近くにいた人を抱き寄せ、求め、求められるままに口付けを交わす。
口の周りのチクチクとした感触が心地よい。背中に回した腕には鍛えられた広背筋。薄っすらと汗の浮かんだ体が密着する。
「☆※○◎……」
恍惚となった頭には、相手の言語も意味を結ばず、ただただ己の欲求を満たそうと相手に組み付く。
丸太のように太い腕に抱かれて、安らぎと情熱とに満たされていく。
高まり合う体が軋みながら、絡みゆく。
「ふぅわっはーっ」
肺の中の空気を全て吐き出すようにして絶叫すると、頭は真っ白になっていった。
気だるい頭を覚醒させていくと辺りは薄暗く、篝火も消えて石像の影もない。
クエストは無事に終わったようだが、何が行われていたのかよく覚えてはいない。
ただ激しい悦楽と解放感に身を委ねた心地よさだけが残っている。ステータスを確認すると『悪魔憑き』のスキルを習得していた。
「悪魔憑き、ヤバイな」
これはケイに知らせないほうがいいか。折角良い思いをしても記憶に残らないのは寂しいし。
「でもケイとクエ……か。いや、アイツは男だからっ。てゆーか、カナエちゃんより先にアイツとかないからっ」
誰に言い訳するでもなく叫びながら、シゲムネは洞窟を出ていった。
「ふむ、ケイの知り合いだったか……それは悪い事をしたかな」
下心見え見えの参加者がいたので、近くのNPCをこっそりと入れ替えていたルカは、何事も無かったかのように洞窟を後にした。
短いけどケイは悪魔憑きを覚えなかったので代役を立ててみました。




