第四十七話 デスサイズです
ようやくコラボ回です
本当は武器を作り終わるところまで書こうとしたんですけど、長くなったので途中で切りました。
後半はコピペする時に間違えて消してしまったので書き直しです。どうして…………
『わこつー』
『こんエボ』
『コラボダー!』
『のりこめー』
『こんにちは』
『今日人多くない?』
『わこつ!』
『わぁい』
チャットウィンドウに大量のコメントが流れていく。
始めたばかりにも拘らず、視聴者は既に五千人もいた。一万人を超えるのも時間の問題だろう。
「前から言っていた通り、今回はコラボ回よ。相手は私と同じくこのガーデン通りに店を構える配信者。まあ、何度か配信でも名前を出しているから既に知っている人もいるかもしれないけれど……早速自己紹介をお願い」
「えーっと……初めまして、ユーカリ=スタークです。普段は配信で武器を作ってるんですけど、今日はコラボってことで初めて人のチャンネルで武器を作ります。……こんな感じかな」
『初見です』
『武器職人?』
『カワイイ!』
『敬語使ってるの新鮮だな』
『この人もお嬢様?』
『名前は聞いたことある』
おお……なんか、いつもとコメントが違って不思議な感じ。普段から見てくれてるらしい人もいるけど、大多数はエボニーの視聴者みたいだ。
「ちなみに、後ろにいるのは私のパトロン——支援者のシダです」
「よ、よろしくお願いしますっ」
『パトロン???』
『そんなシステムあるの?』
『シダPがっつり映るの初めてじゃね?』
『パトロンって世界史でしか聞いたことないわ』
「設備整えてもらったり、素材の調達してもらったりしてる感じです」
「私にとってのエリスみたいなものね」
『なるほどね』
『だいたい理解した』
『コラボって何するの?』
「そうね、コラボの説明をしましょう」
エボニーが合図をすると、エリスが部屋の外からホワイトボードのようなものを運んできた。
この辺りは任せてほしいと言っていたので私はあまり触れていないのだけど、多分説明に使うものなのだろう。
「今回のコラボは、生産職のプレイヤー人口を増加させることを目的としているわ。つい先日に生産職に関するアップデートもあったし、今なら人を集めやすいだろうと言うわけね。というわけで、まずは生産職の仕様の説明も兼ねて、私とユーカリがそれぞれアイテムを作っていくわ」
エリスがボードに図と説明をスラスラと書いていく。
字がすごい綺麗。
「それが終わったら、次はある企画を行うわ。と言っても、やることはそれぞれ生産を行うだけではあるのだけど……まあこれはその時になったら詳しく話すわ。そして最後に、私とユーカリの二人で協力して一つのアイテムを作ろうと思ってるの」
『なるほど』
『二人で協力って、それ武器と防具どっちになるの?』
『生産職気になってたからちょうどいいな』
「というわけで、まずはユーカリに武器を作ってもらいましょうか」
「ん、了解」
エボニーからのパスを受け取って、私は画面の中心に映るように移動する。
「というわけで、早速武器を作っていこうと思います。武器職人の説明も兼ねてるしスタンダードに剣で良いかなとも思ったんだけど、どうせやるならもっと分かりやすく派手でカッコいい、ロマンの塊みたいな武器にしようと思って。だから、今回は大鎌を作っていくよ。……あ、作っていきます」
『慣れてないんかなww』
『楽な方でいいのよ』
『かわいい』
「あー……じゃあ、お言葉に甘えて」
別にリアルだと敬語が苦手って訳じゃないはずなんだけど、VR上だと上手くいかない。
現実とVR内で性格や口調が無意識で異なってしまう人というのは、ダイレムプションという呼び方があるくらいには一般的なようだし、自分もそれなのかも。
「大鎌の扱いはゲームによって様々だけど、アリフラの大鎌は中射程で魔法寄りの武器になってるみたい。まあ、普通に使おうとすると恐ろしく使いにくい形状してるからどのゲームでも大抵そんな感じになるけど」
大鎌という武器はゲームやアニメなど媒体を問わず登場する人気武器で、死神の使う武器というイメージもあってかかなり強い扱いを受けていることが多い武器だけど、大鎌そのものは武器としてはあまりにも使いにくかったりする。
