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空白の時間

「もう少し具体的に教えてくれませんか?」

 セイラがルカへと尋ねた。

「クエストのネタばらしなど、推理小説の犯人やトリックを教えるようなものだが……まあ、今回は特殊だから仕方ないか」

 そう前置きしたルカが話し始める。

「そもそも『悪魔憑き』とは、人間の枷を外す行為。例えば人間の筋肉は本来の三割程の力しか出していない。これは全力を出すと体の方が壊れてしまうからだが、そのリミットを外せば普段の数倍の力が出せる」

 なるほど、ドーピングと思っていたが、元々あるポテンシャルを引き出す術なのか。

「無理した体は、動くだけで損傷し、つったり、筋肉痛になったり、肉離れを起こしたり、骨折までありうる」

 そんなことが……と思ったが、くしゃみで肋骨を折るという話もあるし、意外と人間の体は折れるみたいだ。

「そうした本来セーブしている部分を使うのが悪魔憑きで、使用後にデメリットが生じるわけだが、それはまた別の話。このクエストで行われるのは理性の枷を外すことで、悪魔憑きを体感するという事」

 ルカは少し言葉を切ってから、こちらの反応を伺い続ける。

「簡単なところだと薬物を使うこと。次にトランスと呼ばれる状態にすること。例えばトランスミュージックを聞かせたり、一心不乱に踊ったりといった事ね」

 トランス状態というのは、脳内麻薬が作られた状態とも言われる。ある種の苦しみを緩和するためにアドレナリンが出るような感覚だ。ランナーズハイなどもその一種と言われる。

「このクエストでは、篝火にある種の香草をくべつつ、太鼓を基本にした音楽の中で、徐々に精神から肉体を開放し、理性を抑えて欲望を発散させる。本能に忠実に飲んで、食べて、交わる、そういう儀式ね」

 思わずセイラと顔を見合わせ、慌てて顔を逸らす。

「トランス状態になって理性が飛べば、まともな記憶は残らず楽しかった感覚だけ残るから、そんなに恥ずかしい事もないわよ」

 そう言われても記憶がないからと好き勝手できるものでもないような。

「私とケイがペアなら、理性を失ったケイが私を襲っても未成年保護システムで私は守られる。一番安全な訳」

「ルカから襲われたら……?」

「私は既に悪魔憑きを覚えているので、コントロールできるわ」

 自信が見えるのは、過去にも同じような経験をしているからか。

「ケイが一人なら、周りの男NPCから襲われるでしょうね。ケイとセイラが近くにいたら二人で楽しめるかもしれないけど……途中で割り込まれるかもね」

 セイラがNPCとはいえ、他人に襲われるとかありえない。ではどうするのがいいのか……。


「ん、ちょっと待ってください。記憶が定かでなくなる?」

「うむ、トランス状態で快楽を求めると、心地よさは残るがその間の記憶は曖昧になるな。お酒で記憶がなくなるというのと、同じ感覚だろう」

「悪魔憑きは他人にも使えるんですよね?」

「そうだな、抵抗することはできるが、他人に掛けることもできる。NPCにも掛けれたしな」

 耐性ポーションでは説明のつかなかった記憶の欠落は、悪魔憑きの可能性がある。耐性ポーションで抵抗力自体も落ちていたとしたら、悪魔憑きも掛けやすくなっていたはずだ。

「一連の騒動の中に、悪魔憑きがいた可能性がある」

「まあ習得自体は誰でもできるがな。場所さえわかれば、特にレベル制限もない」

「そ、そうか」

「でも一つずつ候補を絞る条件を整えるのは大事だよ。いきなり犯人が特定できるなんて、推理ドラマのような事は少ない」

「とりあえず悪魔憑きのクエストはまた今度にします。少しでも情報共有して、次の犯罪が起きないかの対策にしないと」

「ふむ、それもまた決断だね」


 ルカに礼を言って俺達はシゲムネに連絡した。

「悪魔憑きねぇ。確かに覚えるだけなら結構覚えている奴がいそうだな。一種のドラッグみたいなもので、現実を忘れられるとか」

「ルカも酒で陽気になったり、記憶をなくしたりするのに近いともいってたし……」

「でも他人に掛けられるようになるには、それなりの経験を積まないと駄目なはずだ」

「そうか、悪魔憑きのスキルレベルから多少は絞り込める?」

「まあ、ルカという人のように実用してて上がってる人もいるんだろうし、パーティの一人が使えたらいいから条件としては弱いかな」

「そうか……」


「それにしても悪魔憑きのクエストって、海外サーバーだとそんなに違いがあるのか」

「私は日本サーバーが再開してからにするよ」

「ま、まぁ、そうだな。それがいいと思うぞ」

 ややシゲムネの焦った様子に怪訝なものを感じながら、悪魔憑きに関しては保留となった。



 日本サーバーが稼働しないと、家にも行けないので錬金術もあまり進めることはできない。

 マクシミリアン家のクエストも次のアイテムを見つけないと駄目だろう。

 IDを回るにもパーティが英語で会話する中に入る勇気はないし……。

「やっぱり、日本サーバーがないと落ち着かないか」

「そうね、チェリーブロッサムの面々とも会えないし」

 マーカスも日本サーバーが稼働しないことには、ALFで物を売れないので中々入れないようだ。


「どうしようか……」

「やれる事少ないよね」

 セイラと二人途方に暮れる。

「じゃあさ、せっかくだから、その、お出かけしましょうか」

「えっと、どこに? メイフィも家で留守番させてるままだから遠出はできないんだけど……」

「こっちじゃなくて、リアルで……ね?」

 そういうことか。確かに前の週末は一連の騒動で、動き回っていて落ち着くことがなかった。

 この週末はALFでやれることもないし、ちゃんと学生らしい事をする方がいいのかな。

「うん、わかった。どこかへ出かけよう」

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