空から落ちてきた少女
何回もみかけてる方いたらすいません。書き方を変えたり、内容いじったりしてます。
夜の東京。
ビルとビルの間を、一人の少年が軽やかに駆け抜けていた。黄桜こうき、中学三年生。彼の夢は、世界一の怪盗になることだった。
屋上にたどり着いたこうきは、手の中にある小さな鉱石を月明かりにかざした。
「これ、売ったらいくらになるんだろうな」
鉱石は不思議な輝きを放っていた。こうきは満足そうに笑うと、首にかけたネックレスに触れる。
いつか、世界中の誰もが知る怪盗になってみせる。
そんな夢を思い描いていた、そのときだった。
「きゃあああああっ!」
「ん?」
突然、頭上から悲鳴が聞こえた。こうきが顔を上げた瞬間、何かが空から降ってくる。
「うおっ!?」
避ける間もなかった。
ドスン!
「いってぇ……!」
こうきは少女に押し倒され、屋上に尻もちをついた。
「なんで空から人が落ちてくるんだよ!」
文句を言いながら、こうきは目の前の少女を見た。少女は慌てて起き上がると、こうきの顔を覗き込んだ。
「ご、ごめんなさい! 大丈夫?」
「大丈夫じゃないって! いきなり人の上に落ちてくるなよ!」
「本当にごめん……」
少女は申し訳なさそうに頭を下げた。こうきはため息をつきながら立ち上がり、服についた汚れを払う。
「それで、君は誰なんだ?」
少女は一瞬ためらったあと、こうきの手元に目を向けた。
「その石……どこで手に入れたの?」
「これ?」
こうきは手の中の鉱石を持ち上げた。
「ちょっと盗んできたんだ」
「盗んだの!?」
「怪盗になるなら、これくらい普通だろ?」
「普通じゃないわよ!」
少女は思わず声を上げた。こうきは気にした様子もなく、鉱石を眺めている。
「それより、この石がどうかしたのか?」
少女は真剣な表情でうなずいた。
「それは星の雫石。あなたが持ってても意味がない石よ」
「星の雫石?」
「お願い。その石を私に渡してくれない?」
少女の目は真剣だった。しかし、こうきはあっさり首を横に振る。
「嫌だね。せっかく盗んだんだから」
「そんな……!」
「欲しいなら、自分で手に入れればいいだろ?」
こうきはニヤリと笑うと、屋上の柵に足をかけた。
「ちょっと、待って!」
少女の声を背に、こうきは隣のビルへと飛び移った。
「またな!」
「もう! 待ちなさいよ!」
少女の声が夜空に響く。こうきは振り返ることなく、暗いビルの向こうへ消えていった。
◇
翌朝。
「こうき! また盗みをしたの!?」
教室に、ゆきの怒った声が響いた。
「朝からうるさいなぁ」
こうきは机に頬杖をつき、面倒くさそうに答える。
「うるさくもなるわよ! 盗みなんて、いつか大変なことになるんだから!」
「大丈夫だって。ちゃんと逃げ切ってるし」
「そういう問題じゃない!」
二人のやり取りを見て、ひろきが声を上げて笑った。
「はははっ! こうき、またゆきに怒られてる!」
「笑い事じゃないわよ、ひろき!」
「まあまあ」
みずきが二人をなだめるように口を挟む。
「でも、こうきが悪いのは確かだろ」
「みずきまで!?」
こうきは不満そうに頬を膨らませた。いつもの光景だった。
こうき、ゆき、ひろき、みずき。四人は幼い頃から一緒に過ごしてきた幼なじみだ。
放課後になると、四人は学校の裏手にある山へ向かった。人目につかないその場所は、昔から四人のお気に入りだった。
こうきはポケットから鉱石を取り出し、三人に見せた。
「ほら、昨日の戦利品だ」
「また盗んだものを自慢してる……」
ゆきは呆れたようにため息をついた。
「いいじゃん、別に。ほら、見てみろよ」
こうきが鉱石を差し出すと、ひろきが興味津々に覗き込んだ。
「へえ、なんか不思議な石だな!」
「確かに、普通の石とは違うな」
みずきも静かに観察する。
そのときだった。
「それは星の雫石よ」
背後から声がした。四人が振り返ると、そこには昨夜、こうきの上に落ちてきた少女が立っていた。
「あっ、お前!」
こうきが声を上げる。
少女はこうきの手にある鉱石を見つめた。
「やっぱり、その石を持っていたのね」
「なんでここにいるんだよ?」
「あなたに話があるからよ」
少女は四人を順番に見渡した。そして、真剣な表情で告げる。
「その星の雫石は、宇宙から来たものなの」
「……宇宙?」
四人は顔を見合わせた。あまりにも突拍子のない話だった。しかし、少女の表情は冗談を言っているようには見えなかった。
こうきは手の中の鉱石に目を落とす。世界一の怪盗を目指す自分が、今まで見たこともないものを手に入れていた。そして、その石を知る少女が目の前にいる。
こうきの胸に、好奇心が膨らんでいった。
「……面白そうじゃん」
こうきは口元を緩めた。
少女は、そんなこうきをじっと見つめていた。