元が農具だから仕方ないことではあるけれど、柄が長く刃が内向きに付いているという時点でもうまともな戦い方が思いつかない。巻き込むように振ったり引き戻したり、絶対にワンテンポ遅れてしまう。
形状を活かす方向で考えれば相手の盾を回避して攻撃できるというのが思いつくけど、正直それやるならショーテルとかの方がよほど使いやすいし……なんというか、創作と現実でここまで性能に差がある武器というのも珍しい気がする。
まあ、ロマンってそういうものか。
『大鎌使ってみたいな』
『これどの職の武器なん?』
「いくつかあると思うけど、イメージ的にもぴったりなのはカースブレイドって名前の中級職かな。wikiには呪いを主体に立ち回る攻撃的デバッファーって書いてある」
『かっこよ』
『うちのクランにいたな。装甲柔いからソロは難しそうだったけど』
『中二病の血が騒ぐぜ』
「アリフラって職業も武器種も多いから武器職人は大変よね」
「確かに、ゲーム内での性能とか役割とか覚えるのは難しいかな。でも、色々作れるのはすごく楽しいよ」
まあ、よほど好きじゃないとこの量は難しいだろうなというのも正直なところではあるけど。
「じゃあ、早速作っていくよ。まずは柄から」
今回は王道な方向性に、武器に対する一般的な考えから逸脱しないように作っていきたい。
そんなわけで、この大鎌はそのまま死神が持っていても違和感のないような、いかにもって感じのものにしようと思っている。
「柄の素材は淦棺樹っていう、人の血に良く似た成分の泉の底で成長する樹木をメインにして、それを黒曜獣の血鉄でコーティングして赤黒い感じを表現するよ」
『素材はよくわからないけど禍々しいな』
『知らない素材だ……』
『素材多すぎて色々面倒だよな』
『まあその分初期から倉庫の容量めちゃくちゃ多いし』
『レアドロ掘りが本格的に始まったら地獄になりそう』
「じゃあまず淦棺樹の枝を使っていくけど、今回は自然な造形を生かしたいから選別していくよ。これは最近エボニーに教わった技なんだけど、こういう素材ってランダム生成をオンにしたままアイテム化すると毎回形が変わるから、必要な形になるまで粘れるんだよね」
自然物を表現するために一定の範囲でランダムに形を変化させるという技術によるものらしい。プロシージャルとかなんとか。そういうのは自分には難しくてよくわからないけど。
「えっと……これでいいかな」
アイテム化を繰り返して八回目くらいでいい感じのものになった。握るのにちょうどいい太さで、長さもイメージとそう遠くない。
太さに関してはコーティングで後から調整できるし、長さも切って調整はできるけど、ランダム生成で粘るほうが時短になるので今後も活用していきたいところだ。
早速、表面の皮を剥いでやすりで綺麗にしていく。
皮は黒いけどその内側は泉の液体を吸って赤く染まっている。
これ単体で使っても十分に美しいけど、今回はもっと黒いほうがいい。そんなわけで、ここに黒曜獣の血鉄を塗っていく。
黒く塗るためのものと言うと、前に魔剣……じゃなかった。聖剣ヴィドランゼを作ったときに使った聖墨血というのがあるけど、あちらは聖属性がついてしまうので今回作る武器には適していなかったり。
瓶に入った黒い液体をトレーに出し、刷毛で柄に塗っていく。
「うん、良い感じに黒くなってる。それにしても、血鉄ってなんなんだろう? 黒曜獣もよく知らないし」
『知らない魔物の知らない素材でデスサイズを作る女』
『カッコいいからヨシ!』
『黒曜獣はパルテノスのレイドで出てくる奴じゃね? あのクソモンス』
『オブシディオかぁ……』
『デカいし力強いし物理も魔法も効きにくいって言うね。嫌いです(直球)』
『パルテノスレイドはオブシディオが出ないようにお祈りするゲーム』
「うわ、すごい嫌われてるね」
「倒すのに時間がかかるモンスターは嫌われる傾向にあるわね。私も他のゲームでは戦闘職だったから分かるわ……そういうモンスターに限って強化に素材が必須だったりするし」
「私にはわからない世界かな……?」
戦闘職は苦手なのでほとんど触ったことはないし。
とは言え、召喚術師とかは自分以外が戦ってくれるわけだから少し興味はあったりする。
そんな風に話しつつ作業を続けて、大鎌の柄の部分が完成したのだった。




