88. 戦いの火蓋は、切って落とされた!
午後7時
ネットの四銃士達は、それぞれの自宅から若緑高校のホームページにある掲示板に終結していた。
【2年2組酒井可憐は、なぜ亡くなったのか】
美月が建てたスレッドだ。
ポ~~ン!
赤木大輔のメールに、通知が届く。
『お知らせ:若緑高校掲示板、24年度卒業生板に更新がありました』
2X26年2月11日 〈2X24年度卒業生〉赤木大輔
24年度卒業生全員に、スレ立ての通知がいってるのか
東京都西伏見の学生寮より、■red treeこと大輔が書き込む。
2X26年2月11日 〈2X24年度卒業生〉大林美月
それが狙いだ
可憐の死の真相を同級生全員に知ってもらい、英磨には謝罪してもらう
同じく、東京は西稲田の学生寮から■酒井カレンこと大林美月。
2X26年2月11日 〈2X24年度卒業生〉ペケゾー
こんばんは
おれ、2X24年度の卒業生になってんだけど
神奈川県蒼町からは、我らが? 神楽坂カケルことペケゾー。
昼過ぎまで寝てた魔法使いは、これからが本番! とばかりにやる気満々である。
2X26年2月11日 〈教員〉コジロウ
おれなんか教師になってんぜ!w
まあ、いいけど……美月ちゃあん、不正アクセス助長行為で捕まんなよお~
岐阜県からは、本名、西本丸誠こと■コジロウが参上する。
相変わらず暖房の効いた部屋で、大きめのTシャツに黒のハーフパンツという恰好。電子タバコを咥えながら、これから戦場となる掲示板をゴーグル越しに眺める。
2X26年2月11日 〈2X24年度卒業生〉大林美月
そういうお前こそ、そのIDで悪さするなよ
で、英麿の奴はどうした
もう7時10分だぞ
2X26年2月11日 〈2X24年度卒業生〉一ノ谷英磨
来たよ
っていうか、なんだよ、この連中
赤木は知ってるけど、ペケゾーとコジロウって誰だよ
英磨の書き込みに、神奈川県のカケルは少し身構える……。
ネット越しとはいえ、若緑市の支配者にて、これからレスバする相手……一ノ谷家の御曹司との初対面だ。
[ギャラリーって、思ってくれればいいよ
送った動画は見たよな?
じゃあ、始めようか]
美月が英磨に返答する。
さて、それじゃこれから英磨を追い詰めるためのレスバトルを……と思っていた矢先、英磨からの返信。正確には、一ノ谷英磨のアカウントからの返信……。
[はじめまして
わたくし一ノ谷家の顧問弁護士をしている、東義典と申します
今現在英磨様の祖父、一ノ谷十三様と共に、この掲示板でのやり取りを見させてもらってる次第です]
弁護士って……しかも、元法務次官の一ノ谷十三もいるのか。
いきなりの先制パンチに、魔法使いのカケルは困惑する。しかし美月は動じず、英磨に語りかける。
[ふん! 可憐をレイプした時同様、お爺さんに泣きついたか
相変わらず情けない奴だな、お前は!
だからまともに女も抱けずに、強姦で初体験を済ますわけだ]
[弁護士の東です
大林さん、その発言は侮辱罪に該当します
英麿さんが強姦した事実はありません」
「動画見ろよ
あの動画を見ても、レイプじゃないって言うのか?]
[その動画の中で可憐さんは、
『英磨君のこと、好きでいるから……!』
と言っています
合意の上での性行為、という可能性も否定できません]
【神奈川県蒼町】
……こいつ、ふざけんてんのか
カケルは怒りを通り越して、呆れながら若緑高校の掲示板へと書き込む。
[そのセリフを言う前に、
『英磨君、お願いやめて!』
って、言ってるだろ!!
可憐さんは、はっきり嫌がってる!]
英磨のアカウントが即座にレスを返す。
[ペケゾーというのは、本名ではないですよね?
美月さんはギャラリーと仰っていましたが、今回の件と関係のない人は、発言を控えてほしいです]
……アカウントは一ノ谷英磨だけど、これ書いてるの、弁護士の東って人だよな?
カケルはゼータのアカウントから、美月が予め作っておいたBlack Maskメンバーのグループチャットに連絡を入れる。
ペケゾー@wizard34 2月11日
美月さん!
英磨の垢に書き込んでるの、弁護士だよね?
弁護士に任せて、英麿自身は出て来ないんじゃないか?
■酒井カレン@blackmask79 2月11日
ああ、そうだろうな
可憐が亡くなった時もそうだが、一人じゃなにもできず、すぐ爺様に泣きつく
ジジイも孫が可愛いいんだろうよ……自身の権力、財力、フルに使って英磨を助けるんだ
どうする?
弁護士相手のレスバとか……
おれ、法律の知識とかない
■酒井カレン@blackmask79 2月11日
ビビるなよ、魔法使い
こっちには、お前とコジロウが取ってきてくれた動かぬ証拠があるんだ!
【東京都西稲田】
美月は若緑高校の掲示板へと書き込む。
[じゃあ、関係者であるわたしが書き込む
明日、この動画を持って若緑警察署に行く!
文句あるか?]
【埼玉県若緑市 一ノ谷邸】
「や、やめろー!」
一ノ谷英磨は、弁護士東義典が操作しているノートパソコンに向かって、思わず声を張り上げる。
午前中、上機嫌で東京のポルシェセンターで納車式を行おうとしていた、このチャラ男……失礼、一ノ谷家の若きプリンスは、若緑高校の同級生だった大林美月からの電話に顔面蒼白となり、若緑市の老将軍とも言うべき一ノ谷十三に助けを乞いに埼玉県の実家に舞い戻ったのであった。
「落ち着け、英磨。真の強者は、どんな時も取り乱さない!
東……なんとかなるな!?」
白い口髭を蓄えた老将軍は隣にいる30代の弁護士、東義典にプレッシャーをかけるように言う。
「……お任せ下さい!
Black Maskなど、ハッカー気取ってるような若輩者に後れなどとりません」
「うむ……!
何年か前に雇った弁護士は、お任せ下さいが口癖だったが、口先だけの奴だった。東君は、そんな男ではないだろう! 期待しているぞ!!」
「……はい!」
強張った表情で一ノ谷家顧問弁護士の東は、書き込みをする。
[警察に行くというなら、好きにするといい
ところで、親族ではない人間には告訴する権利はない
という事実は知っていますか?]
【神奈川県蒼町】
……なんだと!?




