第八十四話 壊天槍ディスコラプサー
「ちなみにどんな武器がいいとかってある?」
「そうだな……まず銃は初期武装としてあるから近距離系の武器だな。それとは別に二つ武器を装備できるスロットがあって、一つは背中に背負う形で、もう一つは右腕の外側に装着できる。この二つを作ってほしい。武器種は任せる」
「なるほど……」
窓ガラス越しに機兵を見る。
どちらも近接武器にするとして、先に考えるべきは腕に装着する方かな。
背中に背負う武器はサイズも自由度もありそうだけど、腕の外付け武装は形状の制限が大きい。
右腕の外側に固定するとなると、動きを邪魔しないようなサイズの武器になる。それだと単純な質量兵器は少し噛み合わない。
棍みたいな“重いものをぶつける”武器は、手に持って大きく振るからこそ遠心力で威力を稼げる。邪魔しないサイズだとただ普通に殴るのと大差なくなってしまうし、長いと動きを阻害する。
「それそのものが独立した破壊力を持つ武器……ロボットが持つ武器として、そういうのって何かあるかな」
「こういう巨大ロボの武器といえばやっぱりビーム兵器ですよね! 特に近接武器でも剣身がビームになってるものとか! そういうのが作れるのかはわかりませんけどね」
「どこまで出来るかは分からねぇが、銃は物理弾薬を使う仕組みだ。それらしいものも無かった」
「だとするとビームは難しそうですね……それ以外となると――ドリルとかいいんじゃないですか?」
ドリル。なるほど、結構いい感じかも。腕部に固定するなら突き出す形の武器と相性がいい。
しかもドリルならただ刺すだけじゃなく回転そのものが破壊力になる。
『ドリルはロマン!』
『確かにドリル使うロボはそこそこいる気がする』
『俺のドリルは天魔を突くドリルだ!』
『武器種は槍なんかな』
コメントも結構この方向性で盛り上がってるし、ドリルを作ることにしよう。
そんなわけで何を作るか決まったので、素材を確認する。
共有倉庫に並んでいるのは、イクテュエスで回収したスクラップから取り出した金属素材らしい。高靱性構造鋼、導電複合材、積層装甲材、高密度白鋼、耐熱偏析材……どれも今までのモンスター素材とはまるで毛色が違う。
しかも特定の素材は複数組み合わせて合金を作ることができる。このあたりも普段の武器製作と似通っている部分だけど、合金は素材を選べば自動で作ってくれるらしい。
パネルを操作してみると、金属系素材は柱状や板状に基礎成形した状態で呼び出せるようだ。
通常の素材みたいにベースの形が決まってるわけじゃないからこそある程度は自動でやってくれるってことかな。まあ選べる形状は本当にベーシックなものだけだから、そこから自分で調整していかないといけない。
「じゃあ、まずはドリルの主材を決めようか。硬さと耐摩耗性が要るから……」
一覧を見ながら考えると、炭化白鋼複合材という合金素材が目に入った。
高密度白鋼を主材とし、そこへ炭化晶粉と耐熱偏析材を加えて合成する素材だ。
白鋼の密度と粘りに、炭化物系の硬さを混ぜ込んだ超硬系の複合材。耐摩耗性も高く、ドリルの刃にはかなり向いてそうだった。
ドリルとして使うために形状は円柱状に指定。
「割合とかはさすがに自動指定になってるんだ。じゃあこれで生成」
「なんか工業製品感すごいですね……」
本当に今までの花弁とか鉱石とかとは全然違う。材料工学の世界だ。
実行ボタンを押すと、格納棚の奥で短く駆動音が鳴り、少しして白銀色の柱状素材が運び出されてきた。同時に机の上にも縮小モデルが盛り上がって現れる。
スライダーで少し拡大しながら、先端形状を考えていく。
完全な円錐だと後部が大きくなりすぎるので、緩やかに形状を変化させるようなイメージで……ん?
いろいろ考えながら見てみると、UNITの表記がこれまでとは少し違うことに気がついた。
どうやらこの機兵用の武器には各パーツにかなり自由にUNIT効果を付与することができるらしい。通常の武器だと特殊な素材でない限りは武器一つに入れられるUNIT数はある程度制限があるものだけど、機兵用武器にはそれがない。
さすがに一つのパーツに複雑な動きをいくつも仕込んだりするのは無理みたいだけど、とはいえそれでも十分色々試せる。
それでいうと、このドリルも単に一方向に回転させる以外にもできそうなことはある。
「ドリルを輪切りにして、パーツごとに回転方向を左右交互にしてみようかな。一直線に掘るっていうより、相手を削って壊しながら穿つ感じにしたいし」
「なるほど! いいと思います!!」
ドリル部分を分割し、その周囲を囲む円環状の刃を同じ素材で作成。刃は一度手作業で作ってからある程度複製で対応できた。
次いで中央の主芯を作成。分割したのでこれをひとまとめにし、回転軸として支えるためのものだ。強度も考えて高靱性析出強化合金で作成した。
ドリル部分に穴を開け、芯を通す。ドリルは各パーツごとに[回転]のUNITを設定。奇数段は右回転、偶数段は左回転。前方ほど鋭く、後方ほど厚みを持たせて、食い込んだあとに抉り壊す構造へ。
これでドリル部分は完成だけど、実際の運用を考えるとこのドリルは使用時以外は収納できるようにしておきたい。
というわけで右腕側面に格納用パーツを作成。二の腕の側面に沿わせるように取り付け、長さは腕を下ろしたときに肩辺りまで来るぐらいのサイズに。
見た目は本体に合わせて白を基調に、青いラインを入れて馴染ませる。
そこにドリルを収め、格納用パーツと合成。[変形]のUNITを付与し、使用時にはドリルが押し出されるようにした。
「よし、これで完成。じゃあ早速ステータスを見てみようかな」
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名称未設定
武器種:槍/機兵用武装
攻撃力強化+4080、貫通強化+620、装甲破砕+540、裂傷付与+320、連撃強化+280
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「えっ」
『!?』
『なんやこのステータス!!』
『なんか見たことない数字になってる!』
『なんだこれ……』
機兵用武器だからってことだよねこれ。ここまで強いと、それに相応しい名前を付けないといけないな。
「じゃあ……壊天槍ディスコラプサーで」
動作確認は機兵を動かす必要があるのでまた後で。先にもう一つの武器を作っていこう。
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壊天槍ディスコラプサー
武器種:槍/機兵用武装
攻撃力強化+4080、貫通強化+620、装甲破砕+540、裂傷付与+320、連撃強化+280
機兵用多段穿孔槍。
突き立てた対象を削り、抉り、壊しながら穿つ。
天を裂くために造られたその槍は、白き御使いさえも地へ引きずり堕とす。
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